director's voice

これまで 吉田欣司さん(木工)

今展より6名の作家から寄稿いただきました。
「つくるひとの手−工房からの風景」

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これまで
吉田欣司

建築、インテリアの学校を卒業後、家具製作会社を経て、2016年に京都府亀岡市に、無垢の木を使ったテーブルや椅子、TVボード等のインテリアを中心としたオーダーメイド家具工房として独立しました。

独立当初から家具で余った端材でお皿やお盆を製作して、マルシェやイベントに出展するようになりました。
家具製作からこだわっていたのは、鉋や鑿など伝統的な手道具で仕上げることで、木を削る感触や仕上がった木の質感に魅了されていきました。
コツコツと同じ作業を繰り返すことが苦にならない性格だったこともあり、次第に家具より小物を製作する割合が増えていったことがきっかけでクラフトフェアに応募しようと思った矢先、コロナ禍となってしまい出展することができなくなりました。

2020年4月から3年間はとても有難い事に県立施設の木工指導員として間伐材を利用した木製遊具の製作や木工教室を開催する仕事を経験させていただきました。
コロナ禍の3年間は木工指導員をしながら、少ない時間を見つけては自身の作品を製作して、年に数回、百貨店で出展の機会をいただいていました。
先がどうなるのかわからない状況でしたが、木工作家としていつでも活動開始できるように、手道具や刃物の研ぎ方など木工の基本技術をもう一度見直し、新たに漆の作品を製作したり、この期間を利用してコツコツと作品の幅を広げていきました。

日々意識していることは学生時代に建築家の先生から教えてもらった【手で思考する】という言葉です。
もちろん建築と木工とではその解釈もスケールも違いますが、特に木工は手を動かして作りながら形を考えることがやりやすい分野なのかと思います。
また、たくさんの数を作ることも意識しています。
繰り返したくさん作ることで技術も上がり、その中で新たな発見があるからです。

2023年3月末に木工指導員を退職して、クラフトフェアや百貨店に出展し、本格的に活動を開始することができました。
やはり作品を発表する場があることは本当に嬉しく、2024年2月にはご縁をいただき大阪のギャラリーにて自身初の個展を開催させていただくことになりました。
コロナ禍でずっと思い描いていた木工作家としてやっと歩み出せた気がします。

同年に工房からの風に出展させていただくことが決まり、これまで積み上げてきた物をたくさんの方々にご覧いただける機会ですのでしっかりと準備して当日を迎えたいと思います。