「工房からの風」では、漆器をメインに制作する作家は毎年1名ほどご紹介しています。
今年は長野の工房で制作をする中里洋平さん。
これから伸びてゆかれる作り手の方です。
Q1
中里洋平さんは、「工房からの風」にどのような作品を出品くださいますか?
A1
漆器の椀や皿、鉢、弁当箱やカトラリーを出品致します。
木地はロクロなどを使わず、
無垢の広葉樹をノミやカンナで刳りぬいて作っています。
木の表情を消しきらないように漆を塗り、
かつ長く安心して使えるよう、
縁や底にはしっかり塗って、
丈夫に仕上げることを心がけて制作しています。
独学で形作りから漆塗りまでを手掛ける中里さんの仕事。
素朴で使いやすいかたちながら、
均一、画一ではない、よきおおらかさが木の風合いと相まって、
なんとも味わいのある器となっています。
手がけたひとつひとつの部分に補強などの意味があって、
共に時を過ごすほどに美しく育つ器だと感じています。
Q2
工房でよく聴く音楽、
または、ものづくりを進める中で大切にしている本、
あるいは、心に中で大切にしている映画、いずれかを教えてくださいますか?
A2
マリア書房から発刊されていた「緑青」という骨董雑誌が面白く、
古本屋を巡っては、少しずつ集めています。
幅広いジャンルで、国内外問わず各地の古民芸を紹介していて、
珍しい品々を集めた特集が多いので、新鮮な発見があります。
また寄稿している骨董店の情報も載っているので、
実物を見にお店へ訪ねて行く楽しみもあります。
古きよき、、、といっても、
ほんの30年前くらいまでにはまだ残っていた
身の回りの美しいものたち。
案外その頃に少し古く感じられたものの中に、
今見出すべきよきものがあるような気がします。
中里さんの作るものに感じる美しさ、
目指していかれるものづくりには、
そのような懐かしさがこめられているような気がします。
Q3
草や木で作られたもの(工芸品に限らず)で、
大切にしているものや、思い出に残るものをひとつ教えてください。
A3
以前展示で見た、アジアの古い木彫品が印象に残っています。
動物の彫刻があしらわれた容れ物や食器、彫像など多岐に渡るのですが、
どれも大胆な彫りの入った迫力のある造形で、
また表面は真っ黒で鈍く艶掛かっていました。
食器などは腐食や虫食いを防ぐ為に吊るして保管するそうで、
かまどの煙にいぶされて黒く煤まみれなり、
磨かれたり、人の手の脂が加わったりと、
長い年月を経て独特の表情をしたコーティングとなって行くそうです。
日本でも、囲炉裏の自在鉤や、台所で祀られていた大黒様の彫像なども、
同じように黒光りしいている物を見かけます。
長い間、人の手で大事に育てられきた物に宿る表情には、
強く心動かされるものが有ります。
黒光りとは、時と人の手が共に磨いた輝きですね。
中里さんの手になる器や匙も、使われるほどに艶を豊かにしていくことでしょう。
中里洋平さんの出展場所は、コルトン広場、スペイン階段前。
唯一の漆器の作品ブースです。