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月別アーカイブ: 10月 2023
director's voice
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小野彩香さん(フェルト・裂織り)
Q1
東京都でフェルトを中心に制作を続ける小野彩香さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか
A1
私は、羊毛を縮絨してフェルトの作品を制作しています。
寒くなり始めたこの季節にフェルトのふんわりとしたあたたかい作品をお試しいただければと思います。
彫刻的な帽子を中心にストールや小物などを出品致します。
また、365日毎日使いたくなるバッグをコンセプトとした裂き織りのバッグも出品致します。
シンプルでシック、モノトーンのバッグです。
今回初めてのお披露目となりますのでドキドキしています。
Q2
小野さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
紡ぎ車です。
私は、専門学校でテキスタイルの勉強をしました。
織も紡ぎも、まさかこんなに私に寄り添って支えてくれる存在になるとは思ってもみませんでした。
特に糸紡ぎは、一定のリズムを刻みながら無心に手を動かす事が心地良いです。
自分のペースを取り戻すひとときを与えてくれます。
この紡ぎ車は専門学校卒業と同時にちょっと無理して購入しました。
最初は白木でしたが、自分で塗装し、調子が悪くなったら調整して使い続けています。
これからも大切にしていきたいもののひとつです。
海外の方にも注目されている小野さんのフェルト。
ニッケ鎮守の杜、おりひめ神社の空間に、フェルトの特性を生かした造形的なフォルムの帽子が出現するのが楽しみです。
小野さんご自身がとてもファッショナブルで、また、以前は法律を専門的に学んでいらしたという独自の感性と歩み方の中から生まれる作品の数々。
深く見ていただけたらと思います。
小野彩香さんのインスタグラムはこちらです。
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director's voice
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こるぬこぴあ(こぎん刺し)
Q1
石川県から出展くださる「こるぬこぴあ」さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
こぎん刺しの技法と伝統的な模様を用いた作品を出展します。
津軽こぎん刺しは、青森県の津軽地方に伝わる伝統工芸です。
江戸時代、東北地方は冷害による飢饉に苦しめられており、 倹約令で、農民は普段着として麻の生地、木綿の糸以外の使用を禁止されていました。
厳しい冬の寒さを乗り越えるため、また擦り切れた衣類を補修して大切に一生涯着るための工夫・生活の知恵として、こぎん刺しは誕生しました。
家の女性たちは冬の手仕事として暗くて寒い冬の間、月明かりと手の感覚を頼りに家族のために一針一針こぎん刺しを刺し綴りました。
それは嫌々させられた苦しい仕事ではなく、模様の美しさを競うようにしてたくさんの種類の模様が生み出され、楽しまれたといいます。
こぎん刺しは明治以降鉄道の普及により物資に困らなくなったことで一度途絶えますが、 昭和初期の民藝運動によってもう一度手芸的に盛り上がりを見せます。
工房名「こるぬこぴあ」は、cornu copiae (収穫祭などで飾られるオブジェ。豊穣、豊かさの象徴)を意味しています。
貧しく制限がある中で、美しいこぎん刺しを綴った当時の人々の心の豊かさに想いを馳せ、物資的に豊かな現代にあるこぎん刺しの姿を、時代の流れも汲みつつ自分なりに考察して、作品の形を工夫しています。
耳飾りは季節を楽しめるような色づかいにこだわっています。
こぎん刺し発祥当時は藍色の布に未晒し糸の使用のみ許されていましたが、今は禁止がないので、色を楽しみたいと言う気持ちを込めています。
また、こぎん刺しは裏側には表とは白黒反転した模様があらわれますが、小物に仕立てるとどうしても裏側は隠れてしまいます。
「こぎんは裏も美しく」と言って、裏側の模様もとても素敵なので、耳飾りの右と左で表と裏を表現しました。
形は吉祥模様の亀甲にちなんで六角形です。
こぎん刺しは名のある職人の仕事ではなく、名もなき女性の家庭の仕事でした。
そのことを、有名で光り輝く宝石ではなく、身近にあって個性的で魅力ある小石に例えて、可愛い形の石を探して拾い、型をとってブローチや帯留めに仕立てました。
使う素材を有機素材にこだわり、石が来たところに還れるようにと遊び心もプラスしています。
元々コースターやアクセサリー置き場などの敷物としてイメージしていましたが、使うのが勿体無いとのユーザー様からのお声が多く、壁にも飾れるデザインを考案しました。
使う時も仕舞う時も美しく空間と生活を彩ります。
Q2
こるぬこぴあさんが、工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
針刺し、こぎん針、指貫。
この3点でこぎん刺しの道具は以上です。
とてもシンプルかつコンパクトで、場所を選ばず針仕事ができます。
この小さな道具から生み出される無限のこぎん刺しの柄、模様。
布と糸、時間が許す限りずっと刺し綴ることができる…そのギャップが個人的にグッとくるポイントです。
Q3
こるぬこぴあさんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。
A3
漆芸家の名雪園代さんのえんぴつキーホルダーです。
約10年愛用しているのでもうだいぶ使用感があり…
大学生だった時、下校中に金沢市内のクラフトイベントにふと気がついて、なんとなく立ち寄りました。
当時、一般の国立大学に通っており「よく勉強して、進学して就職する」という道しか知らなかった私は、工芸作家として作ったものをこのように展示したり、販売したり…
そういう世界があることをその時初めて目の当たりにして、そしてなんだかワクワクドキドキビビビと来た感覚がありました。
今でもその時のことを思い出すたびにこの感覚が蘇ります。
所持金がない中色々と作品を見て周った中で、このえんぴつキーホルダーはリーズナブルで買えるお値段でした。
名雪さんが「漆の箸を作る時に切り落とされた端っこで鉛筆を作っているんだよ。漆だから塗れないよ、ふふふふ。全部一緒に見えるけど、微妙に違うからお気に入りを選んでね」と声をかけてくださり。
「漆って高級品だと思っていたけど、こんな可愛い形で、私にも買えるお値段で手に入ることもあるんだなぁ」なんて考えながら一生懸命選んで購入した思い出です。
作り手として、この時の買い手の自分の気持ちを大切にしたい思いで、ずっと大切に愛用しています。
『小さな道具から生み出される無限のこぎん刺しの柄、模様』
こるぬこぴあさんが手がけるこぎん刺しは、どんな風にひろがっていくのでしょう。
こぬるこぴあさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、稲荷社の脇。
今度は、こぬるこぴあさんの展示と出会って、進路、人生が変わって、開かれていくひとが現れるかもしれませんね。
こぬるこぴあさんのインスタグラムはこちらです。
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nikadori(編組)
Q1
沖縄県うるま市から出展くださるniakdoriの荷川取大祐さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
私は「沖縄に在るもの」を根幹としたものづくりをしています。
その枝葉として、今回は沖縄の植物を用いた「草編み細工」と「漆喰花器」を出品いたします。
「草編み細工」
草編み細工は、「民具」と分類されることが多いです。
質朴な印象を与え、自然に寄り添いながら日々の暮らしのなかでつくり出された民具。
民具は、先人の知恵そのものです。
だからこそ、民具が過去の産物として博物館や資料館に展示されているのは、もったいない気がします。
私は、自身が生活を営んでいる沖縄の植物で、現代の生活に使える「現代の民具」をつくりたいです。
「漆喰花器」
漆喰(むち)でつくった花器。
ドライフラワーの一輪挿しです。
白色は、琉球石灰岩
灰色は、軽石
赤色は、首里城破損瓦 を粉砕して作った絵の具を用いています。
それぞれの色には、それぞれの出来事に基づいた、それぞれの記憶、それぞれの想いがあります。
沖縄の記憶(過去)を色に載せて、想いをこれから(未来)につなげます。
Q2
荷川取さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
少し卑怯な答えになるかもしれませんが、自分自身の「手」です。
長年大事に使っている自作の道具などを思いつきもしました。
ただそれは、言葉を選ばずに言ってしまえば、替えが利きます。
使っている年月も手には遠く及びません。
やはり、「手」です。
「試行錯誤」、つまり思考と試行の行き交いを重ねること。
私が大事にしていることです。
試行錯誤を重ねると、手はやがて思考から解き放たれます。
私は、それを「感覚」と呼んでいます。
草編み細工においては、縄綯いの撚りや編み込んだときのテンションの確認など。
漆喰花器においては、漆喰と砂を調合したときの粘度の確認や形成など。
私は、多くの工程において手の感覚を頼り、またその感覚を信じています。
つまり、自分自身の手を「信頼している」ということです。
これからも、この手で大好きなものづくりを続けていきたいです。
Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。
A3
沖縄県読谷村の「やちむんの里」にある横田屋窯(ゆくたやがま)の器です。
釉薬の独特な風合いもさることながら、縁(ふち)の青色と蛇の目の環(わ)のバランスが絶妙で、とても気に入っています。
環の効果が手伝ってか、きれいに盛り付けたいという気持ちが働きます。
また、容量や深さにおいて汎用性があり使い勝手が良く、ほぼ毎日使っています。
・「素材」を感じることができるもの
・「手」を感じることができるもの
・日常的に使えるもの
・心に彩りと余白を与えてくれるもの
私は、そういうものを使いたい。
そういうものをつくりたい。
この器は、改めてそう思わせてくれます。
荷川取大祐さんからのメッセージ、とても骨太です。
手を動かしながら、考えを巡らして来られた中での言葉。
たしかな重みがありますね。
先日、沖縄から現地であるコルトンプラザを訪ねてくださいました。
荷川取さんのテントが建つ予定の場所を味わうように感じながら、「手仕事の庭」もゆっくり見てくださって。
ジンジャーリリーを見つけて、月桃に似ているなぁとか(確かに、似ています!)
トロロ葵(紙漉きのネリに使います)が咲いていますねーとかとか・・・。
工藝にまつわる植物をよくご存じで、ほんとうに手仕事がお好きなのだなぁと感じ入りました。
「工房からの風」の機会がなければ、荷川取さんとの出会いも難しかったかもしれません。
遠い地で、工藝や手仕事にまつわる物事を同時代に感じ、考える方とで出会えること、そして、多くの方に出会っていただけること。
とても幸せに思います。
nikadori 荷川取大祐(にかどりだいすけ)さんの出展場所はニッケ鎮守の杜。
おりひめ神社の鳥居に向かって右側あたりです。
ホームページはこちらです。
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そして、荷川取さんも映像版に登場くださっていますので、こちらもご覧くださいませ。
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so/et(籐籠)
Q1
都内で籐籠の制作をするso/etさん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
モノトーンカラーを纏った籐籠を出品します。
素材そのままの白に加え、浸染した黒や杢グレーの色から作品を制作しています。
特に黒色にはこだわりを持ち向き合っています。
濃く深い黒色、赤みがある優しい黒色、青みがある冷静な黒色・・・
作品の個性によって染め分け、モノトーンカラーの世界に豊かな広がりを与えています。
作品は籠鞄を中心に、お部屋で楽しむ籠や花器・壁掛けをご用意します。
籐はシンプルで自在性のある素材なので、定番の四角い鞄や丸い皿はもちろん、
異素材との組み合わせやユーモアのある形もとても似合っているように感じています。
また、それはモノトーンカラーだからこそ活きていると考えています。
ブランド名 so/et(ソエト)は、【皆様に「添え(ソエ)」る / 皆様と私が作る籠との間を取り持つ「〜と(ト)」】から成っています。
今展では気持ち良い秋風が吹く中、皆様の生活に寄り添える作品をお見せできたらと思っています。
Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
制作時に使っているアンティークのちゃぶ台です。
通常のローテーブルと比べて高さが約5cm低いので、しっかり押さえたり編み途中の籠の全体像を確認するのに、自分の身長にとても合っています。
中央の枠は火鉢を入れるための蓋です。
残念ながら火鉢を使うことはありませんが、趣ある見た目も気に入っています。
Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。
A3
長野県で作られた竹製のコーヒードリッパーです。
制作していると、つい休憩そっちのけになってしまいます。
制作の合間にこのドリッパーを使い丁寧にコーヒーを入れることで、制作時間にメリハリができています。
同じ籠細工ということもあり、コーヒー色が深まっていく経年変化を楽しみながら使っています。
so/et(ソエト)は、ひとりの作家がブランディングから制作前一貫して行っている籐籠です。
所謂手工芸品の趣きよりもファッション性を感じる作品が特徴で、「工房からの風」の中では少し異色かもしれません。
けれど、工房で大切されているちゃぶ台のお話や、竹製のドリッパーでコーヒを楽しまれるところなど、他の出展作家の多くと共通する感覚を感じます。
きっと、フレッシュで素敵なハーモニーがうまれるような気がして、期待しています。
so/etさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、おりひめ神社の奥。
お隣は、藍染めの革作品のenkuさん。
脇には、キャンドルの落合可南子さんのブースがあります。
鎮守の杜におしゃれな空間が出現しそうですね。
そして、程近くには、月桃など沖縄の植物で籠を編むnikadoriさんも。
素朴な籠とモダンな籠。
ちがうところ、同じく感じるところ。
作家と直接お話しする中で、心に響くことも多そうですね。
so/etさんのインスタグラムはこちらです。
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落合 可南子さん(キャンドル)
Q1
都内でキャンドルの制作をする落合可南子さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
キャンドルをメインに蝋で制作したオブジェ、花器の作品を出品させて頂きます。
自分の心が疲れきっている時に蝋という素材に出会い数年。
その日から蝋の魅力に夢中になり、自分の心を癒してくれた蝋という素材。
蝋の様々な可能性を模索し日々向き合いながら、日常に潜む美しさの気配を大切に “暮らしに寄り添う自然美”を意識に制作しています。
蝋という素材の本来の用途はキャンドルとなり火を灯すのがメインな素材です。
灯りに魅力があるのは勿論なのですが、溶けてしまうのが勿体無いや火をつけるのが怖いという声から灯さないキャンドルがあっても面白いのでは、と思ったのがオブジェや花器を創り始めたきっかけです。
蝋の表情は様々な表現を見せてくれます。
灯り、灯りだけでなく蝋だからこそ出来る傍にあるだけで暮らしに馴染み寄り添えるような静かな空気感を纏うモノ。
作品にはひとつずつ手でこねて成形し丁寧に作り上げたキャンドルや季節の移ろいをイメージし精油で香りつけした香るオブジェ。
色付けは蝋に合うかどうかを試しながら見つけた墨、木灰、藍などの天然の物を使用し天然だからこそ出る優しい色合いに仕上げています。
移ろい行く日々の中、日常を過ごす大切な空間に寄り添い暮らしをささやかに彩り穏やかで満ちた情景を想い浮かべながら。
秋のお庭の中、お手に取っていただけたら嬉しいです。
Q2
落合さんが、工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
ホーロー鍋と温度計。
制作で使用するものはどれも重要で大切な物ばかりですが、制作の土台となるホーロー鍋と温度計は特に大切なものです。
蝋は温度管理が重要なので常に温度を測りながら制作していきます。
ホーロー鍋は最初に購入した道具で、様々な形を試しながら今の数種類の鍋に落ち着きました。
ホーロー鍋でゆっくり溶ける蝋を眺めている時間が心を整えてくれる時間にもなっています。
Q3
落合さんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。
A1
伊藤環さんのマグカップ。
量が入る大きめなマグカップをずっと探していた所に、親友から誕生日のお祝いに頂いたものです。
アンティークのマグカップのオマージュとして作られた作品は置いてあるだけで眺めたくなる美しい佇まいなのですが、初めて使用した時に口当たりの良さにも感動を覚えたくらいです。
今では朝一にはまずこのマグカップで白湯を飲み、その後にコーヒーを淹れ自分の心と身を整えてくれる365日欠かせない宝物のようなマグカップです。
落合 可南子さんから寄せられた写真をみても、シックな美意識が伝わってきます。
当日はどのようなプレゼンテーションになるのでしょうか。
とても楽しみですね。
落合可南子さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜おりひめ神社の奥。
インスタグラムはこちらです。
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PAPER BRUT(手漉き紙)
Q1
新潟県十日町市で和紙に取り組むPAPER BRUT。
小嶋紘平さん、祐希さんは、「工房からの風」にどのような作品を出品されますか。
A1
手漉き紙を出品します。
私たちは四季の移ろいや目の前に広がる風景をそれぞれの植物で表わせられたらと、紙の原料である楮の栽培や植物の採取、紙漉きを行っています。
紙は植物の繊維と繊維が重なり合うことでひとつの形となり、さまざまな表情を見せてくれます。
身近な植物や樹皮を使っての制作は、その植物の一面を垣間見るようで驚きと発見を与えてくれます。
時の重なりを表現出来たらと思って制作したシルクスクリーン作品も出品します。
ようやく訪れた春。
雪が消えた株元からおぼろげな芽が出てきたかと思うと、ひと雨降るごとに、朝めざめるごとにすくすくと育つ楮。
その楮とともに過ごした中で感じたこと、印象に残った出来事を1枚の紙に書き記しています。
他にも立体的な造形やテクスチャを感じる紙も出品する予定です。
Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
昨年の冬に作った萱簀(かやず)です。
この萱は紙漉きを始めた頃から少しずつ採取した萱を時間を置き寝かせて、ようやく簀が編める大きさの量がたまったので編んだものです。
雪かきの合間にカラコロとコマを前後に動かし簀を編み、寒くなったらまた雪かき。
はらはらと舞う雪の調子に合わせてコマをすすめていくうちに、心も体もうちにうちにこもっていきます。
自然の素材を使って少しずつ手を動かし道具を作っていく。
かつての冬の暮らしもこういう感じだったのかなと思いながら簀を編んでいたのを覚えています。
私たちが暮らす場所は冬は雪深い場所で、いつまで降り続くか分からず不安になるほどの雪と共に冬の時間を過ごします。
そこから思い通りにはならない、コントロールできないものが確かに存在すること、この雪が巡り巡って大地に恵みをもたらしてくれるという喜び、時の流れ、様々なことを私たちに教えてくれます。
Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものについて1点教えてください。
A3
家の屋根裏に眠っていたわら細工です。
飾らない中にも美しさがあり、力強さや存在感を感じます。
昔この家で暮らしていたおじいさんが農閑期の冬仕事に作っていたものだと聞かされています。
わらをなうことから始まり、さまざまな形へと姿を変えていく。
暮らしの中に当たり前に手仕事があったということ、また身のまわり植物や素材で様々なものをまかなっていたということ。
初心にかえる気持ちにさせられます。
二度目の出展となる小嶋さん夫妻。
伝統的な和紙づくりを軸に、新鮮な表現に挑戦していくチャレンジングな姿勢から生まれる作品の数々は、今展でも見応え豊かなことと思います。
出展場所は、前回と同じく手仕事の庭の手前。
和紙づくりにかかせない、トロロ葵のを育てているところです。
ホームページはこちらになります。
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土岐千尋さん(木工)
Q1
岐阜県恵那市で木工制作をする土岐千尋さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
栗、桜、楓などの木材を鑿、彫刻刀、小刀を使って彫ったカトラリー、アクセサリー、器を出品します。
アクセサリーはとても小さな彫刻です。
木材は薄くしたり、細くしたりすると割れることがありますが、繊細さを表現できるように、注意して彫っています。
ねじった形はねじって作ったかのように見えたら、嬉しいです。
スプーンに飾りを彫ったものは、全て違うので、一つ一つ、じっくりとお気に入りを探してほしいと思っています。
線で描いた模様を彫って表すので、どの部分を彫って、どの部分を残すのか、時間のかかる作業ですが、とても好きな時間です。
木のお皿は、家具などを作った後に残る端材を使用することがある為、不揃い、ゆがみ、左右非対称なものがあります。
我が家ではパンに木のお皿が定番ですが、果物、サラダ、揚げ物などなど、いろいろ使えます。
小さいものはワンプレートの盛り付けのポイントにも。その他、アクセサリーや小さなお人形を乗せて飾ってもいいですね。
Q2
土岐さんが、工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
小型のボール盤です。
このボール盤と糸鋸を一人暮らしのアパートに持ち込んで、作業をしていました。
4軒だけの小さなアパートでしたので、平日の昼間は誰もいなくなることがわかっていましたが、迷惑をかけていた日もあったかもしれません。
それから20年以上、作業場を転々としても、一緒に働いています。
Q3
土岐さんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。
A3
手ぬぐいです。
手ぬぐいを好きになるきっかけになった一枚が月の満ち欠けを描いたものです。
2007年のものですね。
飾ったり、手を拭いたり、マフラーにしたり、広げて日除けにしたりもできます。
今は30枚くらいあって、いつも持ち歩いています。
出かけた先で見つけると、つい買ってしまいます。
最新は水木しげるさんのガシャドクロです。
岐阜県恵那市で、土岐将廣さんと夫婦で「マサチロ雑貨店」を開く千尋さん。
「雑貨店」といっても、お二人が制作する木のカトラリーやお皿、アクセサリー、写真立てなどの生活道具屋や家具を制作、販売しているお店で、工房を中心に週に二日ほどを開いています。
ずっと以前、将廣さんが「工房からの風」に出展くださって、千尋さんもお手伝いくださったとのこと。
今回は、自らのお仕事での出展ですので、そのときの経験をもとに、きっと豊かに準備くださっているように感じます。
コロナ禍の3年間も「工房からの風」は、開催を続けてきました。
開催方法を工夫し、事前予約制にしたり、時には「そよ風」としても、作り手と使い手の交流の風を止めないようにと。
その中で、一番もどかしかったのは、「工房からの風」ならではの事前ミーティングや個別のミーティングがなかなかできなかったこと。
開催当日の二日間だけではなく、それまでの準備期間も「工房からの風」にとって、大切なものと思って運営してきたので。
久しぶりに事前ミーティングや個別ミーティングが再開できた今年、土岐千尋さんは積極的に臨んでくださいました。
この出展の機会をとても大切に捉えて、秋の実りの日に向け、精一杯お仕事を深めていらっしゃることを感じて、嬉しく、ありがたく思っていました。
間もなくその果実のようなみのりの作品に出会っていただけますね。
土岐千尋さんの出展場所は、コルトン広場スペイン階段前。
インスタグラムはこちらです。
→ click
今展スペシャル動画にも登場くださっています。
→ click
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工房まりも屋(木工)
Q1
「工房からの風」へは、二回目の出展となる工房まりも屋の佐竹真由美さん。
今回はどのような作品を出品されますか?
A1
木工ろくろで木を削り。漆で仕上げる。
漆器の制作をしています。
生まれ育った石川県山中温泉は漆器の産地です。
実家も漆器の問屋をしてて父親は下地(塗りの前の木地を固める作業)の職人をしています。
幼い頃から漆器は当たり前に家にあり、食卓に当たり前に並ぶものでした。
実家の家業や漆器には全く興味が持てずに、高校を卒業してからは、東京の美術大学に進学。
空間演出、インスタレーションの表現方法で作品を発表していました。
でも作品を発表する度に、『何か違う』と違和感みたいなものがあり、その違和感がどんどんと増幅していき、自分は一体何がしたいのか?何が作りたいのか?
卒業後には全く分からなくなり、自分を見失ってしまい、何もかも嫌になり1人旅に出ました。
旅の最後、久々実家に顔を出しました。
母親が父が作った漆器で、みそ汁を出してくれました。
父が作った漆塗りの器。
手のひらで器を包み味噌汁を飲んた瞬間、カミナリみたいなものがズドンと自分の中に落ちた感覚。
漆の香りと味噌の香りが混ざり合い、なんとも優しくて手のひらに伝わる温かい感触。
全てが優しくて、気づいたら涙が流れていました。
『これを作りたい』心から強く想いました。
初めての感情でした。
遠回りしたけど、自分の本当に作りたかったものは、すぐ近くにあったんだと。
旅に出て、絶望感から解放され、溶けた心だったからこそ、素直にその感覚を受け入れ、感じられたのだと思います。
全ての流れには意味があったと。
あと時の気持ちは薄れる事なく今もなお、私の制作の原動力になっています。
手のひらで包んだ時に感じた幸せ、
『手のひらの幸せ』
食する大切な時間のひと時に、少しでも多くの方々に幸せな気持ちになって欲しい。
そんな想いで ひとつ ひとつ気持ちを込めて、大切に作っています。
まりも屋のブースにお立ち寄りの際は、器をお手に取って『手のひらの幸せ』を感じて貰えたら嬉しいです。
手のひらのサイズに合わせ
色々なサイズの器たちと一緒にお待ちしています。
Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
馬(鉋台)
鉋を構える台として使います。
見習いの時に職人さんに作って頂きました。
10年以上使用しています。
馬が無いと木地挽きが出来ません。
馬に鉋を乗せてリズミカルに身体を動かす。
私の動きに合わせて、木の部分が凹み、私の動きに合った形になりました。
共に成長してきた寄り添い続けてくれてる、無くてはならない私の相棒です。
手のひらで包んだ時に感じた幸せ、『手のひらの幸せ』
明解なコンセプトは、迷い、悩み、歩いた先に出会った実は身近に存在していたものだったと。
佐竹さんのシンプルで深い想いから、形となったまりも椀。
ご自身用はもちろん、お子様からご高齢の方まで、さまざまサイズからお選びいただけます。
ころんと愛らしいフォルムのまりも椀が並ぶのは、コルトン広場スペイン階段前。
工房まりも屋のインスタグラムはこちらです。
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尚、スペシャル動画にも登場されていますので、こちらもぜひご覧ください。
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木と漆 万緑 (木工)
Q1
福井県福井市で制作をする「木と漆 万緑」さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
挽物(ひきもの)という技法を用いて作った木地人形を出品いたします。
白漆や生漆にて、木目を生かした拭き漆という技法で仕上げ、色漆で顔を描いています。
人形の胴体部は空洞になっており小豆を入れています。
振るとシャカシャカと音が鳴り、樹種によって異なる音色や質感を感じていただけると思います。
また、押すとゆらゆらと体を揺らします。
音や揺れで、もの言わぬ物たちの声や動きを表しています。
私が木地人形を作り始めたきっかけはコロナ禍でした。
ちょうど育児中だったため、こどもたちと家の中にこもる日々が続きました。
不要不急という言葉について嫌でも考えることになり、何が大切で何が不要なのかを自問自答しました。
唯一確かなことはこどもたちの存在が何よりも大切だということでした。
そして、存在そのものに価値があるものを作ってみたい、私にそれができるのかと強く思うようになりました。
そんな思いを抱え、幼いこどもたちを日々眺めてできあがったものがこの木地人形たちでした。
また、幼少期に山間の田舎で育ったこともあり、自然はとても身近な存在でした。
木の実や草花などを小さな掌の上にのせては眺めていました。見つめていると胸を締めつけるようなときめきを感じました。
その頃の気持ちを形にしたものが、掌におさまる小さな木地人形です。
万緑(ばんりょく)という名前は、夏の季語に由来しています。
万緑とは夏の野山が見渡す限り緑になった光景の描写です。
梅雨が明け、夏にさしかかる頃にはやわらかい若草色だった野山が青々とした緑に変わります。その瑞々しさと力強さを木は持っているということを忘れないためにつけました。
木という素材を自然からいただき、生かせるようになるためのみちしるべとして名づけました。
木と漆の美しさが生活の中に潜むよう、ただ愛おしい存在になることを願って製作しています。
Q2
木と漆 万緑さんが、工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
挽物の修行を終え、独立する際にお世話になった工房の師匠が誂えてくださったまな板です。
木を鉋で削るための作業台のことを挽物の世界ではまな板と呼びます。
このまな板は、栃の木の縮み杢が美しい厚みのある一枚板です。
本来なら作品用として取り扱われるほどの貴重な板を贈ってくださいました。
道具や鉋屑に埋もれるまな板を掃除する度にこの縮み杢が浮かび上がり、その美しさを眺めて製作できることのありがたさを日々感じています。
師匠から教えていただいたものは、経験や技術だけでなく、ものを大切にすることや、人と人との繋がりの大切さを教えていただいたのだと思います。
Q3
木と漆 万緑さんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。
A3
挽物の修行時代に古道具店で出会った木彫のちいさな仏様です。
工藝品ではないのかもしれませんが、私が木地人形を作る原点にあるものだと思っています。
古道具は好きですが仏像などを蒐集する趣味もなく信心深い方でもないのですが、お店でこの仏様を見た時にとても清らかな気持ちになりました。
思えば物に対して敬意を強く感じたのは初めての経験だったように思います。
それ以来、この仏様の前では姿勢を正し、手を合わせて一礼するようになりました。
この仏様に対して専門的な知識がなくとも、自然と心が正される力を持っていることに驚きました。
このことを通して、物が持つ力を信じるようになりました。
まだまだ道のりは遠いのですが、これからも物が持つ力を信じて作り続けていきたいと思っています。
木と漆 万緑さんが大切にされているまな板のお話し。
とても深い想いを感じられますね。
皆さんから教えていただくもの、どれもが専門の道具で、その道具があってこそ、美しいものが生まれてくる。
使い手はその道具に直接触れることはないけれど、作り手が大切にしている心に触れるのは豊かなことと思います。
コロナ禍の中から制作の核を熟考し、辿り着いた木地人形。
その姿の奥には、万緑という美しい季語にこめられた想いをはじめ、木と漆 万緑さんの万感の想いがこめられているように思います。
木と漆 万緑さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜に入って、右手に添って歩いた先。
インスタグラムはこちらです。
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また、今展スペシャル映像にも登場していますので、こちらもぜひご覧くださいませ。
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石井宏治さん(木工)
Q1
今回の出展作家の中で、一番近くに工房を持つ石井宏治さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
千葉県市川市で木彫にてスプーン、皿、ボウルなどの器を制作しています。
木理の細やかな材を用いて、彫刻刀や鉋などの刃物による手削りで仕上げています。
削りの仕事が好きですし、木部が返すひかりに心を惹かれます。
無垢の木の質感や表情、経年変化が楽しめるように着色などはせずにオイルフィニッシュで仕上げています。
塗膜のない自然な質感は多少の取り扱いに気を遣うものですが、生活の中で木の素材が感じられ親しみやすいと思っています。
制作しているものは使いやすいように。
人の暮らしの傍にあるいいかたちを考えながら、素材と道具の理にかなったものづくりを目指しています。
本展の出品ではアメリカンチェリー材と北海道産のくるみ材・山桜材を主に用いて制作します。
落ち着いた木理で手取りが軽いくるみの木皿。
色艶の良い山桜から素朴なかたちの匙。緻密なチェリー材にてスプーン、フォーク、バターナイフなど。
リム皿とボウルはひとつひとつ個体差を活かして作ることを心がけました。
お手にとってみていただけたら嬉しいです。
Q2
石井さんが、工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
彫刻刀です。
木の器のおおらかさを表現したく彫刻刀で彫り仕上げています。
彫刻刀は徐々に買い足しており、通販でも手に入りますが、やはり老舗の刃物屋さんへ出向き、お話伺いながら選ぶことは勉強になり有り難いことです。
東京の鍛冶屋さんのものと伺いましたがもう高齢でやめてしまったと聞きました。
大切な道具です。
Q3
石井さんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。
A3
フランスアンティークのビストログラス。
当時の庶民的なビストロで普通に使われていたといわれるグラス。
ビアタンにステムがついたようなシンプルなかたち。
使いやすく頑丈、これ以上も以下もないような説得力を感じます。
おおまかなバランスのなかで張りや揺らぎがあり、淀みない動きから作られる身体性のある手仕事が好ましく、良い時もそうでない時もいつも愛用しています。
工房からの風には毎回のように来場くださっていたという石井さん。
満を持して、今回は出展作家として、会場にやって来られます。
『使いやすく頑丈、これ以上も以下もないような説得力を感じます。』
というアンティークグラスに心惹かれる石井さん。
自ら作る木の器にも、静かな説得力のあるかたちを求めているように思います。
寄せてくださった文章も読みやすく淡々としながらも、想いの通った言葉が綴られていて、そのことも作品の姿に通じていて。
想いとその先にある姿が一致していることは、作り手として確かな仕事なのだと思います。
奇をてらわず、けれどシンプルという一言では済まされない心がうれしくなる器。
コルトン広場、モニュメント周りのテントで、ぜひ出会ってみてください。
石井宏治さんのホームページはこちらです。
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