『ニッケ鎮守の杜』に、柿の木があったらいいな、
と時どき思います。
柿渋染めのお仕事と出会うと、特にそのように。
今回ご紹介するのは、denさん。
柿渋染めを手掛ける方は増えましたけれど、
denさんはどのようなお仕事なのでしょうか?
Q
denさんは、『工房からの風』にどのような作品を出されますか?
A
柿渋、ベンガラを主にした自然素材で色づけした布作品を出品します。
包む、敷く、掛ける、巻く、木陰をつくり 風をうける一枚の布は、
大きい布から小布までひろげてたたんでいろいろなかたちに姿を変えていきます。
そのような布に木漏れ日の影を雲のながれをうつしとるような、
自然にまかせた色を重ねています。
古いものから醸し出される時間の重なりからくる美しさ、
そして同じだけの時間を重ねてもそれぞれの物語があり同じものはありません。
そんなものが好きです。
なんでもないもの、日よけにかけられた布、道具を入れておく袋と、それにあてられた繕いのあと。
そんなものを追いかけているのかもしれません。
ストールなど身にまとうもの、そして大きい物は敷いてかけて、
小布や染め糸も捨てるものなく継いで重ねて作品にしています。
柿渋染めのものは自然においても色を変えていきます。
その様子を育て楽しんでいただければと思っています。
denさんは、もともと写真の仕事をされていた方。
どこか錆びた、時間の経過にストーリーを感じさせる雰囲気のある写真を撮られます。
染める布にも、そのような風合いが感じられて、世界観が一貫しているのですね。
素材であることも含めて、denさんならではの柿渋染めの雰囲気をぜひ、
味わっていただけたらと思います。
そして、男性の方にも、特に見ていただければと思います。
何かものづくりされている方など、触発されるもの、あるのではないでしょうか?
Q
denさんにとって、『工房からの風』はどんな「風」ですか?
A
はじめは何かを変えてくれる、どこかへ運んでくれる風に出会えると思っていました。
今、どんな「風」かと思うと、自分に真ん中へと「引き戻していく風」かもしれません。
大きな企画展示に参加するのは初めてのこと。
「作品」としてのかたちも明確でないまま、
10月の「ゴール」にむかって走り出したような気持ちでした。
焦る気持ちのなか、打ち合わせや、ほかの作家さんとの交流で
自分のことをはなすことときには、染めをはじめたこと、そのまえの仕事のこと、
家族のこと、いったところみたところ、ずっと好きだったこと、
変わっていたことと変わらないことと考え、いつか真ん中にむかう風になっていました。
今は 本番当日の「スタート」にむかう気持ちです。
良い出会いがありますよう、自分の真ん中で会えますよう10月を迎えたいと思います。
私も最近気づいたことなのですけれど、『工房からの風』での出会いって、
自分自身との出会いが一番大きくて、大切なものなのでは。。。
そんな風に思うようになりました。
始まる前に、すでにそれに気づかれたんですね、denさん!
Q
denさんは、小学生のころ、大人になったら何になりたかったでのでしょうか?
A
いまだ家族の中では伝説のネタになった、小学校の卒業新聞「将来の夢」への一文。
「大好きなひとのかわいいお嫁さん」!!
洋裁や編み物をする母、革物や写真、パソコンをはじめ多趣味でいつも新しいことの好きな父。
転勤で引っ越しが多かったにもかかわらず、時間があれば窯元や木工芸店をのぞいたり、
そんな両親を見ていたので、何かになりたいということが思いつかなかったかもしれません。
つくるくらし。
それはだれと時間を時間を過ごしていくかということでしょうか。
小学生の時、キッチンを遮光してつくった暗室で父と過ごした時間が写真にむかったはじまりです。高校の時 写真館で遺影作る仕事に出会いました。
故人の写真を複写してエアブラシで背景をつくります。
モノクロの世界の中にその方がいちばん幸せな時間をつくる仕事だと思いました。
布を染めていると「なにに使うのですか」といわれていつも困るのですが、
つかう方、包むまれるモノが主役であるような背景がつくりたいと
今も思っているのかもしれません。
そしてこれからそのような場をふたりで作っていきたいと思っています。
denさんは、ご夫婦で揃っているとき、ほんわかと、ほんとうにお幸せそうなんです。
小学生の時の夢、見事に叶えられましたね!
「私の撮った写真をとても好きだと言ってくれたのが、このひと」
とお話を伺ったことがあります。(ゴチソウサマです)
その写真と、柿渋染めの布が同じ思いを伝えていること。
今回のメッセージでとてもよく伝わりました。
さて、denさんのホームページは、こちら → ☆ です。
出展場所は、スペイン階段前。
本八幡方面からいらした方が最初に出会うブースです。
布でしつらえた味わいのある空間で、迎えてくださることでしょう。
そうそう、お隣は、陶器の市岡泰さんです。