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迫田希久さん/白樺樹皮

Q1
北欧スウェーデンで学ばれた白樺樹皮細工をされる迫田希久さん。
迫田さんも二回めの出展ですが、今回は「工房からの風」には、どのような出品をされますか?

A1
奈良で白樺の樹皮で北ヨーロッパの人々が昔から作り続けているカゴや小物などを制作しています。
白樺の手仕事とは、スウェーデンの手工芸学校で出会い、2人の先生に師事した後、日本で伝統的なカタチと今の暮らしに合うカタチを日々探しています。

今回は伝統的な2つの技法と創作吊り飾りをご紹介します。


〈Hast korg〉
Hast korg(ハスト コリィ)は、スウェーデン語で即席のカゴや簡単なカゴという意味です。
これは折り紙のように折った二枚の白樺樹皮を松の根っこでかがったカゴで、スウェーデンではもっとも古いカゴの作り方の一つと言われています。

留学中、文献や博物館で目にしたものは、もっと土着的で荒々しいカゴでしたが、とても魅力的に見え自分でもいつか制作したいと興味を持ちました。
制作には節やコブがない美しい樹皮が必要で、折る際も割れとの戦いです。
出来上がったカゴは派手さはないですが、素朴な素材の美しさがあると感じます。

小さなモノを整理したり、御菓子を入れる豆皿にも使っていただけます。
私は制作時に必要な小さな真鍮の釘をいれて使っています。


〈Burk〉
Burk(ブルク)は、筒型の保存容器です。これは私がスウェーデンで学んだ最初の白樺工芸で、こんな素材が世の中にあるのかと非常に衝撃を受けました。
私が制作しているBurkは、波々の継ぎ目に丸い蓋、ハンドルは植物などをモチーフにしています。
蓋の色は制作した季節のイメージとスウェーデンでの暮らしで感じた色です。

白樺樹皮は、耐水性や保温性、抗菌性に優れているため容器の中は外部の空気や湿気の影響をほとんど受けません。
そのためコーヒー豆や粉は香りを損なうことなく、塩はサラサラのまま、毎日使用する食品などを直接入れて保存することができます。
通っていた手工芸学校の食堂には、大きなBurkがいくつも並び、中にはコーヒーや紅茶のほかチョコレートの粉が入っていました。


〈星の吊り飾り〉
北欧で生活するうちに季節の移り変わりや草花を友人たちと楽しむことがとても多くなっていました。
日本でも草花を見てまわるのが好きだったので、それを自分の作品に落とし込みたいと自然に思うよにりました。

山の上にある通っていた学校では、夜になると冬は満天の星空で建物からは少しの光が漏れて見えます。
冷たい空気と静けさでシーンと音がするようにも思えました。
当時、毎日感じていた何気ない情景を吊り飾りにしました。

これから進む季節と共に楽しんでいただけたら嬉しいです。

Q2
大切にしている工藝品(古いものでも、新しいものでも結構です)をひとつ教えてください。

A2
動物の骨でできた針入れ
日本に帰国してから訪れたスウェーデンの古道具展で見つけた針入れ。
白樺の手仕事で革などを縫い付けるために使う針を収納しています。

北欧や東欧の民族衣装で昔の女性が常に持ち歩いていた簡易的な針入れは、フェルトでできたものや木、動物の骨や角でできたものがあり、いつか自分の古い針入れが欲しいと思っていたのでとても気に入っています。

もの、道具は呼び寄せあうといわれますが、迫田さんにぴったりの針入れですね。
北欧で学び、感じたものごとを、日本の風土で生きるように作られた作品の数々。
迫田希久さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、レンガ道をおえて、おりひめ神社に向かうところ。
奈良で工房をシェアしている水村真由子さんとお隣のブースです。

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