director's voice

大住潤さん(木工)

どなたからご紹介しようかと迷いましたが、
間もなく完成する小冊子「風の音」に寄稿いただいた
4名の作家の方たちから始めようと思います。
大住潤さん、西村暁子さん、
Honda Silk Worksさん、三上優司さん。

(「風の音」は、「工房からの風」当日に本部テントで配布します。
尚、登録済みの方には、ぎりぎりになりそうですが、発送します。
(すみません、、現在新規登録は受け付けておりません))

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では、山梨県で木彫をする大住潤さんからのメッセージをご紹介します。

Q
大住潤さんは、工房からの風に、どのような作品を出品くださいますか?

A
木彫りの熊と、僕の木彫りのルーツとなるアイヌ文様を彫ったものを出品します。

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Q
大住潤さんにとって、工房からの風は、どんな風でしょうか?


霧を晴すような風です。

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Q
大住潤さんが子供のころ、初めての「ものづくり」は、どのようなものでしたか?
印象的なものを教えてください。

A
子供の頃、折り紙に夢中になっていました。
親に折り紙の本を買ってもらい、鶴を折ったり、手裏剣を折ったり、
そのうち創作も混じって、何だかわからないものを折ったりしていた記憶があります。
今思うと、平面の紙が立体となっていく面白さに夢中になっていたのかなと思います。

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大住潤さんが熊を制作するに至る過程。

それは物語のようであり、人生の旅そのもののように感じます。

ひとりの青年の豊かな感受性が、インドへの旅をいざない、
星野道夫さんの書を引き寄せ、
先住民族のひとたちのことに関心を向かわせ、
自らの惹かれるものが自然や動物なのだと確信していくこと。

そして、北海道の木彫りの作品と出会い、
なんとかその作り手と出会おうと決心する。

お金を貯め、あてもなく阿寒湖に向かい、師となる人と出会う。

その後、東京で独立して日々を送る中、師に死が訪れ、
その手にしてこられた道具を譲り受けることとなってゆくこと。

そして、ここからは、この春からのことです。

「工房からの風」に応募されたとき、応募に添えられた写真には、
熊の作品はありませんでした。
木彫りの装身具が中心の構成でした。

5月、今年度出展作家のプレ展示「風の予感展」を開いたとき、
やがて展示も終わろうという日に、大住さんがためらいがちに包みを手にしました。
「制作途中なんですけど、見てもらえたらと」

包みをほどくと、小さな熊の彫像がそこにありました。
その静かな表情、澄んだ佇まいに、思わず心打たれました。
ああ、これは、このひとが、ほんとうに作りたいものなのだと、
私にもまっすぐに伝わってくるものでした。

今回「大住潤」という名のもとに発表を始める場に選んだ土地が、
星野道夫さんのふるさと、この本八幡であったことも、偶然ではないように思います。

心の向かうままに歩んだといっても、それだからこそ、
折々には迷いも多かったことでしょう。
歓びと苦しみのないまざった時間の先に生まれた熊の彫像。
それは、星野さんへの単純なオマージュや、
アイヌならではのモチーフというのではなく、
大住さんの心と手が向かった先に宿った姿なのだと思います。

『やっと、君に巡り合えた。
不思議なくらい溢れ出てくる愛おしい想い、それを、僕は彫っていきたい。 』
大住さんの言葉。

大住さんの心の純度を想うと、その心の向かうままに作ってほしい。
私からは、それ以外の言葉はありませんでした。
その言葉を引き寄せたのは、大住さん自身なんですね。

5月以降、熊を一心に彫り続ける大住さんから届いた今回の写真。
熊の姿、表情がぐんぐん自在に伸びやかになっていました。
それは、熊であって、熊だけではない、いのちの姿なのですね。

と、お一人目から渾身のブログになってしまいましたが(笑)
ぜひ、当日、大住さんの手から生まれたいのちの姿と出会ってみてくださいね。
ニッケ鎮守の杜の庭園内、稲荷社の鳥居の前のテントです。

大住潤さんのHPはこちらになります。
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