2015年10月の記事一覧

「出展作家紹介/工房からの風」New

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佐藤亜紀さん(染織)

Q
京都で染織を行う佐藤亜紀さん。
二回目の「工房からの風」では、どのような作品を出品くださいますか?

A
糸を草木で染めた手織りのストールを出品します。
絹糸で織り上げた、さらりとした素材感のものや、
絹糸を中心に、綿糸をところどころ織りこんだふっくら感があるものがあります。
それから、絹糸とウールで織ったあったかもののマフラーもそろえています。

季節のうつろいとともに感じる光や空気感、
日常の中で目に耳にする断片からイメージをふくらませて、制作しています。

素材や色のここちよさを感じてもらえたらうれしいです。

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Q
佐藤さんにとって、「工房からの風」はどんな風でしょうか?

A
初めての出展の時は、染織を学んでた頃からのあこがれの風に吹かれることに、
かちんこちんに緊張しておもいっきり背伸びしようとしてました。。。

それからも、ゆるゆると私の背中をおしてくれる風。
知らぬ間にかかえこんでいた不要なものを少しずつそぎ落として、
やっと見えてきた自分自身。
自分が自分でいることの大切さが府に落ちました。
懐の深さでつつんでくれる、やさしさにあふれた風だと思います。

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Q
佐藤さんの初めての「ものづくり」は、なんでしょう?
印象的なもの教えてください。

A
実家が商店をしていたので、家に段ボールがとにかくたくさんありました。
なので、段ボールを重ねたり、くりぬいたりして、あそび道具をよく作っていました。

でも家の中でじっとしていられず、
草むらや田んぼの畦道をかけまわるような野趣あふれた子供でした。
野山であそびながらも、物語や空想の世界のことが頭の片隅にいつもありました。
子どもの頃から、手先は不器用で大ざっぱ、
機織り仕事を選ぶとは意外とも言えますが、空想力は活かされてるように思います。

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初めての出展の時、ミーティングの時から、ほんとうに緊張されていた亜紀さん。
けれど、当日はなんとも穏やかで晴れやかな表情で、
お客様と布を介して交流していましたね。
とても素敵な画像がいくつも残っています。

その後も、galleryらふとや三越展などで作品発表を続けてくださって。
織りあげる布もぐんぐん自在になってこられました。

絹を中心に草木染をする亜紀さん。
日本的な情緒だけではなく、どこかエキゾチックな大胆さもその色遣い、
柄出しにうかがえます。

今回は、うんと華やかものから、シックなものまで、幅広く布が織りあげられたようですね。
そのどれもが、亜紀さんならではの光を宿した布となって、
今年の来場者の方々に手渡されていくことでしょう。

佐藤亜紀さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜
レンガ道をおりて、テニスコート側の花壇のほとりです。

HPはこちらになります。
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morinosuさん(金属)

Q
東京西部で金属装身具を制作するmorinosuさん。
「工房からの風」にはどのような作品を出品くださいますか?

A
これまでは真鍮を腐蝕させて凹凸のあるデザインをほどこした後に
着彩し樹脂を塗布したものを主としていたのですが、
今回は、樹脂を塗布しない、真鍮の生地を活かしたものを主に出品いたします。
手に持った時の感触も楽しんでいただけたらと思います。

猫(ブローチ)

Q
morinosuさんにとって、「工房からの風」はどんな風でしょうか?

A
洗濯機のような風です。
グルングルンと悩み迷うけれど、
次第に余分なものが落ちてきて、まっさらにしてくれる風。

鳥(ブローチ&ペンダント)

Q
morinosuさんの初めての「ものづくり」は、なんでしょう?
印象的なもの教えてくださいますか?

A
初めてのものづくりは、おそらく土団子あたりかと思います。
土いじりが好きで、よく爪に土が入っていました。

土いじりの延長でか粘土も好きで、紙粘土で動物の顔をつくり、
手が隠れるくらいの大きさの布を顔の下に差し込んだだけの
シンプルな指人形をつくった記憶があります。

何の動物をつくったかは覚えていないのですが、取り付けた布が
チェック柄だったのをよく覚えています。

猫(ブローチ&ペンダント)

morinosuさんの2番のメッセージ。
実感がこもっていて、うまいっ!と思わずうなりました。
洗濯機、グルングルン・・・。
この数か月、まさにそんな感じのmorinosuさんでしたから。
(ご本人は、えっーそんなー!という感じかもですが)

もともと銅版画作家で、そこから発展しての装身具作りへの展開。
応募時には、すべての作品に樹脂が施されてありました。

それはそれできれいなのですが、金属のままの表情もよいのではないだろうか?
そう思ったのは私だけではなくて、風人さんや他の出展作家の方々からも、
いろいろな感想が寄せられたのでした。

まっすぐで原石のようなmorinosuさん。
そして、そのお人柄が、多くの方々の感想を呼び寄せたのだと思います。

とはいえ、新たな展開へ繰り出すのは、とても大変だったことと思います。
しかも、短期間で。
でも、もともと持っていたもの、そこに耳を澄ませてのお仕事ですから、
大変ながらも、充実されていたことと思います。

当日、銅版画展を見るような展示かもしれませんね。
展示の壁は、来場者の皆様の服や帽子となって。

morinosuさんの展示は、ニッケ鎮守の杜に入って、レンガ道をおりて左手。
小振りなテントに、物語がぎゅっと詰まっていることでしょう。

HPはこちらになります。
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服部謙二郎さん(染織)

Q
東京西部で布づくりを進める服部謙二郎さん。
「工房からの風」にはどのような作品を出品くださいますか?

A
自然染料で染めたシルクのストールと、
シルクとウールを織り交ぜたストールを出品いたします。

今回この3つの質問に対して、じっくりと考えながら制作を進めるなかで、
思い浮かんでくるのは、「古代」という言葉でした。
それは私の布づくりにおける一つのテーマのようなものです。
そんな思いもお伝えできればと思っております。

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Q
服部さんにとって「工房からの風」は、どんな風でしょうか?

A
スーっと軽やかで、ポンっと弾けるような推進力もある、透明な風。
何か自分の中が少しクリアになった、そんな感じがしています。

もっと自由でいい、風に吹かれてあっちへ行ったり、こっちへ行ったり、
テキスタイルの世界をもっともっと旅してもいい。
そんなことも思える、自由な風です。

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Q
服部さんの初めての「ものづくり」は、なんでしょう?
印象的なもの教えてくださいますか?

A
図工の時間に描いた、雲崗石窟の巨大な石仏の鉛筆デッサンです。
ものづくりとは少しずれるかもしれませんが、とても印象深いのです。

石仏の表情やその雰囲気に、不思議な魅力を感じていたように思います。
渋いモチーフを選んだなぁと思いますが、子どもの頃から遺跡が好きで、
初めて海外を一人旅した時も、旅先はカンボジアのアンコール・ワットでした。
フランスの探検家アンリ・ムオが、密林を彷徨い見つけた幻想的な遺跡、
この発見をモチーフにした漫画を、小学校の図書室で読んだのがきっかけでした。

子どもの頃の興味関心が、その後のアジアや南米での仕事や旅行に、
そして今に繋がっているような気がしています。

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服部謙二郎さんも、この半年強の間でぐんぐん変化、
脱皮?した作家のおひとりではないでしょうか。

6月のgalleryらふとでの「風の予感」展の時の布から、
8月の日本橋三越での「工房からの風から」展を通して、
たくさんのお客様、作家、私たちと交わしたやりとりから、
ぐんぐん服部さんのあんぱんの餡の部分に入り込んでいかれたような気がします。
(あんぱんって、なに??という方はこちらをどうぞ
→ click

物静かで熟考型のようにお見受けしましたが、
今回の作品画像を見て、服部さんの引き出し、いよいよ開け始めた!んですね。
とうれしくなりました。

そう、服部さんとお話ししていると、引き出しいっぱいあるのに、
まだまだ開けていないのでは!
そんなことを思って、ちょっとお伝えしたのでした。

織り布は、思い付きで進む仕事ではなく、
意図の調達、染めのこと、整経、、、、と、最終のイメージを前に
しっかり整えておかねばならないことがたくさん。
その中で、新たな取り組みをすることは、
他のジャンル以上に手がこんでしまうところもあります。

2年ほど、ペルーの美術館でボランティアスタッフとして活動していた服部さん。
もともと手にしていた美の種に、あらたな養分が加わって、
発芽するときを待っていたのかもしれませんね。

「工房からの風」で芽吹いたものがすべてではないでしょうが、
これからの制作にも、その引き出しを惜しみなく開けてほしいと思っています。

シルクとウールの上品ながら野性味のある巻き布。
かっこいいです。
今回の画像の布たち、服部さんそのものの雰囲気ですねー。
ぜひ、作品と作者、一緒に見てみてくださいね(笑)

服部さんの出展場所は、おりひめ神社奥。
菅原博之さん藤武秀幸さんの「男の仕事場」の隣です。
ペルー滞在時のあれこれの品も展示くださると思いますので
それらも、ぜひお尋ねになってみてください。

服部謙二郎さんのHPはこちらです。
→ click

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林志保さん(陶磁)

Q
岐阜県多治見市で作陶される林志保さん。
「工房からの風」にはどのような作品を出品くださいますか?

A
暮らしの器と、生活に添える小さなオブジェを出品します。
食卓や窓辺などの空間を演出し、使う人の心が少し豊かになればいいなと思います。

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Q
林さんとって、「工房からの風」は、どんな風でしょうか?

A
換気したような、新鮮で緊張感ある空気を感じています。

この出展を機に、自身のものづくりを立ち止まって見直すことができました。
納得のできるものづくりのために、日々コツコツと続けるのみです。

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Q
林さんの初めての「ものづくり」は、なんでしょう?
印象的なもの教えてくださいますか?

A
細々したものを作るのが好きでした。
「初めての」というと記憶力低下で思い出せないのですが、
記憶に残るのは、父への誕生日プレゼントに、
愛車の置物を針金や色紙で作ったことでしょうか。
今でも大切に保管してくれているので、よく覚えています。

林2

林さんの作品は、そのフォルムと質感の美しさが印象的です。
オヴジェと器に同じような美の鉱脈が渡っているようで。
器ひとつの佇まいで、ぐっと空間が演出されてくような佇まい。

きっと素敵な作品構成になることと夢見て、
おりひめ神社の奥の空間をご提案しています。
お手元で、そして、少し離れて。
林志保さんの作品世界、ゆっくりとご覧いただきたいと思います。

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千(sen)さん (金属)

Q
千(sen)という工房名で活動する西本卓也さん。
「工房からの風」にはどのような作品を出品くださいますか?

A
生活に関わる暮らしの道具を中心に、
照明やタオルハンガーなど住まいに関するもの、
一輪挿しや花器、
その他オブジェや装飾品など、
金属で表現出来る様々なものを出品させていただく予定です。

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Q
千さんにとって、「工房からの風」は、どんな風でしょうか?

A
我々は普段、建築家、設計士、デザイナーと共に、
店舗やギャラリー、住宅に関する、空間に静かに佇む金物を目指して制作をしております。

それ以外の我々の制作した作品は、
基本的に店舗に卸すというイメージで制作していました。
個展などでしか表にはほぼ出ておりません。

ただ、昨年からご縁があり、
百貨店やクラフトフェアにて直接お客様と接する機会を持つ様になり、
いままで裏方というイメージで活動していたので、
その機会があまりにも新鮮で、
それが凄く楽しく、そして良い出会いが沢山ありました。

今回の「工房からの風」への出展も、
新しい出会いやお客様との会話、
共感いただける物作りをしている方々との新しい流れを作り出せればと思っています。

千sen1・

Q
千さんの初めての「ものづくり」は、なんでしょう?
印象的なもの教えてくださいますか?

A
簡単に答えてしまうと、絵画コンクールで県の知事賞を頂いた事でしょうか。

ただしっかりと考えると、ものづくりという考えの範疇外なのかもしれませんが、
料理は大好きで小さい頃から母親と作っていました。

焼ける音、香り、食材が手を加えてどんどん変化していく過程が凄く好きでした。
おそらく小さい頃からものづくりというより、ものの変化が好きなのかもしれません。

千sen2

今年の「工房からの風」は、金属の作家が特に充実しています。
増田さんが実用的というよりはアートな作品であったり、
千さんは暮らしを支える裏方的実用的な作品であったり。

津軽塗の三上さんのところでは、
唐塗や七々子塗のことに触れましたが、
千さんのHPでは、ざらめきらり、黒仕上げ、など、
金工ならではの用語も書かれています。

「工房からの風」の来場者の方々や、
このブログを読んでくださる方には、
工芸の用語に興味関心のある方が多いかと思います。

これらの用語は、とっても美しいですね。
大好きな日本語です。

これらの美しい日本語を、外国語でどのように言うのでしょう。
きっと、西本さんならいくつかご存知でしょうね。
何しろ、ご夫婦で世界一周を時間をかけてしてこられたそうなのです。
応募用紙にも、そのことが書かれてありました。
世界をじっくり旅することと制作をしっかり進めること。
西本さんにとっては、同じことなのだと思います。
生きることを拓きながら、すべての経験を享受すること。

そんな西本さんの作るもの。
すっきりシンプルであっても、奥行きがしっかりあるように感じます。
飽きの来ないデザイン、そして手仕事。
会場で、ぜひご覧くださいね。
そして、旅の話も・・・。

千さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、galleryらふとの向かい。
木立の中のテントです。

HPはこちらになります。
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増田周一さん(金属)

Q
仙台で金属造形の制作を進める増田周一さん、
「工房からの風」にはどのような作品を出品くださいますか?

A
銀や真鍮などの金属を使った装身具と雑貨とオブジェ。
一つ一つに物語性を持ったものが多く、
その物語の中に入って楽しんでもらえるような作品を持っていきます。

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Q
増田さんにとって、「工房からの風」は、どんな風でしょうか?


まだ始まっていないのでわからないのですが
僕の工房は今、子供の頃に感じた台風の直前の窓がガタガタ鳴っていて、ワクワクする感じ。

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Q
増田さんの初めての「ものづくり」は、どんなものでしょうか?
印象的なもの教えてください。


小学校の時に友達と造った秘密基地かな。
細い笹の枝で作った弓矢や仕掛け罠とかアケビの蔓で編んだロープとか。。。
今思うととてもチープだったけど放課後のとても楽しい時間。

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増田さんは今年は当たり年のよう。
ミラノ国際芸術大賞を受賞されたり、
日光東照宮の四百年式年大祭奉賛に際しての美術奉納を行ったり、
ほかにも国内外で受賞が続いています。

当たり年、なんて書きましたけれど、今までの制作で蓄えた力が、
一気に花開きだしたのですね。

今も「工房からの風」に向かって、什器、造作を含めて、精力的な制作が佳境のようです。
えっ!これが指環!などなど、見る人の心をわくわくさせる作品がたっぷりとやってきますよ。

もりもりわくわくのブースは、コルトン広場スペイン階段前の大きなテントの一角。
大人もきっと、子どもの心に戻って魅入ってしまいそうですね。

増田周一さんのHPはこちらになります。
→ click

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三上優司さん(津軽塗)

Q
青森から出展くださる三上優司さん、
工房からの風にはどのような作品を出してくださいますか?

A
お箸とお弁当箱、酒器を中心に、装身具も少々。
津軽塗のオーソドックスな技法を用いつつ、色合いをより優しく変えて塗りました。

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Q
三上さんにとって、工房からの風は、どんな風でしょうか?

A
終わってみないとわかりませんが、今感じるのは、朝霧の山から里へ吹く静かな風。
自分の心と体を起こし目覚めさせてくれているようです。

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Q
三上さん初めての「ものづくり」は、なんでしょう?
印象的なものをぜひ教えてください。

A
小学校の夏休みの工作で、角材を削ってペーパーナイフを作りました。
自分なりに綺麗だと思う曲線になるまで削り込んで、
だいぶ細くなってしまった記憶があります。
「美しいもの」というものをはじめて探った時かもしれません。

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この薄紫色の箸は、イナガキが愛用中のもの。
三上さんが朴訥と津軽塗のことを語ってくださった中で、
自作の箸への深い自信と、自らの仕事への愛情を感じて、
ぜひ使ってみたいと求めたものです。

20年ほど前、
青森出身の敬愛するこぎん刺しの作家の方から贈られた
津軽塗の箸があまりによくて、今でも愛用しています。

その作家の方は亡くなられたのですが、
今も箸を使うたびにその方のことを思います。

あまりによくて、と書きましたが、何がよいかと問われれば、
持った瞬間の頃合い、使うときの頃合い、と言ったらよいでしょうか。

重さだけではない、塗りの感触や、目に映る深み。
重ねて重ねて塗られているので、先がちびらないことも。
そう、長年使うほどに、作った方の丁寧な仕事にしみじみ感謝してしまいます。

愛用中のものは赤に唐塗(からぬり)でしたので、
三上さんのはピンクがかった薄紫に七々子塗(ななこぬり)のものを。
あまり身の回りにない色なので、どうかしら?と最初は思いましたけれど、
かえってアクセントになって、食卓が華やぎました。

唐塗や七々子塗については、
こちらに詳しく書かれています。
→ click

馬鹿丁寧過ぎるほどの下地処理と、塗っては乾かして研ぐことをひたすら繰り返すことで生み出される製品の馬鹿丈夫さから、「津軽の馬鹿塗り」とも呼ばれることもあります。
まさに[じょっぱり(意地っぱり)]と呼ばれる津軽気質の職人たちが魂を塗りこめた津軽塗は、高尚にして飽きのこない、堅牢で優美な漆器として好評を博しております。

という記載もありますよ。
(青森県漆器協同組合連合会HPより)

初夏のある日、青森から三上さんがgalleryらふとを訪ねて来られました。
日帰りの夜行バスを使って。
工房からの風への出展が決まり、
この出展に向けて精一杯仕事に向かっていらっしゃることが
しみじみ伝わってくる時間をいただきました。

津軽塗の先人が自分に伝えてくれたこと、
それを自分がどのようにして、今の時代にかたちと成すのか。
そして、どう次代につなげていくのか。
ひとり黙々と工房にこもって作られる仕事でありながら、
ひとりではない、世代を超えたたくさんの人々と共にある意識の中で、
三上さんのお仕事があることが伝わってきました。

それは、大変そうなことでもありましたが、
と同時になんて幸せなことなんだろう、とも思いました。
確たる故郷を持たない根無し草の自分にはない時と人の連なり。
もちろん、それを幸せにしているのは、三上さんの心なのですけれど。

今、漆器では下塗りで仕上げる無地のものが多く作られています。
その中で、津軽塗らしい表情がどのようにあるべきなのか。
三上さんの問いかけは続きます。

その問いかけに答えが返ってくるためにも、
まずは作り手自身の心に適うものを作ることなのでしょう。
それを示して、使い手がどのように応じてくれるか。
工房からの風で何か手ごたえに触れられるでしょうか。

お箸は、サイズ、色柄、種々に作られたとのこと。
箸の値段と思うと決して安価ではありませんが、
長く長く使えるもの、その使い心地のよさ、使う頻度を思うと、
決して高価ではないと思います。
その制作工程を思っても。
ぜひ、三上さんのブースで手にしてみてくださいね。

三上さんのブースは、スペイン階段前の大きなテントの一角です。

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Honda Silk Works 本多祐二さん、さくらさん

Q
Honda Silk Worksさん、
工房からの風にはどのような作品を出品くださいますか?

A
絹のストールを出品致します。

今年の春繭からは太目の糸を挽き、撚りをかけずに織ったふっくらとしたストール、
草木の色や、糸の凹凸を活かした手触りの気持ち良いストールを中心に出品致します。

ハレの日も、日常のケの日も愛用して頂けるシンプルなストールを制作しております。
絹の持つ強さと温かさ、しなやかな肌触りを感じて頂けたら嬉しいです。

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Q
Honda Silk Worksさんにとって、
工房からの風は、どんな風でしょうか?

A
出展が決まってから、それはもう色々な風が吹きました(笑)
しかし、この移り気な風も私達を成長させてくれる大切な風だと感じています。
色々な風が吹いたからこそ、一度立ち止まり考える時間ができました。
当日が楽しみです!

小鮒草×藍 (800x600)

Q
Honda Silk Worksさんの初めての「ものづくり」は、なんでしょう?
印象的なもの教えてください。

A
この質問を受けて思い出し、自分でも驚いているのですが
初めての「ものづくり」として印象に残っている物は「織物」です。
子供用の小さい織り機で祖母と毛糸の敷物を作りました。
玄関で花瓶敷きとして使って嬉しかった気持ちが掘り起こされました!

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4月、第一回目の今年度出展作家全体ミーティングのとき、
Honda Silk Worksの祐二さん、さくらさんは「時の人」でした。
お蚕を飼うところからの布づくりだということに、
他の出展作家も興味津々になったのでした。

どの出展作家も手のかかる、地味な作業を取りこんだ制作をしている方ばかり。
それでも、さすがに養蚕から行っているとは!という驚き。
そして、それを淡々と普通のこととして話される姿、
おふたりが1980年代の初め生まれの若さだったこと、
ああ、こんな人たちもいるんだなぁーという
喜びのような共感が広がったのでした。

それから数回、市川まで遠く秩父の里から、
さくらさんが何度も訪ねてくださいました。
工房からの風に集った作家たちが蔵している何か
(それはテクニカルなことよりも、パッションのように感じましたが)
に触れよう、吸収しよう、という意欲だったのでしょうか。

染織の学校などからこの道に入ったのではなく、
養蚕農家の手伝いをしたことから進んだ布づくり。
だからこその野に咲く実生の草花のようなたくましさと、
オリジナリティーがふたりの布の魅力です。

とはいえ、布づくりの道は始まったばかり。
どういう糸を作るのか、どういう色に染めるのか、どういう布に織り上げるのか、
ゆく道は遠く遠く先に続いています。

一方、若い二人が養蚕をすることなど、特殊な要素があることなどから、
その部分を取り上げられての興味関心を持たれることも多いでしょう。
ライフスタイルとしてだけ取り上げられ、消費されてしまうことを、
本能的に遠ざけているような姿勢が、とても印象的でした。
ふたりが求めていること、目指していることは、もっと本質的なことなのだと思います。
そのための養分を、きっと今回の「工房からの風」から吸収しようとされているのですね。

出展が決まってから、ぐんぐん進化した布との出会いがとても楽しみです。

Honda Silk Worksさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜
galleryらふと奥の岩があるエリア。
若きふたりの作り手が手掛けだした地に足の着いた瑞々しい布に、
ぜひ触れてみてくださいね。

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にしむらあきこさん(和紙造形・絵本)

Q
にしむらあきこさんは、工房からの風にどのような作品を出品くださいますか?

A
今回は、「おとひろい」という新作絵本を中心にまとめた展示内容にしています。
言葉を持たない少年が、自分だけの小さな世界から一歩を踏み出し、大切な音を 探すお話です。

一年がかりで取り組んだこの絵本には、かなり熱い思いも込められておりますが、
それについてはらふとさんから発行される「風の音」に語り 尽くしており ますので、
ぜひ読んでいただけたらうれしいなあと思っています。

キーワードは「音」なので、音をイメージしたモビールやアクセサリー、
かたち のパネルなどで、楽しい展示にしたいです。

原画を使ったレターセットや葉書セットも豊富にご用意するつもりです。

「おとひろい」以外にも、絵本を沢山ご用意しています。
小さな椅子をご用意し ますので、座ってゆっくりお読みいただけたらうれしいです。

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Q
にしむらさんにとって、工房からの風は、どんな風でしょうか?

A
2009年に参加させていただいてから、今回は二度目の風。
あのときお腹にいた子が、今は5歳になり、私の制作の原動力になっています。

また、2009年の私のブースで、
何十分も迷いに迷ってカードを選んでくれた小学生の女の子が、
今頃は中学生か高校生のお姉さんになっているのかと思うと、
じ ん、と胸にひびくものを感じます。

五年前のあの風は、どんなときもずっと、私の背中に向かって吹き続けてくれました。
ありがとう、というきもちでいっぱいです。

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Q
にしむらさんが子供のころ、初めての「ものづくり」って、どんなものでしたでしょうか?
印象的なものを教えてください。

A
手芸が好きな母だったので、多分いろいろと真似して作っていたはずなのですが、
あまり記憶にありません。

ただ、小学生の時、初めてスイッチが入った瞬間が印象的だった出来事がひとつだけあります。
当時マンションの4階に住んでいた私は、
一階に届くまでシロツメクサの首飾りを編み続けようと決心し、
山ほどシロツメクサを摘んできてベランダにどっかりと居座り、
あたりが暗くなるまで孤独に編み続けました。

あの衝動はなんだっ たのだろうと今でも不思議です。
でも、今も何 か良いアイディアやつくりたいものが浮かぶと、
武者震いのような震えとともに「シロツメクサの衝動」がよみがえります。
あれは「ものづくり」の第一歩だったのかなあ、と懐かしく思い出しています。

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グラフィックデザインを職業としながら、手漉き和紙の技術を学んだにしむらさん。
素材の恵みと手の技術が、にしむらさんの感覚で結ばれて、独自の世界を創りだします。

前回出展くださった時には、そのセンスと手仕事の融合で、
文房具店をイメージして作られた展開がとても素敵なブースとなりました。

:::

「きこえる?」

息子を出産したときにみた、キラキラ降り注ぐまばゆいひかり。
甥が生まれたときに感じた、地球上すべてのものからやってくるような祝福の歌。

どちらも気のせいかもしれないし、私の感情の反映なのかもしれないのですが、
ずっと私の心に残り、そのきらめきは消えません。

(にしむらさんのブログより)

:::

昨年、にしむらさんの個展で発表された手製本に触れて、
じんわりこみあげてくるものがありました。

音をキーワードとしながら文章を書き、
紙を漉き、デザインをし、製本まで手掛けた本。
まずその美しい本の姿、佇まいに見惚れてしまいます。

そしてそこに綴られた、そぎ落とされながらも、ふんわりとやわらかな文章。

ああ、にしむらさんがこの世で一番聞きたい音、
それは、息子のともくんの言葉なのだと静かに伝わってきます。
5歳になったともくんの言葉を、母であるにしむらさんはまだ聞いたことがありません。
そのあふれる思いを、なんて透明感あふれる文章と、
やわらかな和紙の特性を生かした美術に昇華させたことでしょう。

にしむらさんの表現者としての力のすばらしさ。
それは、ジャンルの枠に閉じ込めてしまわずに、自然に実る姿で私たちに届いてほしい。
そう思いました。

もともと言葉がものづくりとともに心にあったにしむらさんは、
今展に向けて、本づくりに力を注ぎました。
そして新たに完成したものがこちらです。

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おとひろい

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ほんの一部をご紹介しますね。

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・・・
・・・
・・・

56頁にわたる紙と色と言葉とデザインの豊かな調べ。
「おとひろい」をはじめ、にしむらさんのブースのまわりに小さな椅子を散りばめますので、
ぜひ、腰かけてお読みいただきたいと思います。

和紙のこと、言葉のこと、本のこと、、、、。
心に響いたこと、ぜひにしむらさんとお話ししてみてくださいね。
そのことがきっかけとなって、にしむらさんの新しい扉、そして響いた方の扉も、
開いていくように思います。

にしむらさんのブースは、おりひめ神社正面の右側。
木漏れ日の下、どんな音が聞こえてくることでしょう。

にしむらあきこさんのHPはこちらです。
→ click

おまけ
私が撮ったものですが、にしむらさんに満ちた澄んだ光がよく伝わるような気がして。

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大住潤さん(木工)

どなたからご紹介しようかと迷いましたが、
間もなく完成する小冊子「風の音」に寄稿いただいた
4名の作家の方たちから始めようと思います。
大住潤さん、西村暁子さん、
Honda Silk Worksさん、三上優司さん。

(「風の音」は、「工房からの風」当日に本部テントで配布します。
尚、登録済みの方には、ぎりぎりになりそうですが、発送します。
(すみません、、現在新規登録は受け付けておりません))

:::

では、山梨県で木彫をする大住潤さんからのメッセージをご紹介します。

Q
大住潤さんは、工房からの風に、どのような作品を出品くださいますか?

A
木彫りの熊と、僕の木彫りのルーツとなるアイヌ文様を彫ったものを出品します。

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Q
大住潤さんにとって、工房からの風は、どんな風でしょうか?


霧を晴すような風です。

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Q
大住潤さんが子供のころ、初めての「ものづくり」は、どのようなものでしたか?
印象的なものを教えてください。

A
子供の頃、折り紙に夢中になっていました。
親に折り紙の本を買ってもらい、鶴を折ったり、手裏剣を折ったり、
そのうち創作も混じって、何だかわからないものを折ったりしていた記憶があります。
今思うと、平面の紙が立体となっていく面白さに夢中になっていたのかなと思います。

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大住潤さんが熊を制作するに至る過程。

それは物語のようであり、人生の旅そのもののように感じます。

ひとりの青年の豊かな感受性が、インドへの旅をいざない、
星野道夫さんの書を引き寄せ、
先住民族のひとたちのことに関心を向かわせ、
自らの惹かれるものが自然や動物なのだと確信していくこと。

そして、北海道の木彫りの作品と出会い、
なんとかその作り手と出会おうと決心する。

お金を貯め、あてもなく阿寒湖に向かい、師となる人と出会う。

その後、東京で独立して日々を送る中、師に死が訪れ、
その手にしてこられた道具を譲り受けることとなってゆくこと。

そして、ここからは、この春からのことです。

「工房からの風」に応募されたとき、応募に添えられた写真には、
熊の作品はありませんでした。
木彫りの装身具が中心の構成でした。

5月、今年度出展作家のプレ展示「風の予感展」を開いたとき、
やがて展示も終わろうという日に、大住さんがためらいがちに包みを手にしました。
「制作途中なんですけど、見てもらえたらと」

包みをほどくと、小さな熊の彫像がそこにありました。
その静かな表情、澄んだ佇まいに、思わず心打たれました。
ああ、これは、このひとが、ほんとうに作りたいものなのだと、
私にもまっすぐに伝わってくるものでした。

今回「大住潤」という名のもとに発表を始める場に選んだ土地が、
星野道夫さんのふるさと、この本八幡であったことも、偶然ではないように思います。

心の向かうままに歩んだといっても、それだからこそ、
折々には迷いも多かったことでしょう。
歓びと苦しみのないまざった時間の先に生まれた熊の彫像。
それは、星野さんへの単純なオマージュや、
アイヌならではのモチーフというのではなく、
大住さんの心と手が向かった先に宿った姿なのだと思います。

『やっと、君に巡り合えた。
不思議なくらい溢れ出てくる愛おしい想い、それを、僕は彫っていきたい。 』
大住さんの言葉。

大住さんの心の純度を想うと、その心の向かうままに作ってほしい。
私からは、それ以外の言葉はありませんでした。
その言葉を引き寄せたのは、大住さん自身なんですね。

5月以降、熊を一心に彫り続ける大住さんから届いた今回の写真。
熊の姿、表情がぐんぐん自在に伸びやかになっていました。
それは、熊であって、熊だけではない、いのちの姿なのですね。

と、お一人目から渾身のブログになってしまいましたが(笑)
ぜひ、当日、大住さんの手から生まれたいのちの姿と出会ってみてくださいね。
ニッケ鎮守の杜の庭園内、稲荷社の鳥居の前のテントです。

大住潤さんのHPはこちらになります。
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