director's voice

谷口亜希子さん(染織)より

コルトン広場、スペイン階段前に鮮やかで爽やかな色彩の布がはためていていました。
谷口亜希子さん。
いただいたメールの一部をご許可をいただき、転載させていただきます。

急に冷え込むようになってきました。
想いが溢れてなかなかまとまらず、お礼が遅くなってしまいました。
みなさまお疲れは残っておりませんでしょうか。
準備から、当日、そして後片付けまで、本当にお世話になりました。ありがとうございました。

まだ、うまくお伝えする自信がないのですが、自分の中では天変地異級の大きな変化が起こったので、少しお話ししてもいいでしょうか。
お恥ずかしいことに、私は自分の作るものを作品と呼ぶことができませんでした。ずっとです。
依頼されて染める仕事をがんばりすぎて、いろいろ迷子になっていたのかもしれません。

・・・

織りでも、染めでも、どんなに手間をかけたものでも、どうしてもダメでした。
でも、帰宅して、荷物を運んでいる時に、ふっと
「作品、出すね!」
と発語していました。(自分には衝撃でした)

何があったかと考えれば、稲垣さんに「自分の根っこを」というお言葉をいただいてから、私は半年間ずっと 「作品づくり」 に打ち込めていたんだと思います。
自分の根っこと向き合って、自分の心震える美しさを形を、なんとか形にしたいと思うだけでした。

これからも、こうやっていけばいいんだなと、強い道標をいただきました。
また、造詣の深いお客様ばかりで、私のストールを宝物でも扱う様に触れてくださった手をたくさん見たこと、
「その手間や良し!」と喜んで、大笑いしてくださった方がたくさんいたこと、
運営の皆さんが、日当たり、雨の様子を察知しては、飛んできてくださって、作品にご配慮くださったことにも思い当たります。
大切に扱っていただいてとても嬉しかったです。

高い志を継続してこられた場所が与えてくれた力を、作品でしっかり恩返しできる様に、もっと頑張っていきたいと思っています。

迷ったら、またあのお庭にいけばきっと大丈夫。
心強く、楽しく、作っていきたいと思います。

谷口さんの布、美しかったですね。
単色でむらなく染め上げた布は、たとえば端正な白磁の器のように、一見手仕事ではないかのように見えるほど、手仕事を極めた賜物です。
もっとよりよくご紹介できたのではないかと今更思うのですが、これを機にその世界に深く触れたい、触れていただきたいと思います。

谷口亜希子さんの出展前のメッセージはこちらです。
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