director's voice

角舘徳子さん こぎん刺し 青森

篠竹(すずだけ)の橋本晶子さんのところでも触れましたが、
東北の手仕事からもうひとり参加くださる方がいます。
こぎん刺しの角舘徳子さんです。

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Q
角舘さんは、「工房からの風」には、どのような作品を出品くださいますか?

A
こぎん刺しの肩掛けを出品します。
草木で染め上げた麻の布と綿の糸を使い、洋装にも和装にも合う、
シンプルな文様のこぎんを施しています。
こぎん刺しの特徴である保温性や、幾何学模様の展開、
そして裏模様の美しさを 意識し制作しました。

角舘さんは、大学卒業後に弘前でこぎんに関わる仕事に就き、
その後独立して二年が経ったところです。

プロもしくは、明確にプロを目指している方。
というのが、「工房からの風」ですけれど、このプロというのも、とても曖昧ですね。
あくまでも自己申告ですし、「作家」と自分で名乗った日から、作家であるともいえますし。
(それが好ましいこととは思えないのですが)

先にご紹介したhabetrotさんと同じく、
角舘さんも意欲的に個人ミーティングにいらしてくださったのですが、
その時に拝見した作品をみて、正直困ってしまったのでした。
こぎん刺しを作家として制作しているすばらしい方を知ってもいますし、
また、近年こぎん刺しはブームなのか、応募も少なからずあるのですね。
その中から、地元に根付き、こぎん刺しに深くかかわる仕事も経て、
尚、こぎん刺しを極めたいという若々しい意欲をかって
出展いただくことにしたのですが、
果たして選に通ることが叶わなかった方を
超えるものが明確にあるのだろうかと考えてしまったのです。

もっと具体的に言えば、作ってこられた形態が、
近年急速に増えた「クラフトフェア」で販売しやすいアイテムのみだったのですね。
「クラフトフェア」で求められるアイテムのみを制作していく風潮は、
長い目でみて作家として確立していくこととつながるのだろうか?
そんなあやうさを感じて、その日はゆっくりお話を重ねたのでした。

その後、「作品をみてください!」と、
はるばる青森から再びやってきてくださった角舘さん。
ほどかれた風呂敷から現れたのは、
長い麻布にこぎんを刺し綴った大作のストール群でした。
所謂こぎん小物のみだった作品群から、
ここに至るには、さまざまな挑戦があったことと思います。
そして、これがすぐに答えであるわけではないと思うのですが、
作ること、続けること、を真剣に考えた時間を、
これからの作家活動の糧にしてほしい。そう願うのです。

現在が満点の制作ではないかと思いますが、
目の豊かな来場者の方々が、
角舘さんの抱いている希望や意欲をその作品から感じ取られたら
企画者としてもありがたく思います。

(これまた、長くなってスミマセン!)

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Q
出展が決まってから、角舘さん自身やお仕事などに変化はありましたでしょうか?

A
漠然としてですが、“良い仕事”がしたい、と思うようになりました。
そして作品と向き合う時間が長くなりました。
また、目に映るもの、絵画や他の人の作品だったり
風景など、生き物や植物をよく見つめるようになった気がします。

角舘さんの目線、とてもユニークなのです。

応募用紙にはマンガでこぎん刺しのことも描かれてあって。
檬芦平野(モロヘイヤ)というタイトルのそのマンガのことを一言で説明するのは難しい!
のですが、妙にクセになる?ユーモアをたたえています。
「ほしいなぁ~」とリクエストをしたら、会場でくださるかもしれませんよ。

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Q
好きな言葉、座右の銘、何気なく工房の壁に貼りとめているフレーズなど、
角舘さんが大切にしている言葉を教えてくださいますか。

A
月並みですが“温故知新”です。
染めや織り、布を刺すという行為が生活に根付いていた時代の布。
その再現を目指しています。
また、それを現代の形に昇華できたら素敵だなと思います。

87年生まれの角舘さん。
じっくりこぎんと向き合って、ぜひ豊かな現在の形に昇華させてほしいですね!

角舘さんの出展場所は、スペイン階段前のテントです。

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