出展が決まってからの約半年。
50人(組)いらっしゃるので、ディレクターとのやりとりも50通りあります。
内容的にかなり濃いやりとりになる場合もあれば、
さっぱり事務的に終始する場合もあります。
もっとも、今「工房からの風」で
ご一緒いただいている風人さんたちに関していえば、
決して初出展時の準備期間に濃いやり取りがあったか、
といえば、案外そうでなかった場合もあります。
菅原さんや長野さんは、個人ミーティングも叶いませんでしたし、
出展以降にじんわり響きあって、今日を得たような気もします。
なので、この半年で私がおひとりおひとりの作家の方を
わかったようにご紹介などできませんし、
わかったふりをしてご紹介することも戒めています。
作家はすべてすばらしい!みたいなこと、私は書けない(笑)ですし。
それでも、佳き予感がすることは、期待をもって、皆様と一緒に感じたり、
見つけたりしていきたいなぁと思います。
そんな佳き予感の水先案内としてこのブログ「director’s voice」を
お読みいただけましたら幸いです。
と、前振りが長くなってスミマセン!
佳き予感の作家、陶芸の竹村聡子さんからのメッセージをご紹介いたします。
Q
竹村さんは「工房からの風」に、どのような作品をお持ちくださいますか?
A
主に銀彩で装飾を施した器(animate series)を出品します。
以前人形アニメーションに関わる仕事をしていて、
その中で「アニメート」という言葉には「命を吹き込む」
という意味があることを知って衝撃を受けました。
手間暇かけて人形を少しずつ動かし、
まるで生きているかのように表現ができる
プロのアニメーターのきめ細やかな手仕事に物凄く感動しました。
私もアニメートに近い感覚を器で表現できないかなと考えていた時に、
家で飼っていた鶏をなんとなく器に銀で描いてみました。
その鶏の絵は日に日に酸化して色合いが変化していき、
まるで人間みたいに年をとっているようで、
自分なりの「アニメート」がほんの少しできた気がしました。
日々の生活の中で人と共に年を重ねていく器を
「animate series(アニメートシリーズ)」と名付けました。
竹村さんの作品を初めて拝見した時、
とりとけものの絵にとても差があることを感じました。
鳥たちはそこで呼吸をしているかのように瑞々しいのに、
けものたち(足のあるもの)のどこか偶とした表情。
アンバランスをプリミティブ、かわいい、と言えばそうなのかもしれませんが、
鳥たちの美しさと比べると、その違いが不思議だったのです。
聞けば、鳥はすいすい伸びやかに描けるのだけれど、
動物(たとえば馬とか)は、苦手意識があってと。
まあ、なんて正直なひとだろう、と思いました。
そして、苦手克服なんかしなくっていいから!
得意なものを伸び伸びどんどん描きましょうよ!!
と、わははと笑いあって語らいました。
その後、竹村さんの描く鳥の絵は、ますます自在となって、
まさに飛び立たんばかりの表情なのです。
(そして、いつの日にか、動物たちの絵も、
自然に伸びやかに美しく描ける日が巡ってくるような気がします。
なんでも、「ネギ」という名の「ヤギ」を可愛がっているそうですから(笑))
Q
竹村さんにとって「工房からの風」は、どのような風でしょうか?
A
日本の伝統芸能をベースとした
人形アニメーション作品に触れる機会が多く、
個人的に勉強していた頃に、
能の大成者の世阿弥の言葉の中で「風」のつく用語がいくつもあり興味がありました。
その中の「花風(かふう)」という言葉は
芸の成果を「花」、それに至るまでの様々な工夫と心構えを「風」と例えてあり、
「工房からの風」への出展が決まってからの半年間は
まさにその「風」を常に自分の中で感じる尊い日々でした。
その成果としての「花」が咲くかどうかはわかりませんが、
今後も自分の中で風を意識し続け、いつか
「閑花風(かんかふう)-静かで気品のある芸風」な器を作れるようになりたいです。
芸の成果を「花」、それに至るまでの様々な工夫と心構えを「風」
「工房からの風」は、まさにそのような風でありたいと思います。
背筋が伸びるような美しいメッセージを、竹村さん、ありがとうございます。
Q
竹村さんのお名前、あるいは工房名についての由来、
またはエピソードを教えてくださいますか?
A
祖父がつけてくれた「聡子」という自分の名前が好きなので本名で活動しています。
祖父は若い頃航海士で船に乗って世界中を巡っていました。
デジタルではない時代の航海は日中は太陽の方角、
夜は星の位置を見て舵をとっていたそうで、星にとても詳しかったのを覚えています。
「工房からの風」のミーティングの中で
「作り手は自分で舵をとって進んでいかなければならない」という話を聞いて、
この先どんな暗闇があっても、祖父からもらった名前と共に
自力で星を見つけ出し舵を取って進んでいこうと思いました。
おじいさまからいただいたという聡子さんというお名前、とても素敵ですね。
そして、竹村さんのどのメッセージからも、このブログの質問に
とても丁寧に向かい合ってくださったことが感じられて、ありがたく思っています。
まじめてとっても面白い(まあ、褒め言葉として、かなーりヘンな(笑))竹村さん。
命を吹き込む器づくりを目指して作られた作品は、
おりひめ神社隣、神宮社の脇に並びます。
竹村聡子さんのサイトはこちらになります。
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written by sanae inagaki