director's voice

水村真由子さん(木工)より

ニッケ鎮守の杜、レンガ道が折れるちょうど杜の真ん中あたり。
匙を中心とした木工のブースがありました。
水村真由子さんからのメールの一部を共有します。(ほかの方を含めすべてご許可いただいております)

昨晩、奈良に戻りました。
この度も大変お世話になり、ありがとうございました。
やっぱり風は、夢のようで、あっという間。
強烈に心に留まる2日間でした。

今年5月にお会いした時に、2回目の出展はどのように展開したらいいのかなと私が不安げにつぶやくと、
「そんなこと考えてるの?これまでのあなたの仕事を、これまで通りしっかり見せたらいいの」と稲垣さんに言ってもらって我に返ったようになり、その次の日から今展の新作に取り組みました。
常に頭上には湯気がのぼっているような状態で、全集中で真向かった準備期間でしたが本当に愉快でした。

そこからぽろっと零れ落ちてきた、熊のおもちゃ。
動物、身体が動くギミックというキーワードはずっと頭の中にあって、これができたらいいなーという思いを何年も持ち続けていましたが、ある瞬間に頭の中でパズルがカチッと動いて、一気に手が動きました。

取り組んでいるときは表現が悪いですが、愉しすぎて無意識によだれがでちゃうような感覚。
大真面目にふざけることの愉しさ。
見てくれた人の表情はどんなんかなぁと想像するとめちゃくちゃ不安だけと、ワクワクが勝って、手を動かさずにはおれん!という状態。
苦しかったけど、幸せでした。

本展では、ブースの奥のほうにひっそりと置いていたのにもかかわらず、お客さまや、作家仲間、スタッフのみなさん関係なく、本当にたくさんの方がわざわざ見に来てくださいました。
無我夢中から出来上がった熊たちを目の前にすると、今度は世に出して大丈夫かなという不安に襲われましたが自分のスキを信じて、挑戦してよかった。

匙や木べらなどばかりを追求している私のこれまでの仕事とは、全く違うようなものである印象に映っていたのかもしれません。
もちろんこしらえる上では、まったくちがうリズムのものであるのですが、自分の中ではこれまでの仕事があったからこそ、そこから派生して自然と出来上がったものなので、なんら違和感はありません。
自分の中のスキの引き出し、ちょっと勇気を出して開けてみてよかった。
きっとそのきっかけをくれたのは、2回目の風への出展だったのだと思います。
感謝しかありません。

今回も宝物のような経験をさせていただきました。
本当にありがとうございました。
誠実に、そして時にチャレンジしながら、笑顔で手を動かしてゆける自分であれますように。
今はそんなことを願わずにはおれません。

スタッフのみなさまにもどうぞよろしくお伝えください。
お疲れ出ませんよう!

二回めの出展の方は、よい意味でも気負ってしまわれて、何をしたら???
と思うようですが、基本は初出展から今日までの進化(深化)させたお仕事をまっすぐに示されたらよいと思っています。

水村さんもそのように心が定まったあとに、自然発生的に「クマ」が誕生したのですね。
それは無理に絞り出した何かではなく、手と心の実りのようなもの。
お庭のまんなかで、クマも水村さんも!気持ちよく居れたのではないでしょうか。

水村真由子さんの出展前のメッセージはこちらになります。
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