本間あずささんから
ほうきの吉田慎司さんは風人さん10年選手!(笑)ですが、
一年目の本間あずささん(手製本)からもメッセージをいただきましたので、
もうおひとり風人さんからの「凪ぐ浜の宝物」の言葉をお届けします。
今年の工房からの風では、大変お世話になりました。
稲垣さんはじめ、宇佐美さん、八生さん、庭人さんたちが、長い時間をかけて育んできたお庭の恵みを『鎮守の杜の色暦』という本の形、
そして、二日間だけの展示空間に現せたこと、とても光栄に思います。
お庭の草木と染め布が揺れる木漏れ日のパッサージュ…
お客様皆さん、植物の香りと布の柔らかさに触れて楽しんでおられました。
何より、過去最高の美しさのお庭が、この場を祝福してくれていたように感じます。
異なる手仕事ながら、RIRIさんの染織と手製本は同じ「糸」を通じて繋がっていると発見したことも、嬉しい気付きでした。
宇佐美さんと詩やことばを手がかりに構想を練った時間も、愛おしいものでした。
準備や撮影を通じての風人の皆さんとの関わり、手仕事のジャンルを超えたつながりが、これほど嬉しいものとは、自分でも驚いています。
この「工房からの風」の場では、誰もが自分の手仕事に対する誇りをしっかりと胸に抱き、
普段の制作の困難は少し側に置いて、作ることで生きるという矜持を、爽やかに交換し合っている。
そんな温かな空気を、いつもながら、今年はよりしっかりと、感じることができました。
風人さん、スタッフの方々の手仕事への深い信頼に裏打ちされた、「舞台を整える」思い。
その安心感があるからこそ、胸を張って出展することができていたのだなと、今あらためて思います。
手製本は、記憶をとじこめる、「記憶の箱」なんだなという役割も、深い実感を持って、再認識しました。
形は違えど、hyakkaさんの映像もたしかな記憶の箱、ですね。
工房からの風の歴史を伝えていくという、新たな時系列に進んでいるようにも感じます。
まとまりませんが、、
今年もこの場を作ってくださったこと、関わらせてくださったことに、最上級の感謝を込めて。
二日間だけの夢の工芸村を離れて、日常の仕事に戻って行きますが、この時間が、今後の制作の確かな糧になると信じています。
大変お疲れ様でした。
またお会いできる日まで、
どうぞお体に気をつけて、お過ごしください。
空想製本屋 / atelier bōc
本間あずさ
『この「工房からの風」の場では、誰もが自分の手仕事に対する誇りをしっかりと胸に抱き、
普段の制作の困難は少し側に置いて、作ることで生きるという矜持を、爽やかに交換し合っている。』
『風人さん、スタッフの方々の手仕事への深い信頼に裏打ちされた、「舞台を整える」思い。
その安心感があるからこそ、胸を張って出展することができていたのだ』
『工房からの風の歴史を伝えていくという、新たな時系列に進んでいるようにも感じます。』
初めて「風人」として、企画運営に加わった本間あずささんの感覚に対して正確な言葉ですね。
「鎮守の杜の色暦」は、これで終わりではなく、お庭の営みと共に続いていきます。
本間さんもそうですが、今回心に響いてくださった方々には、これからもぜひ見守っていただければと願っています。
「工房からの風」と共に。
凪ぐ浜の宝物:吉田慎司さんから
第21回工房からの風
お陰様で無事終了させていただきました。
関わる全ての方へ、心より感謝申し上げます。
初日の晴天。
2日目の早朝の小雨。
けれど、開場10分前には雨は上がり、雨粒のあとの光で、お庭の光景が夢のように美しかったのです。
慌ただしく雨対策をして、ドキドキもしましたが、過ぎてしまえば天の恵みのようでした。
年月の中で関わる人たちの想いと手が重なって作られた楽園のような庭。
その庭を巡って繰り広げられた手しごと、工藝の祝祭。
翌月曜日。
穏やかな晴天で、テント撤収もスムーズに進めていただけました。
夢のあと。
毎年恒例となった出展作家からの開催後に頂戴したメール。
作家に許可をいただき、一部公開をしていきますね。
嵐の後、凪いだ浜辺に散らばり輝く宝物のような想いと言葉。
共に感じて、しばしその余韻を味わっていただければと願います。
まずは、風人さんから場の(浜辺の)ウォーミングアップ。
箒の吉田慎司さんからの言葉です。
準備含め3日間、誠にありがとうございました!!
少し雨でドキドキすることもありましたが、これまでになく、穏やかな気持ちで帰路に就いた気がします。
・・・
・・・
今回は、語りきれないほど、個人的な実りが大きくありました。
何故、ここまで工房からの風に思いを募らせて来たのか、庭に共感を得てきていたのかが、動画の制作や対話の中で見えてきたんですよね。
手仕事、庭仕事、生きること、どれも循環の中にあって、自然の力を受け取り、自らの実りを還しながら土が肥沃になり、成長していくという自然観、工芸観を実感する機会となりました。
十五年以上仕事を続けてきた中での解答に近い感があり、嬉しくて語りすぎてしまいました。
ちょっと、完成させた宿題を嬉しくて皆に見せびらかしている感もあり(笑)少し反省もしましたが、何人かの庭人の方に、庭の在り方がいかに手仕事と繋がり、支えとなっているかをお伝えできたことは嬉しかったです。
穏やかな気持ちの中で、人生の杖になるような回答を受け取ることもすごいことなのですが、根が固まったならば、葉を伸ばし、世界と交わり与える番なのだとも思います。
今回出展の皆様同様、新芽の気持ちで!仕事や、風人としての行動を、世界に還元していければと思っています!
より、おおきな視野を得られたことで、どんなことも無駄にはならない、必ず未来に繋がっている実感を得られたような・・・。
より足を強く踏み込み、歩く気概を得られた気持ちです。
これだけ仕事をしてきて、心機一転!と思える機会をもらえることもありがたいです。
・・・
何より、満たされた顔もちの作家さんを見送れたこと、無事にこの場所が続いたことが幸せです!
風人のみんなにも、心より尊敬と感謝を込めて。
吉田慎司 拝
『手仕事、庭仕事、生きること、どれも循環の中にあって、自然の力を受け取り、自らの実りを還しながら土が肥沃になり、成長していくという自然観、工芸観を実感』
『根が固まったならば、葉を伸ばし、世界と交わり与える番』
風人さんとして、出展作家をサポートしながら、自らの思考を深めて実践につなげていく。
吉田さんならではのすばらしい関わり方なのだと思います。
大きな波が去ったあと、鎮まった心にキラキラと輝く想い、言葉をしばらくこの場からお届けします。
風の奥行き
心地よい秋晴れの中、初日を終えました。
大野八生さんと庭人さんが整えてくださった庭の草花が、各ブースにその名の通り「花を添え」ています。
出展作家、来場者の方々、交友が育まれています。
29日日曜日、10時~16時
会場を整え、皆様のご来場をお待ちしています。
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director’s voice
ニッケ鎮守の杜、花壇の奥では、「風人からの風」と「鎮守の杜の色暦」という企画テントがあります。
奥まっているので、見逃された方もいらっしゃるかもしれませんが、来られた方は皆さん長くゆっくりご覧くださる充実のブースです。
工藝作家(風人さん)による、木工や陶芸、箒づくり、草木染のデモンストレーション。
オリジナル映像放映(作家の工房での制作光景)。
本日日曜日14:30から小一時間には、
風人さんを代表して、岡林厚志さん(hyakka)×吉田慎司さん×ディレクーの稲垣のトークイベントも行います。
「工房からの風」の奥行きにあるだろう豊かなものを、皆さんと共に紡ぎだせる時間にしたいと思います。
お越しをお待ちしております。
(風人テント・花壇の奥です)
ハレの日へ
前日の準備が整いました。
北海道からの坂田琢磨さん
沖縄からのnikadoriさんも、無事到着!
風人さんたちは、出展作家さんたちのサポートをしつつ、風人からの風テント、素材の学校テント、鎮守の杜の色暦テント、万華鏡WSテントづくりに勤しんでくださいました。
庭人さんと大野八生さんは、明日の朝、出展作家さんにお配りするお庭の恵みつくりに終日励んでくだって。
なんといっても、プロの水きり!による草花ですので、持ちもよいのです。
お庭の草花をお配りできるクラフトフェア、野外展ができること、幸せです。
季節の巡りなので、こればかりは思うようにならないのですが、今年の「工房からの風」は、史上最高!お庭の草花がきれいです。
ちょうど、お花の咲き加減が美しく。
7月、8月、9月、そして今日!と撮影してきたお庭の映像(約5分)も公開しましたので、ぜひご覧ください。
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この日のために惜しみなく準備された50の個展!の集積と惜しみなく準備に励むことができた「第21回 工房からの風」。
工藝、クラフトに関心がある方はもちろんですが、そうではない方も不思議な澄んだ気持ち、心晴れるような気持ちになっていただけたらいいなと思います。
関わるたくさんの人たちの笑顔で、皆様のご来場をお待ちいたしております。
映像:ものづくりのよこがお
インスタグラムで公開した出展作家の映像版。
もう少し長尺ヴァージョン(各2分ほど)をyoutubeで公開しました。
vol.1 → click
vol.2 → click
vol.3 → click
平井岳・綾子
(敬称略)
今回、全作家に募って、ご自身で映像を撮って送っていただきました。
12作家から送られてきたものを、映像作家にお願いして編集する、という試みをしてみたのです。
ものを作る表情、よこがお、手。
言葉では伝えきれない何か深いもの。
真剣で澄んだ空気。
この短い映像でも、感じていただけるでしょうか。
私からの初めての投げかけに、素直に!(笑)投げ返してくださった12作家に感謝と敬意を表します!
ご覧になられた皆様、ぜひ、各作家のブースで、感想などお伝えくださいね。
「見ました!」だけでも。
作家の方々、きっと励みになると思います。
そして、その中でも特にすばらしい映像を送ってくださった平井岳さん、綾子さんのものは、単独で長尺も作らせていただきました。
こちらもぜひ、ご覧ください。
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追記
もうひとつ、お庭の映像を27日金曜日までに公開予定です。
初夏、初秋のお庭の風景、庭人さんたちとの庭仕事、そして、最新のお庭の風景。
21回目となる「工房からの風」。
今年のお庭は絶景です。
21回目の中で最も秋の草花が美しく咲いている2日間となることと思います。
鎮守の杜の色暦(染色アーカイブ)
galleryらふとには、鎮守の杜の色暦、という染色ワークショップがあります。
春の桜枝、夏の藍の生葉、秋のコブナグサ、冬の枇杷…
ニッケ鎮守の杜という定点を巡る季節の色を追うことで、
この場所が持つ奥行きが感じられるのではないかと思っています。
春が来れば、一年草は種まきから。
太い根で地面を支える樹木も芽吹き、やがて葉が茂り、花や紅葉や。
それぞれの生長と共に、染める草木と色も変わります。
これまでに染めた糸や布を並べると、目の前を鎮守の杜の四季が軽やかに駆け抜けていくようでした。
まるで季節がバトンを渡す、色のリレーです。
このワークショップから派生し、染色アーカイブをまとめた特装本「鎮守の杜の色暦」が、
RIRI TEXTILEの和泉綾子さん、空想製本屋の本間あずささん、galleryらふと、
それぞれの手が繋がって生まれました。
手仕事の庭の花壇近く、藤棚前の「鎮守の杜の色暦」ブースにてお披露目です。
和泉綾子さんは、工房からの風出展以降、手仕事の庭の植物での染色を数年にわたり続けてくださっています。
和泉さんの手とまなざしを通して現れる、清々しき”庭の色”。
枝葉の内に秘めたる美しさにはっとする、続いてどこか懐かしい。
それはちかしい植物たちのあたらしい表情を見せてもらっているような。
今回のために、すべてを手仕事の庭の植物で染めた絹糸で織り上げた四季の布、
春/夏/秋/冬を本に収めました。
そして、この四季の布をストールに仕立て、春/夏/秋/冬、限定1点ずつ、
工房からの風で特別に展示販売をします。
作品に添えるキャプションは本間さん制作のスペシャルバージョンです。
当日は染色デモンストレーションも。
RIRI TEXTILE『手仕事の庭の植物で染める』
両日12:30〜14:30
植物を煮出し、糸を染める工程をご覧いただきます。(本間さんと紙染めの予定も!)
これまでのワークショップで染めたリネンストールもアーカイブとして展示します。
製本家の本間あずささんは、日本とスイスで学ばれた技術をもとに本の修復や、オーダーメイドの本づくりを手がけ、近年はオリジナル作品も発表中。
自ら植物で染めた紙や糸を用いるなど、自然に寄り添った制作をなさっています。
galleryらふとでは「庭」をテーマにした製本ワークショップや、2018年には「庭の本 風」の装幀、製本をしていただきました。
今回は文章、標本、染め糸、織布をおさめるという内容と、手仕事の庭が重ねてきた時間を合わせ、
「折」と「円環」という時の連なりをあらわすふたつのかたちから成る装幀に。
その「折」と「円環」をおさめる夫婦函はしずかな光沢をたたえたハーブ染め絹布張りの「ひかりのはこ」。
標本、染め糸、織布の豊かな色調を引き立てるように、内側の光を静かに宿す器のような入れものを、と。
筆者も敬愛する詩人、片山令子さんの詩から、本間さんが「ひかりのはこ」というフレーズをすくいとってくださったことをきっかけに、
三者それぞれが「ひかり」を想いながらの制作となりました。
また、興味深かったのは、織(布)と製本の共通点。
共に糸を用いる仕事で、「織」と「折」、同じ響きの動作を持っていること。
textile には text という文字が入っていること。
布張りの装幀は丈夫で、大切なものの象徴でもあり、古くより織(布)と製本は密接な関係であったことがうかがえます。
本間さんの工房での制作風景をおさめた、hyakkaさんによる美しい撮影・編集の映像からも、
その繋がりを感じていただけることと思います。
特装本の制作にあたり、
日々手仕事の庭の植物育成に携わってくださる大野八生さん、庭人のみなさん、
そして、「鎮守の杜の色暦」の想いに賛同し、
豊かなアイディア、技術、あたたかな心を惜しみなく注いで取り組んでくださった
和泉綾子さん、本間あずささんに、深く感謝申し上げます。
応援してくださるみなさんの声も励みになりました。
ありがとうございます。
最後に、前出の片山令子さんの詩を一編紹介させてください。
「本について」
本はやっぱりいいなと思います。いつでも開いてくれる扉があり、重みがあり、背中がまっすぐで、胸に抱えることが出来ます。
季節の扉が開く、背中がまっすぐで、胸に抱えることができる、手仕事の庭の宝物ができました。
ながく愛される本に育ちますように。
◎当日、特装本は「展示」となり、お手を触れて閲覧いただくことはできませんが、
中をご覧になりたい方は本間あずささん、和泉綾子さんにお声がけください。
お二人がページをめくりながらガイドをしてくださいます。
宇佐美智子 記
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『鎮守の杜の色暦』 特装本
折〈アコーディオン製本〉手仕事の庭の植物染め手織布 春/夏/秋/冬
円環〈リンクステッチ製本〉手仕事の庭に育つ12の植物にまつわる小さな文章と標本、染め糸
藍の生葉/いちじく/梅/オリーブ/月桂樹/コブナグサ/桜青葉
ジンジャーリリー/どんぐり/ハーブミックス/姫りんご/枇杷
折、円環の表紙、函の表紙布〈ハーブミックス染め〉
発行日 2023年10月28日
企画・編集・文・デザイン 宇佐美智子/galleryらふと
染織 和泉綾子/RIRI TEXTILE
装幀・製本 本間あずさ/空想製本屋
植物育成 大野八生・庭人のみなさん/ニッケ鎮守の杜
素材の学校(こどものワークショップ)
未来の作り手たちへ
未来の使い手たちへ
工藝作家が行う、こどもたちへのワークショップを今年も開きます。
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※画像はイメージです。
キッズ庭めぐりツアーは、日曜日のみ行います。
素材の学校の先生達と一緒に、手仕事の庭や、出展作家さんのテントをめぐり、素材のお話を聞いたり、作品を見せてもらったりします。
各先生からの素材のかけらのおみやげ付きです。
お申し込みは、コルトン広場、モニュメント周りの「素材の学校」テントへ!
風の光 アトリエ倭ワークショップ
毎年恒例のアトリエ倭、香田進さん、佳人さんの木工ワークショップ。
今年は、どんな素敵タイトルで、何を作るのでしょうか?
風の光
今年は小さな万華鏡を作るワークショップをします。
長く続いたコロナ渦を抜け、光を取り戻した世界を、そして秋の美しいお庭を楽しむ為のアイテムです。
2本の木で構成された万華鏡の中には、三角柱のミラーと透明のビー玉が入っています。
お好きな木を2樹種選んでボンドで組み立て、あとはひたすら好きな形にヤスリで削り、ラインなどもお好みで入れていただけます。
最後にオイルを塗って磨いて完成です。
基本の形は四角形のものと八角形のものからお選びいただけます。
是非ご自分で作った万華鏡で、美しい光の世界と、秋のお庭を楽しんでいただけたらと思います。
風の光 – 小さな万華鏡を作る
両日 10時~16時 随時
定員 両日各40名様
お子さんから大人の方まで、どなたもご参加いただけます。
参加費 \1,800
(最終受付15時15分・定員に達し次第終了)
今年は例年よりもじっくり型のワークショップ。
その分、定員もいつもよりは少なくなっています。
お手製の万華鏡。
しかも、木工作家のもとで作る一生ものの(ちよっとオオゲサかなあ)手と心の友になる道具つくりです。
アトリエ倭さんのインスタグラムにも情報書いていただいます。
→ click
平井岳さん・綾子さん(漆)
出展作家の方々からのメッセージも最後のひと組となりました。
このあとは、風人さんのデモンストレーション、ワークショップ、トークイベントなどのご紹介や、当日に向けてのご案内をしていきますね。
今回、あえて、皆さんから寄せられた長い文章を省略せずに、そのまま綴っていきました。
スマホの時代、短いセンテンスでキャッチ―に伝えていく方が広がりやすいと思ったのですが、あえて。
あえての理由は、出展作家の方々がこの機会に想いを心の中で確かにできればとの願いです。
その想いを、作家同士で読みあうことで、モチベーションを高めることはもちろんですが、もっと芯のところでこれからの制作に大切なものが育めたらと願って。
そして、その結果、当日の展示内容がよりよくなれば、来場者の方々にも一層喜んでいただけるのではないかと思ったのです。
実際のところ、出展作家、そして、過去出展の方々の反応が大きいように思います。
ちょっとディープでもありますから、一般の方にはちょっとすべて読み込むのはヘビーだったかもしれません。
けれど、あらかじめ、ここを読んでいただけたら、当日は何倍も楽しんで、充実した時間、交流を体験いただけるように思います。
きっと!
では、トリの平井岳さんと綾子さんからのメッセージをご紹介しましょう。
Q1
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
磐梯山と猪苗代湖に囲まれた福島県猪苗代町で夫婦2人で、自ら採取した漆を使用して器を制作しています。
今回はこれからの寒い季節にぴったりな、木と漆の風合いを生かした溜塗りのお椀や蒔地のカップなど日常使いの器を出品します。
『溜塗り(ためぬり)』とは顔料の入っていない漆を木地に塗り重ねる仕上げで、木目が透けて見えるのが特徴です。
『蒔地(まきじ)』とは漆を塗った上から地の粉という珪藻土の粉を蒔いている仕上げで、さらっとしたマットな質感が特徴です。
この2つの仕上げの器をメインにしています。
どちらも“食卓に馴染む漆器“を目指して、形と色艶にこだわって制作しています。
そのために重要なのが材料選びです。
主に漆と相性が良く軽くて柔らかな栃と適度な重厚感とハッキリした木目が特徴の欅を使い分けています。
そして仕上げには自ら漆掻きをして採取した漆を使用しています。
採り方や時期によって少しづつ色艶が変わるので、それぞれの特徴を見極めながら仕上げによって最適な漆を使い分けています。
そして今回はじめてお披露目する新作の器もあります。
中でもご紹介したいのが高脚椀。
名前の通り高台が高くスラリとしたイメージなので洋風のスープなどもぴったりです。
私はこれにオニオンスープとチーズを乗せて焼いたバケットを乗せ、グラタン風にして食べるのにはまっています。
冬の食卓をよりおいしく温かくしてくれる器たちを沢山持っていきますので、ぜひ木と漆の風合いと手にした時の心地よさを感じにいらしてください。
Q2
平井さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
仕上げ塗りに使う漆刷毛
漆刷毛は人の髪の毛で作られているのでとても高価な道具。
修行に入った直後の自分には欲しくてもなかなか手の届くものではなかったのですが、ある程度仕事ができるようになった頃に親方が買い与てくれた物で独立した今でも大切に使い続けています。
漆刷毛は使う人によって毛の長さや毛先の形が違い、自分の塗り方にあわせて調整するのがとても重要になってきます。
「いい仕事をするには良質な道具を使う」ということをこの刷毛からたくさん学びました。
今回出品する溜塗りの器のほとんどはこの刷毛で仕上げ塗りを施しています。(岳)
Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。
A3
村木雄児さんの三島飯碗と尾形アツシさんのヒビ粉めし碗です。
2点になってしまっていますが、実はこれが私たち夫婦の唯一の結婚記念の品なのです。
指輪や式はもちろん写真も撮っていないので本当にこれだけです。
入籍の前後に地元の器屋さんで飯碗を選んでご飯を食べるという会に行った時にそれぞれ選びました。
記念に買いに行こう、と考えていたわけでもなく選んだ後に『そうか、タイミング的にも物としてもこれがぴったりかもな』という具合です。
揃いじゃないという所も自分達らしいような感じがして気に入っています。
なんだか無計画でだらしないような気もしますが、自分の事となると畏まった事が苦手なのです。
丈夫で使いやすく使うほどに愛着が湧いてくるまさに質実剛健といった姿に、作りたい物も定まっておらず、とにかく模索する日々だった当時の私たちに指針となるような形を示してもらったような気がしています。
余談ですが、これを求めたお店の店主さんとはその時からお付き合いがあり、昨年結婚40年の記念として私たちの汁椀を選んで頂きました。
作り続けているとこんな思いがけない嬉しい事があるのか!と時間が経ってさらに思い出深い器になっています。(綾子)
平井夫妻との出会いは、2020年の冬の名残りの浅い春。
この年の「工房からの風」への出展が決まっていたのでした。
早々に個人ミーティングをお申し出くださって、
「これはすごい人たちが出てきた!」
と思い、秋の出展が楽しみになったのでした。
けれど、この年。
通常開催は中止となって、「工房からのそよ風」として、近隣在住の作家だけで小さく行ったために、平井さんの出展はなくなってしまったのでした。
これから世に出ていこうとしていた新進の作家には、ほんとうに大変な3年間でした。
その中にあっても、先に出会いの機会をいただいておりましたから、他の場での展示に何度か声をかけさせていただき、その中で益々力を蓄えていかれたのでした。
ようやく。
3年ののちに、出展が叶ったと喜んでくださったおふたり。
3年前よりもぐんと作品の量も質も高められての出展です。
今回、出展作家の方々から任意で映像を提供いただき、こちらで映像作家の方に依頼して編集いただいたものを制作しました。
先に公開したインスタ版に加え、少し長尺のyoutube版も本日公開いたしました。
また、特に優れた映像を提供くださった平井夫妻のものは、これだけで1本に編集制作させていただきました。
漆の植林、漆掻き、塗り・・・(&猫)で構成された3分32秒版もぜひご覧ください。
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平井岳さん・綾子さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、花壇よりのgalleryらふと脇。
ホームページはこちらです。
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平戸香菜さん(鋳金)
Q1
富山県砺波市で金属を素材とした制作をする平戸香菜さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
生命のうつろいをテーマに作品を制作しています。
自分で金属を溶かして作品をつくることが、なにより楽しいです。
Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
溶けた金属が入った坩堝を掴む道具です。
鋳金の道具は市販されているものが少なく、あるものを加工したり作り直したりして使うことがほとんどです。
大切な大先輩から譲り受けたとても重要な道具です。
Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。
A3
野村瑞穂さんの抹茶茶碗
なんでもない形ですが、柔らかな釉薬の色がとても心地良い作品です。
野村さんの作品は白い釉薬が多いのですが、これは珍しく桜色です。
当たり前のことを丁寧に行う大切さを思い出させてくれます。
金属を鋳込む鋳造。
今回も金属を素材として制作する作家が7名ほどいらっしゃいますが、大掛かりな鋳造をされるのは平戸香奈さん。
金属材料を高温で溶解させ、独自に作った鋳型(いがた)に流し込んで冷やし固めることで制作する技法です。
小さなものは装身具から、花瓶からインテリアのものまで。
金属の幅広い作品世界に触れていただく機会になるように思います。
平戸香菜さんの出展場所は、galleryらふとと花壇の間。
秋のお庭にオヴジェも映えるように展示してほしいと思っています。
余談ですけれど、平戸さんはもともとは茨城県のご出身。
展示場所の隣、galleryらふとでは、茨城県在住の竹細工の勢司恵美さんが竹割りをしています。
茨城ののどかで楽しい言葉が行き交うエリアになるかもしれません。
平戸香菜さんのホームページはこちらです。
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そして、平戸さんの登場する映像はこちらです。
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小泉すなおさん(陶芸)
Q1
二回目の出展となる小泉すなおさん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
千葉県柏市にて工房を構えて作陶しています。
食器や花器を、半磁土と陶土を作品によって使い分けて作っています。
砂糖菓子のような滑らかな質感、河原で拾う石のような質感など、どれも手に取った時の質感を大切にしています。
食の器はマットな釉を掛けたものが中心ですが
花器やオブジェなどは、土を重ねて表面に装飾を施し
た作品もあります。
陶芸は窯で焼く事で完成するので、最後の最後を見届けられません。
毎回がテストのつもりで、ドキドキの窯出しを行い
自分の中の正解は数を重ねなくては得られない、を痛感しています。
初めて出展させて頂いてから6年になりますが、
小さな窯を新しく手に入れ、沢山の釉薬の試作を行い
色の世界が広がりました。
釉薬の掛け合わせや、滲みで生まれる柔らかな景色。
移りゆく空や広がる波のように、ぼんやりとした優しい景色を
器に写せたらと思っています。
Q2
小泉すなおさんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
A2
工房を構えた時に入れたガス窯と、新しく加わった電気窯。
道具というより相棒で、どちらもクセがあります。
開ける時にこんなに高揚感のある扉はありません。
自分のやっている事は、広い陶芸の世界では
本当に狭い範囲の試作の繰り返しに過ぎないのですが、失敗も多い中、少しでも「ああこれは!」と思うものが出てきた時は、この窯の前で小躍りしてしまうのです。
前回から6年!
その間、風人(かぜびと)さんとしても活躍いただきました。
すなおさんのご自身の創作は、この間、ぐんぐん展開を進められて、作品構成がかなり変わったように思います。
釉薬の変化による色のグラデーションなど、きっと今現在の渾身の展開を見せてくださることでしょう。
小泉すなおさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、入って中央右側。
梅とアーモンドの木の間です。
小泉すなおさんのインスタグラムはこちらです。
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