今年は手漉き和紙を手掛けるご夫婦の出展があります。
小嶋紘平さんと祐希さん。
新潟県で制作をされています。
Q1
小嶋さんは、「工房からの風」にどのような作品を出品くださいますか?
A1
手漉き和紙を出品します。
私たちは、四季の移ろいや目の前に広がる風景を
それぞれのかたちで表現できたらと、
和紙の原料である楮の栽培から紙漉きを行っています。
紙漉きといっても紙を漉く工程は全体のほんの一部であり、
多くの時間は和紙の原料である楮の栽培や
草木の採取など自然に寄り添った時間から成り立っています。
そんな身近な存在である自然は、さまざまな想像力を与えてくれます。
長い冬の間、眠っていた大地からおぼろげな芽が出てきたかと思うと、
夏の暑さにも負けない青々とした草木を育たせ、
めいめいに咲き誇った花はやがて朽ちていく。
そしてそれは土に還り、その土地の風になっていくことを思うと、
真っ白で厳しくも静かな冬、ほの明るい光のようなものを感じます。
「工房からの風」の舞台である庭で、
さまざまな土地から生まれてくる風とともに、
私たちもその風の一部になれればと思っています。
工藝では、素材から仕上げ完成まで、さまざまな工程がありますが、
素材作りから一貫して手掛けることは、
大変と一言では済まない深い道のりがあります。
けれど、その大変さにこそ意義や喜びもあるのではないでしょうか。
自然と深く交わいながら生み出されてくる小嶋さんの和紙、
ぜひその風合い、存在感を感じていただきたいと思います。
Q2
工房でよく聴く音楽、
または、ものづくりを進める中で大切にしている本、
あるいは、心に中で大切にしている映画、いずれかを教えてくださいますか?
A2
「ときをためる暮らし/つばた英子・つばたしゅういち」
だんだん美しくなる人生を設計する。
自分たちの手で暮らしを彩るおふたりの聞き語り。
自分たちのものづくりも、
目の前に広がる何気ない日々の生活から生まれてくるものでありたいと
改めて感じさせられた1冊です。
「木のいのち木のこころ〈天・地・人〉/西岡常一、小川三夫、塩野米松」
宮大工として法隆寺や薬師寺の復興に尽力した西岡さんの言葉からは、
職人としてのプライド、育てる人としての信念が感じられ、
背筋がすっと伸びるような気持ちにさせられます。
また自然と人間への敬意がどの言葉からも感じられ、
ハッと気付かされる事の多い1冊です。
だんだん美しくなる人生を設計する。
はっとさせられる言葉。
小嶋さんのものづくりの背骨を教えていただいたような気がします。
Q3
草や木で作られたもの(工芸品に限らず)で、
大切にしているものや、思い出に残るものをひとつ教えてください。
A3
草や木の魅力ってなんだろう。
待ちわびた陽だまり、何がなくとも人々はぞろぞろと外へと向かう。
ふとつめたい鼻先からやわらかな香りを感じる季節。
めぐみの雨が続き、空気にうるおいを与え、日に日に緑が生い茂る季節。
風を感じて景色がはやく動いて鼓動が高まっていく。
空が赤らんできたことを感じるころ、風に運ばれてくる香り。
そして金木犀の花が咲き始めると心が騒がずにはいられない。
そう、実りをむかえる季節。
枯れ葉も舞い落ちやがて深い眠りにつく山々、
澄み渡る空気があたりの景色をよりいっそう凛とさせる季節。
それぞれの季節の散歩道で、
なぜだか理由は分からないけれど惹きつけられる草や木に出会うことがあります。
そんな草木に胸の高鳴りを感じながら、嬉々とし戯れ帰る。
また日々の生活のなかでふとそれを目にしたとき、
おまもりのような存在になっていたり。
呼吸をともにする草や木に、
理屈ではなく安心感を覚えるのかもしれません。
小嶋さんの作品を心地よく見て、触れていただけるように、
「手仕事の庭」の花壇に面したブースで小嶋さんに展示をお願いしています。
「手仕事の庭」にも、楮とトロロアオイが育っています。
素材と生み出されたものが、同じ空間にあるのはとってもうれしいこと。
皆さんとその空間をご一緒できることが工房からの風の喜びでもあります!
小嶋紘平さん・祐希さんのお仕事のHPはこちらになります。
→ click