director's voice

ますみえりこさん(織)

Q
ますみえりこさんは、二回目の出展。
今回の「工房からの風」ではどのような作品を出品くださいますか?

A
古い蚊帳からイメージした、からむしの布を織ってみました。
これをバッグに仕立てて持っていきます。

あと、今まではからむしだけを織っていたのですが、
最近は他の素材の糸を使って織ったりもしています。

今回はリネンの糸で織ったハンカチの初お目見えの場としました。
きゅんとくるような作品を持っていけたら…と思っています。
ディスプレイも愉しい感じになる予定です。

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Q
ますみえりこさんにとって「工房からの風」は、どんな風でしょうか?

A
優しく背中を押してくれる風。

去年の秋くらいから今年の初め頃、
からむしで作品を作っていることや
ものつくりのことで悩んでいた時に稲垣さんから
「ますみさんの好きなように作っていいんだよ」
と言ってもらえたことが勇気になりました。

工房からの風に出展できたことが
優しく背中を押してもらえたように思います。
今年の工房からの風はますみワールドでシュワシュワと弾けて、
愉しんでいきたいと思っています。

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Q
ますみさんの初めての「ものづくり」は、なんでしょう?
印象的なもの教えてくださいますか?

A
子供の頃は作っている意識が無くいつも何か作って遊んでいたように思います。
草を摘んで茎で紐みたいなものを作ったり、花で色水を作ったり…。
雨の日は家で絵本を作ったり…。

でも、一番は泥団子作りです!
この泥団子作りはどこの砂や土がよく固まるかとか、
水の入れ具合や磨きかたなど自分なりに研究して作っていました。
最初は一緒に作っていた友達が飽きていなくなっても、
ひとり黙々と作っていた記憶があります。

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からむし。
苧麻(ちょま)は、中世では人々のもっとも身近な衣服の素材であって、
今でも小千谷縮や越後上布など夏の和装地としても活用されています。

ますみさんは福島県の昭和村の織姫制度でからむし織を学び、
関東に戻ってからも制作や、ワークショップなどを通じて、
からむし織の技術をつなぎ、伝えてきました。

けれど、素材栽培や関わる方々が齢をとられて、
それを継ぐ人の不足や、震災の影響など、
からむしを自分のまんなかの仕事として進んできたますみさんには、
迷うことが続いたことと思います。

からむし織のことだけでとらえると、
適したことがなかなか伝えられませんが、
からむしと真剣に向き合っているますみさんならではのものづくりはきっとあるはず。
その思いで「今こそ思うままに手を動かしてみては」
とお伝えしたのでした。

ほんの一滴の雫にもならない言葉から動きが進んだのは、
ますみさんご自身の力ですね。
からむしならではの作品の他、
独特な色遣いに個性が光るますみさんならではの
楽しい利かせ色も美しいハンカチも誕生したり。

素材に向き合うことに一所懸命なほどに、
ときに縛られて苦しくなることがあるのかもしれません。
そんなときには、一度心を解放して、心の向くままに作ってみるのもいいかもしれませんね。
そうして作られたものには、きっと残るべきものはしっかりと残って、
新鮮な制作の流れが生まれ、動き出していくのだと思います。

今回のますみさんの伸びやかさ、幸福感に満ちた布が、
多くの方に伝わりますように。

ますみえりこさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、
galleryらふとの奥、岩のある空間。
おりひめ神社の参道に入ってすぐのところです。

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