director's voice

水村真由子さん/木工

動画公開しました。
click

Q1
奈良で木の匙やへらなど手元で働く道具を制作される水村真由子さん。
水村さんも2019年、コロナ禍前の出展でしたね。
二回めの「工房からの風」には、どのような出品をされますか?

A1
食にまつわる木の道具を出品します。
食事に使う匙やフォーク、調理に使うへらやしゃくし、調味料を掬ったり塗ったりするのに使う小匙やへらなど、さまざまな道具があります。
よく研いだ小刀や鉋を使って一本ずつ手削りしたあと、それぞれの用途に合う仕上げ方法でこしらえています。

常にブラッシュアップをしながら作り続けている定番の道具はもちろん、今展のためにあたらしいものにもチャレンジしました。
働きものからちょっと愉快なものまで全ラインナップをブースいっぱいに並べ、みなさまをお迎えしたいと思います。
お見立てに合う道具との出会いがありましたら嬉しいです。


<めいめい匙>
即興でさまざまな漆絵を施しためいめい匙は、定番のれんげを作る際に出るこぶし大の端材を利用することを目的として作り始めた創作匙です。2年前から少しずつ作り続け、今季ようやく100本目に到達しました。すべて一点もので、それぞれテーマや絵柄が違います。使う人がめいめい好きに使っていただきたい匙です。


<スッカラ匙>
漆でリズムのような模様を描いたスッカラ匙は、韓国のスッカラという金属製の匙の使いよさに惹かれて、自分なりにアウトプットしたものです。21㎝となかなか長い匙ですが、混ぜたり口に運ぶのが軽やかで、使う所作も美しく見えるように感じています。


<ピクルス匙>
オリーブやらっきょうのような漬け汁に浸かった保存食を、容器から掬い出す時に便利なピクルス匙は、匙面の真ん中に穴をあけて、掬った時に漬け汁が穴から容器に滑り落ちるようになっています。


<熊のおもちゃ>
素朴な熊のおもちゃも作りました。掌にすっぽり隠れるぐらいのちいさなもので、足の部分を指でつまみ、軽く前後に振ると両手がふるふると動きます。これも先にご紹介しためいめい匙と同じれんげの端材を主に利用して作っています。食にまつわらないものをお出しすることが今回初めてなので、手に取られた方が一体どんな反応をされるのか、今からドキドキしています。

Q2 -2
大切にしている工藝品(古いものでも、新しいものでも結構です)をひとつ教えてください。

A2
工藝品と呼んでいいのかちょっと分からないものですが、陶製のキャニスターです。
これはアメリカ製で蓋に1892年と刻印があり、おそらくその年に作られたものなのかなと思います。
型抜きで成形されており、蓋に密閉用のパッキンはついておらず、現状実用的ではないように思います。
しかし、掛け分けられた釉薬の風合いや、蓋と本体を留める金具の意匠など、その佇まいが工藝的に感じられて、なんとも魅力的なのです。
普段はアトリエの棚に飾って愛でていますが、展示会の折には自宅やアトリエで実際に使っている木べらや、匙の経年見本を差すツールスタンドとして活躍してくれています。
今展にも連れ出しますので、一緒にご覧いただければと思います。

誠実なチャレンジャー。
水村さんとやりとりさせていただいていると、ふと、こんな言葉が浮かびます。
意外と少ないんですよね。
誠実なひともいるし、チャレンジャーもいる。
でも、併せ持ったひとは。

今回、熊さんには度肝を抜かれました。
匙、カトラリーへの打ち込み方、半端ない方なのを知っていましたから。
きっちりいつものお仕事を尽くして、こんな手の込んだ楽しいことをやってのけるなんて。
さすがです。

水村真由子さんのブースは、ニッケ鎮守の杜に入ってレンガ道が終わったちょうどこの杜のおへそのようなところ。
インスタグラムはこちらです。
→ click