director's voice

大野七実さんより

地元市川で作陶する大野七実さんからのメッセージをご紹介します。

Q1
図録掲載作品のタイトルと作品についてのコメントをお寄せください。
ほかに、出品くださる作品がありましたらお教えください。

A1
貼花の花器を、掲載しております。
バラの他に、クリスマスローズ、ヤドリ木など、この季節の植物をいくつかお持ちいたします。

貼花(ちょうか)とは、貼り付け文様のことを言います。
普段うつわに絵を施すことはほとんどしないのですが、
これはじぶんの好きな花々を季節に合わせお届けしているシリーズで、
わたし自身とても愉しんでつくっています。

モチーフはどんな植物でも描くわけではなく、
庭で大切に育てているものや、その植物への愛着があって選んでいます。
花器の片面を無地にしているのですが、
それは、実際に花や草木を挿したとき、
絵柄と重なり賑やかになりすぎるため、使う時は無地のほうを正面に。
なにもない時はそこに花が咲くように。との思いからです。

以前お求めくださったお客さまが、
花器の絵柄を裏にして鏡に写して飾られていて。
そんなふうに暮らしのなかで楽しみながら使っていただけたら、
とてもうれしいです。

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Q2
図録冊子がお手元に届いた時の感想をお聞かせくださいますか。

A2
なんて美しい本なのだろう…
最初に手にした時におもいました。

そのうつくしさの源は、読みすすめていくほどに、
ひとりひとりの純粋で真っ直ぐな想いの輝きと、
それを花開かせてくださる方々の深い愛からきているんだと感じます。

作品と言葉が呼応し、
どの頁をめくってもその人らしさが溢れていて、
そのつくりだされるものにじっくり触れてみたいとおもいました。

私たちつくり手のそれぞれの路に、
寄り添い見守り導いてくれる土壌が工房からの風にはあります。
ものつくるひとのしあわせなじかんをあらためて考える機会を頂けたこと。
今の時代に生き、この仕事と巡り会い、よろこびを感じ、
こうして歩んでこられたことがとてもしあわせです。
この歩みをそばで見ていてくれる人たち、
刺激しあえるつくり手たちとの出会い。宝物の一冊を、
ありがとうございました。

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Q3
12月2日いちにちだけコルトンホールに現れる「作り手の本棚」。
七実さんは、どのような本をお貸しくださいますか。

A3
「陶技始末」
著者/ 河井寛次郎

二十代の頃まだ独立する前に、この本と出会いました。河井の仕事への愛、やきものへの慈しみをことばのひとつひとつに感じます。やきもの本来のおもしろさを思いださせてくれる大切な一冊です。
”いつも手は、心より勇敢である”
つくり続けることでしか辿りつけない確かなことば。

「森の絵本」
作/長田弘 絵/荒井良二

長田さんのことばや詩がすきです。シンプルに大切なことを問いかけてくれるこの絵本は、風で出逢ったつくり手の友人からの贈りものです。
森はあらゆるすべてのものを深く静かに包み込む。失くしてはいけないこと。忘れてはいけないこと。こころの森にいつも澄んだ風が渡るように、その森でじぶんの小さな種を大事に育んでいきたいです。

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工房からの風の前身母体のギャラリー活動から関わってくださった大野さん。
やがて30年近くの歳月が流れましたが、
工房からの風出展自体は2015年のこと。
新鮮な感覚と、長きにわたって見続けてくださった想いが両輪となって、
今展にも力を添えてくださっています。

貼花の新作も楽しみですね!