director's voice

佐藤亜紀さん(染織)

今年度出展作家のご紹介も東日本からの方々が終了しました。
30名。
ここからは、関西、中国四国、九州、沖縄、スイスからの
出展作家19名の方々からのメッセージをご紹介していきます。

まずは滋賀県の佐藤亜紀さん。
3回目の出展ですが、京都から信楽に工房を移してから初めての出展になります。

Q1
佐藤亜紀さんは、「工房からの風」にどのような作品を出品くださいますか?

A1
草木染めの糸で織り上げたストールを中心に出品します。
素材は、絹糸100%のものや、絹糸に綿糸をくわえたものもあります。

経糸の色に緯糸の色をかさねることで浮かびあがる色。
染めためた濃淡の色や微妙に違う同色系の色がひきそろうことで
うまれる粒子のような色。

手織りならではのこまわりのきく色づかいが楽しく、
おおらかで自由な気持ちで織れるように心がけています。

一枚一枚の布を、ゆっくりと見てさわって、巻いて
あじわってもらえたらうれしいです。

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亜紀さんの布の魅力は、絹を中心とした輝きのある素材に、
得も言われぬ繊細で奥行き豊かな色が奏でるふかぶかとした世界です。
布そのものとして美しく、人がまとうことによって生まれる陰影の美しさが格別なことです。

染め織りを続ける年月を重ねるほどに、
じんわりと亜紀さんが目指している布の世界が
ふくふくと立ち上がってきているように感じています。

いえ、目指している、というのはちょっと正確ではないかもしれません。
かすかに、けれど確かに感じる光の方に向かいながら、
染め手、織り手である亜紀さん自身が見えてくるものに
喜びを感じているような布の輝きを感じています。

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Q2
工房でよく聴く音楽、
または、ものづくりを進める中で大切にしている本、
あるいは、心に中で大切にしている映画、いずれかを教えてくださいますか?

A2
最近、制作しながら高木正勝さんの音楽をよく聴きます。
昔話を聴いてるようだったり、異国を旅してるような気持になったり、
おだやかな陽ざしの日にそよいでくる風のようなここちよさを感じたり、
四季折々の自然の情景が浮かぶようだったり。。。
こんなにも奥ゆきがあって表情ゆたかに音って奏でられるんだなぁと
心魅かれていて、インスピレーションや良い刺激ももらっています。

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亜紀さんの布ととても響きあう澄んだ音楽ですね。
風にそよぐ布のような。

Q3
草や木で作られたもの(工芸品に限らず)で、
大切にしているものや、思い出に残るものをひとつ教えてください。

A1
やはり、「織り機」です。
修行時代に自分の制作用に織り機がほしくて
新品を購入するのは難しく、中古で探していたところ、
ゆずっていただきました。

ゆずってくださった方は、
社会人になって初めてのお給料で購入したものの
30年ほど一度も組み立てず、ねむらせておいたそうです。
部品ごとに、お手製の布の袋に丁寧に入れられ
とても大切に保管されていたのがうかがえました。
使ってもらえるならどうぞどうぞ、ということでご好意でおゆずりいただきました。
今でも年に一度の年賀状で近況などをお便りさせてもらっています。
私が日々、機織りしていることをとても喜んで下さっています。

機には、ここぞという時には
無事に織り上がりますようにと
神頼みみたいにお願いしたりしています。
今まで、数々の山を一緒に越えてきたような仲のように感じます。
これからも大切にします。

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織り手の方々の「機」との出会いには、豊かなストーリーがひそんでいますね。
亜紀さんに機を譲られた方も、こうして美しい布々が生まれてくることを、
ほんとうに喜んでいらっしゃると思います。
亜紀さんの織りあげた布も、そしていずれはこの機も、
心ある方々に譲られていく日に恵まれていくのだと思います。

佐藤亜紀さんの出展場所は、おりひめ神社の手前。
椎の高木のほとりで輝きの布がはためくことでしょう。

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