director's voice

鈴木恵麗子さん 陶芸 宮城

Q1
鈴木恵麗子さんは、工房からの風にどのような作品を出品なさいますか?

土ものの食器や花器などを出品します。
使っているマットな白釉と灰釉は、焼くと土の成分などによって表面の色や表情が変わります。
土もいくつか種類を使っており、色々な表情が出ていると思います。
灰釉は厚くかかっている部分はキラキラとガラス質光沢があり、うすい部分はざらっとした土の触感もあります。
個人的にマグカップなどは持った時に土っぽいざらっとした感触のものが好きなので、
内側はつるりととしていて外がざらっとしたもののシリーズなど作っています。
また手びねりの器のシリーズは、たたいた時の土の動きによってできた形を極力邪魔しないで成形しています。
不規則な形と艶のあるちょっと水色がかったガラスのような質感が、水たまりや湖面みたいだと思っています。
水面を眺めているときのような気持ちを感じてもらえたらうれしいです。
ろくろの器も手びねりの器も、完成した時の土や釉薬の醸し出すもの想像しながら、それをなるべく邪魔しないように制作しています。
ひとつひとつ少しずつ違う風合いの器の中から、好きな雰囲気の物を見つけていただけたらうれしいです。

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Q2
ご自身の工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
すみません、まったく写真映えしない画像ですが…
お気に入りというか、じわじわとその良さに感動している道具です。
これは素焼きの鉢に釉薬の原料になる灰を入れて乾燥させているところで、
素焼き鉢は「吸鉢」などと呼んで、泥状の土を乾燥させたりする時にも使います。
乾燥には石膏などもよく使います。
ただ石膏だと接している面ばかり先に渇いて中が乾かなかったりするのですが、
この素焼き鉢を使用すると水分が中まで均一に乾いて、本当にちょうどいい加減に調節できる優れものです。
自然な速度で呼吸をしている素材なんだなあとつくづく感じます。

私は釉薬に灰を使っていて、今は知り合いの方から薪ストーブで出た灰をいただいています。
そのままでは使えないので、ゴミを取り除いたりした後、水簸といって灰汁を抜く工程があります。
水簸は灰に水を入れ、数週間水を交換しながら行います。最後に乾燥させる時にこの吸い鉢が大活躍します。
作品作りには欠かせない作業で、そのために最適な道具もまた土でできている…という、
なかなか伝わらないかもしれないとても地味なポイントかもしれませんが、
土を扱っているものとしては妙に感動してしまう道具だと思っています。

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Q3
鈴木さんにとって、ものづくりの種火ともいえる、きっかけや動機、大切な人や物との出会いについて教えてください。

A3
一つに絞るのが難しいのですが、敢えて挙げると、陶芸を勉強しに行ったスウェーデンの学校で出会った先生や友人たち、
そしてその学校周辺の景色なども含めて、体験したこと全てでしょうか。

私は仙台で陶芸を始め、本格的に勉強するためにスウェーデンにある工芸の学校へ行きました。
行ってみて感じたことは、言葉や文化が違うはずなのに、どんなに稚拙でも自分に正直な作品や表現をするときちんと伝わって、
理解してもらえるという感覚や居心地の良さでした。クラスメートも先生もとにかく自由で。

ただ、個々は自分の意思に正直で自由なんですが、きちんと協調性もあるというバランスのよい人がスウェーデンの人は多かったように感じます。
自分の意思を大切にしている分、相手の意思も同じくらい尊重するような感じがしました。
逆に言うと自分の意思を表現していないと、「何で?」と理解されないところもありました。

なので自分としてはこんな作品作っていいのかな、と迷ったり思い切って作ったりしたものこそ、ニヤリと受け止めてもらえる空気があって、
それまで感じたことのなかったような自由を感じられました。

寮生活だったので生活も共にし、よりお互いの考えが理解しやすかったのかもしれません。
先生方からも、今思い返してさらになおぐっと心に刺さるような言葉や教えてもらったこともたくさんあり、何度も思い返しています。
技術的なこともさることながら、ものづくりをする上での基本的な気の持ちようについて大切なことをたくさん教わったと思います。
また牧歌的で自然にも近い、美しい風景の数々も、記憶の中から作品に何らかの形で生かせていたらと願っています。

今では離れていますが、よき理解者たちに出会えたこと、そして大切なことを存在そのもので教えてくれた先生たちは、
今では温かく燃え続ける大切な種火であり、私を支えてくれる土台になっていると思います。

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仙台で作陶する鈴木さん。
鈴木さんもスウェーデンでさまざまなことを感じ、吸収し、今の制作、生き方に生かしていらっしゃるのですね。
北欧のすっきりとしながらも温かみのあるインテリアや、空間に似合って、
そして和のテイストが生かされた鈴木さんの陶磁器。
写真では伝わり切れない実物の素敵さをぜひご覧ください。

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鈴木恵麗子さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜に入って、ほどなくの中央部。
ガラスの手塚えりかさんと、森屋茉莉子さんの間です。

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