「工房からの風」では、開催前に出展者が何度か集まります。
日本全国からの出展作家の方々ですので、
きっとタイヘンなことと思うのですが、
多くの方が万障繰り合わせて、集まって来られます。
この機会が、今後のものづくりでの人の輪の核にもなったり、
あるいは、ものづくりの考えへの大切なかけらと
される方も多いように思います。
そのミーティングでは、
役割上、皆さんを前に私がお話しをする時間が多いのですが、
幾人かの熱心な聞き手の方がいらっしゃいます。
あ、きっと、皆さん熱心なのだと思うのですが、
熱心が印象的な!方が毎年数人いらっしゃるのです。
今年のとびきり印象的だったのが、石渡磨美さん。
陶芸作家です。
Q
石渡さんは「工房からの風」にどのような作品を出品くださいますか?
A
暮らしのうつわを持って行きます。
ポットやマグ、耐熱皿、深めのカレー皿など、
私自身が日々の暮らしの中で重宝しているうつわ、
出番の多い「いつものうつわ」です。
土ものは、使い続ける中で色が深みを増したり、
貫入(細かいヒビ)に茶渋等が染み込んだりと、
変化を楽しむ良さがあります。
当日は実際に使用して変化したうつわを展示いたしますので、
是非ご覧いただければ嬉しいです。
出展が決まってからの約半年。
ぐーんと作品が伸びていかれる方が毎年現れます。
石渡さんもそのような中のおひとり。
秋の実りに向かって、お名前の如く、腕を磨いて制作に励まれていることを
ひしひしと感じていました。
熱心さが印象的、というのは、私だけではなくて、
他の出席者の方々からも伺っています。
というのも、目を輝かせて、うんうんとずっと頷いていらっしゃるのです。
まるで、その時間の行き交っている言葉、想いを
一粒逃さぬように受け止めようとしているかのようで。
この半年間の工房での一人の時間、
吸い込んだ一粒一粒を反芻しながら、
きっと濃密に過ごされたことと思います。
そして、個人ミーティングで晩春に話されていたことが、
じわじわ実際のかたちとなって現れてきているのですね。
ホームページに、二十四節気七十二候ごとその折々の言葉と
それに合わせて制作の風景、作品を掲載することを
続けている磨美さん。
その頁を追ってみると、皆さんにもその進化成長の一端、
伝わるのではないでしょうか。
Q
石渡さんにとって「工房からの風」は、どのような風ですか?
A
心の深いところで常に吹き続けている風です。
2008年にはじめて「工房からの風」を訪れた時から、
いつかは私も作り手としてあの場所に立ちたいと憧れて、
ずっと目標だった「工房からの風」。
やがてその思いは風となり、
心に灯った火に絶えず新鮮な空気を送り続けてくれました。
そして今年は大きく背中を押してくれた風。
そんな優しくも力強い風です。
この回答をくださったメールの末尾に、こんな言葉が添えられてありました。
「秋の空気が日に日に濃くなってきて
毎日制作に追われながらドキドキしております。
29日の祈願祭には残念ながら伺えませんが
当日同時刻に工房の窯の前の神棚に手を合わせて
吉祥寺より一緒に祈願します!」
そう、今日29日に「おりひめ神社」では、
宮司さんにお越しいただいて「祈願祭」を行いました。
「工房からの風」の安全祈願、晴天祈願、千客万来の祈願。
今日、天気予報はあいにくの雨。
念のために参拝の場にはテントも立ててという祈願祭となりましたが、
雨は降ることなく、むしろ祈願祭中には眩しい光が一帯に射し込んで、
なんとも晴れやかなひとときをいただくことができました。
石渡さんの祈り、届きましたよ!
ありがとうございます。
Q
石渡磨美さんのお名前の由来をおきかせくださいますか?
A
母の愛する故郷・神戸の須磨海岸から「磨」の字を頂いて、
己を美しく磨くという意味と合わせて「磨美」と名付けたそうです。
普段から気に留めているわけではないのですが、
時折ふと「自分は名前の通りに歩めているだろうか。」
と思うことがあります。
ゆっくりでも少しずつでも日々自分を磨いて、
美しいものを生み出せるようになりたいなと思います。
己を美しく磨き、美しいものを磨きだす。
磨美さん、お名前の通りに歩んでいらっしゃいますね。
石渡磨美さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、
「手仕事の庭」花壇の奥。
楮やぶどう、そして初めて植えたゴボウなどが育っている花壇のほとりです。
サイトはこちらとなっています。
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written by sanae inagaki