director's voice

nikadori(編組)

Q1
沖縄県うるま市から出展くださるniakdoriの荷川取大祐さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
私は「沖縄に在るもの」を根幹としたものづくりをしています。
その枝葉として、今回は沖縄の植物を用いた「草編み細工」と「漆喰花器」を出品いたします。

「草編み細工」
草編み細工は、「民具」と分類されることが多いです。
質朴な印象を与え、自然に寄り添いながら日々の暮らしのなかでつくり出された民具。
民具は、先人の知恵そのものです。
だからこそ、民具が過去の産物として博物館や資料館に展示されているのは、もったいない気がします。
私は、自身が生活を営んでいる沖縄の植物で、現代の生活に使える「現代の民具」をつくりたいです。


月桃籠


ビーグ籠

「漆喰花器」
漆喰(むち)でつくった花器。
ドライフラワーの一輪挿しです。
白色は、琉球石灰岩
灰色は、軽石
赤色は、首里城破損瓦 を粉砕して作った絵の具を用いています。

それぞれの色には、それぞれの出来事に基づいた、それぞれの記憶、それぞれの想いがあります。
沖縄の記憶(過去)を色に載せて、想いをこれから(未来)につなげます。

Q2
荷川取さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
少し卑怯な答えになるかもしれませんが、自分自身の「手」です。
長年大事に使っている自作の道具などを思いつきもしました。
ただそれは、言葉を選ばずに言ってしまえば、替えが利きます。
使っている年月も手には遠く及びません。
やはり、「手」です。

「試行錯誤」、つまり思考と試行の行き交いを重ねること。
私が大事にしていることです。
試行錯誤を重ねると、手はやがて思考から解き放たれます。
私は、それを「感覚」と呼んでいます。

草編み細工においては、縄綯いの撚りや編み込んだときのテンションの確認など。
漆喰花器においては、漆喰と砂を調合したときの粘度の確認や形成など。
私は、多くの工程において手の感覚を頼り、またその感覚を信じています。
つまり、自分自身の手を「信頼している」ということです。
これからも、この手で大好きなものづくりを続けていきたいです。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
沖縄県読谷村の「やちむんの里」にある横田屋窯(ゆくたやがま)の器です。
釉薬の独特な風合いもさることながら、縁(ふち)の青色と蛇の目の環(わ)のバランスが絶妙で、とても気に入っています。
環の効果が手伝ってか、きれいに盛り付けたいという気持ちが働きます。
また、容量や深さにおいて汎用性があり使い勝手が良く、ほぼ毎日使っています。

・「素材」を感じることができるもの
・「手」を感じることができるもの
・日常的に使えるもの
・心に彩りと余白を与えてくれるもの

私は、そういうものを使いたい。
そういうものをつくりたい。
この器は、改めてそう思わせてくれます。

荷川取大祐さんからのメッセージ、とても骨太です。
手を動かしながら、考えを巡らして来られた中での言葉。
たしかな重みがありますね。

先日、沖縄から現地であるコルトンプラザを訪ねてくださいました。
荷川取さんのテントが建つ予定の場所を味わうように感じながら、「手仕事の庭」もゆっくり見てくださって。
ジンジャーリリーを見つけて、月桃に似ているなぁとか(確かに、似ています!)
トロロ葵(紙漉きのネリに使います)が咲いていますねーとかとか・・・。
工藝にまつわる植物をよくご存じで、ほんとうに手仕事がお好きなのだなぁと感じ入りました。

「工房からの風」の機会がなければ、荷川取さんとの出会いも難しかったかもしれません。
遠い地で、工藝や手仕事にまつわる物事を同時代に感じ、考える方とで出会えること、そして、多くの方に出会っていただけること。
とても幸せに思います。

nikadori 荷川取大祐(にかどりだいすけ)さんの出展場所はニッケ鎮守の杜。
おりひめ神社の鳥居に向かって右側あたりです。

ホームページはこちらです。
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そして、荷川取さんも映像版に登場くださっていますので、こちらもご覧くださいませ。
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