2023年10月の記事一覧

「出展作家紹介/工房からの風」New

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藤田千絵子さん(陶芸)

Q1
長野県安曇野市で作陶する藤田千絵子さmm。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
今回出品させていただくのは、日用の器や花器です。
うつぎ(うの花)色の半磁器のシリーズを中心に、土に鉱物や砂を混ぜた白、釉薬に表情を持たせた茶色、金属のような黒の、4シリーズを出品いたします。
いずれも主張しすぎないシンプルなラインを意識し、ほぼすべてロクロにて制作しています。
できるだけ手の後を残さないように仕上げていますが、手に取った時の質感や軽やかさには、手仕事ならではのこだわりを感じていただけると思います。

私は次々と新作を生みだせるタイプではなく、じっくりと形にしたアイテムを長く大切に作っています。
独立以来、一貫して変わらないことは、「素朴で使いやすい器」を心がけて、ひとつひとつ丁寧に制作するということです。
それは、自分自身が使いたい器、身の丈にあった器、という想いが原点になっています。

そしてその器が、手に取ってくださる方にとって、特別ではなく、「おだやかな時間」「おだやかな暮らし」を共にできる道具として静かに在ることができれば嬉しいです。

Q2
藤田さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
道具ではないのですが、工房を象徴するものは、窓の外に広がる北アルプスの風景です。
毎日、朝も昼も夜も、山や空や雲を眺め、鳥の声を聴き、季節を感じています。
工房にこもり時間に追われる日も、山の景色と空気で、気持ちが解放されます。
私にとって、暮らし(=制作)の一部です。

「工房からの風」の頃には、アルプスの冠雪を背景に、飛来してきた白鳥たちの声が響きます。
*写真は、これからの季節に見られる雪山の朝焼けです。

Q3
藤田さんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
「工房からの風」にも出展されていた大谷哲也さんのプレートです。

やはりシンプルな器にときめきを覚えます。
大谷さんへのある取材記事に
「僕にとって器作りは、息を吸ってはき出すくらい当たり前のことで、大谷哲也という人間が朝起きて一日生活をしていれば器ができる。
だからこそ、自分が吸い込む空気を常に質の高いものにしておく努力をされている」と、ありました。

自然体でありながら、自分に軸を持っていること、
なんて素敵なんだろう、と思いました。
どんなにシンプルな佇まいであっても、そこには作り手のストーリーがある。
私は独立して17年になりますが、大谷さんのこのプレートを手に取るたびに、自分を見つめなおすきっかけをもらう気がします。

『自分が吸い込む空気を常に質の高いものにしておく努力』
哲也さんの言葉、効きますねー。
そして、それを器を通して、折々心に響かせている藤田さんの心に敬意をいだきます。。

安曇野の山の景色を心に吸い込みながら作られた静かで穏やかな器。
コルトン広場、スペイン階段前のブースで出品されます。

藤田千絵子さんのインスタグラムはこちらです。
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平井亮大さん(陶芸)

Q1
静岡県田方郡で作陶する平井亮大(りょうた)さん。
「工房からの風」にはどのような作品を出品されますか?

A1
私は静岡県の柿農家に生まれ、幼少期から伊豆の豊かな山や海が遊び場でした。
今回出品する作品にはそんな遊び場で出会った自然界の無垢な優しい色合いを表現したいと思っています。

柿農家の剪定作業で出る枝葉と田んぼから取れる藁を灰にして釉薬を作ったり、海で拾った貝殻で模様を付けたりしています。
作品を使って頂けるのが嬉しいので,マグカップなどの食器をメインに、できるだけ自然界では手に入りにくいものは加えない無添加なモノづくりを意識しています。

不安定な原料を使い、手跡の残るように作っているので1つ1つ雰囲気が違います。
是非手に取って選んで頂けたら嬉しいです。

・柿灰釉コーヒーカップ
実家の横にある柿畑は子供の頃の遊び場で5月の若葉の黄緑色が大好きでした。
柿灰釉は酸化焼成で黄色、還元焼成で緑色になります。
日常の中での使いやすさと容量を重視してサイズ展開しています。

・灰釉豆皿
自由度の高い豆皿はあえて不安定な原土や砂などを混ぜたり、柿や藁の灰釉を組み合わせて1つ1つ違う豊かな表情が見られるように作っています。
河原の石を拾って集めたくなるようなそんな気持ちになって頂けたら嬉しいです。

・花器(柿灰釉)
陶芸を始めて花器を作ったりするようになってから花がもっと好きになりました。
主張し過ぎない落ち着いた色とカタチを意識して制作しています。

Q2
平井さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
剣先
自身でノコ刃を削って作ったもので陶芸を初めて教わった頃からずっと使っている相棒。
私は自分の手が一番の道具だと思っているのですが,剣先は手ではできない細かい削りや粘土を綺麗に切る作業には欠かせないです。
持ち手の部分がノコギリになっているのでその部分でも作品を削ったりできて大活躍なのです。

自分の手が一番の道具
って言えるのは素晴らしいことですね。
(そういえば、沖縄のnikadoriさんも、言っていました!)

そして、柿農家という生家や、生まれた土地の自然を敬愛し、自らの仕事につなげていること。
30代になったばかりの平井亮大さんの地に足のついたものづくり。
これからの展開も楽しみです。

平井さんの出展場所は、コルトン広場、スペイン階段前。
陶芸の千田徹さんの隣で、もっとも本八幡駅側です。

インスタグラムはこちらになります。
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千田 徹さん(陶芸)

Q1
愛知県で作陶する千田 徹さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
スリップウェアと錫釉陶器を出品致します。

スリップウェアはイギリスのスリップウェアを軸とした写しのものと、点打したのちピックで引っ掻いて描くハート紋のものと二種類、錫釉の陶器は低火度錫釉を用いたものです。
どちらも西洋工藝を彷彿とするような柔らかで温もりを感じる陶器を目指しております。

東洋の凛とした硬く焼きしまった焼き物も美しいですが、自分がより美しいと思うのは西洋の焼き物の持つ柔らかな肌合、色鮮やかな色彩です。
特にスリップウェアの鮮やかな黄色、錫釉の艶やかな白は格別です。
初めて目にした時の感動は今でも鮮明に覚えており、そうした感動を他者にも伝えたいと思い日々制作しています。

Q2
千田さんが、工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A1
日陶産業製の0.1立米のガス窯。

今自分が陶器作りが出来ているのはこの窯のお陰です。
20代の頃自分の窯が欲しいという思いはあるもののほとんど予算のない状況で、そんな時にたまたま見つけ購入できたガス窯です。
ギリギリ自力で運べる重さなのでパワーゲート付の2tトラックを借り友人と2人で運び、自分達で小屋を立て煙突を立てました。
バーナーも大きなバーナーが一本だけなので無料で配管してもらい奇跡的な低予算で今の場所で陶器作りが出来る様になりました。
容量が少なかったりバーナーが一本だけだったりと不便なところも多いですが大切な相棒です。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
大沼道行さんの織部のリム皿です。
2015年頃だったと思うのですが益子の陶器市に出店した際に交流を持ち、その時いただいたものです。
大沼さんの陶器は用と美を絶妙なバランスで兼ね備えていると思います。
焼き物として力強く美しい、それでいて気がつくと食卓に並んでいる。
美しいが美し過ぎず気兼ねなく使えるというこのバランス感がすごいと思います。
自分の目指す陶器もこういったものであると思います。

陶芸家にとって、焼成窯は工房の要で、皆さんそれぞれにストーリーがあるのだと思います。
作り手としての時間を共に過ごしたまさに相棒。
愛おしい存在ですね。

千田さんの出展場所は、コルトン広場、スペイン階段前。
一番、本八幡駅側です。(反対側は下総中山駅側)
同じく陶芸の平井亮大さんの隣です。

千田徹さんのインスタグラムはこちらです。
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絲綴 (庄内刺し子)

Q1
現在は愛知県にお住まいで、庄内刺し子の制作を続ける「絲綴」(いとつづり)さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
刺し子と布の風景
耐久性や保温性を図るために、布に糸を指し重ねて文様を作る「刺し子」。
寒さから大切な愛する人を守りたい気持ちや、東北の女性が持つ美意識から生み出されました。

自然と人が向き合い、共に生きることで見出された刺し子の美しさ、ひと針ひと針刺された温かな手触りのある布。
人の手を感じ、自然を感じ、どこか自分の内面にも通じるような、そういう風景のあるものを手に取っていただきたいと思います。

刺し子の前掛け
様々な文様を組み合わせて一枚の布に。刺し子の文化が根付いていた時代、女性たちは思い思いの文様を組み合わせて自分の前掛け(エプロン)を作っていたようです。
自己表現をする場がほとんどなかったであろう時代に、文様の選び方、組み合わせ方を工夫した自分だけの前掛けを着けて農作業をするということ。
私は、刺し子が布の修繕や補強の目的だけではなく、自分と向き合い表現する心のよりどころであったのではないかと考えています。

多目的風呂敷布
カゴバックの目隠し布や風呂敷として。
キッチンでは敷物としてもお使いいただけます。
一枚の布から多様な発想が生まれ、使う人の生活にとけ込んでいく。
人の用途に合わせてモノがあるというよりも、人の方がモノに寄っていくという考え方は今よりものが少なかった時代では当たり前だったんだろうと想像します。

ピンクッション
使い込まれた木のパーツを再利用したピンクッション。
子どものおままごと遊びを見ているようなほっこり優しい気持ちに。
大人だっておままごと気分で。針に優しい羊毛入りです。

クリスマスオーナメントカード
私たちの住む地球が愛に包まれ、全ての人々の幸せを願ったメッセージをプリントしたクリスマスカードに刺し子のオーナメントをセットにしました。
クリスマスツリーに飾ったり、チャームとして鍵やかばんにつけても素敵です。
精油を1滴つけて香り袋としてもお使いいただけます。

Q2
絲綴さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A1
針に糸を通してチクチクと同じ目幅で縫い続ける。
ひたすら真っ直ぐ、時には弧を描くように。
1週間、2週間、毎日同じ文様を行ったり来たりしていると、だんだん自分の手が針と一体化した一種の道具のように感じてくるから不思議です。
手に針を委ねると、私の意思からは完全に切り離され、手が生み出した「ありのまま」のものができあがってくる。
チクチクチクチクと今日も私の「手」は軽快に、時につまずきながら働いています。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
漆塗りの木箱
私は箱が好きです。
木箱や竹で編まれた箱、紙の箱。たとえ中に何も入っていないと分かっていても、開ける瞬間に思わず心が弾んでしまうのは何故でしょうか。

90年代の名作、映画フォレスト・ガンプに
「Life was like a box of chocolates. You never know what you’re gonna get.
人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみないと分からない。」
という名セリフがあります。
私は箱というものの中に無限の可能性をみているのかもしれません。

古い漆塗りの木箱には日々使う裁縫道具を入れています。
時を経て持ち主が代わりながら使い続けられてきた黒漆塗りの木箱は、チョコレート色に退色して今は私の人生の傍に。

東北地方にお住いの時に出会った庄内刺し子を、ご自身の学びや感性に響かせて綴りあげていくお仕事。
時間、手間のかかる手仕事ですから、展示販売の構成はなかなか難しいかと思いますが、「糸を綴ることが好き」な方々が集える空間、ブースになるといいですね。
そして、糸に親しむ機会がなかった方の心にも新鮮に響くような。

今回は、こぎん刺しの「こぬるこぴあ」さんも出展されているので、ともにゆっくり布の手仕事に触れていただければと思います。

絲綴さんの出展場所は、コルトン広場、スペイン階段前。

絲綴さんのお名前の由来など読み応えあるホームページはこちらです。
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chichi(布フェルト)

Q1
3回目の出展となる布フェルト作家のchichi(シシ)さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
布地に羊毛繊維を重ね、お湯と石鹸を使って縮絨する「布フェルト」の装いのアイテムを作っています。
柔らかな空気を孕むウェアは軽くあたたかく、身体と心を包んでくれます。

繊維素材は多くの場合、糸に紡ぎ織られたり編まれたりして私たちの生活の中にありますが、フェルトは紡ぎや織りの工程なしに、羊毛繊維が本来持つ絡み合う性質を使って作られた布です。
織機や手道具を介さず、自らの手のひらを使って布や立体を作り出す過程は、常に繊維と一緒に呼吸し、対話しているような気持ちに。

手のひらの感覚を研ぎ澄ませながら、羊毛を重ね縮めている時、繊維1本1本がそれぞれ意思を持っているようにも感じられます。
バラバラだった繊維が手の中で動いていくようで、私の感覚も生き生きとしてくるのです。

羊毛繊維は手のひらの摩擦と振動により、布地のわずかな糸の隙間に入り込んで、吸い付くように絡み縮んでいきます。
徐々に生まれてくる豊かなしぼは、投げかけた言葉に素材が答えてくれるような感覚。
何よりこのウールの力に魅了されています。
現れたテクスチャーは身に纏うとより一層美しい陰影を見せてくれます。

ウェアにおいてはフェルティングでしか表現できない優しくぽってりとしたフォルムを実現するため、縮絨と縫製の仕方に独自の工夫を持たせています。
一般的な服作りとは異なるchichiの布フェルトウェアの魅力のひとつです。

繊維造形の世界に入ってだいぶ経ちますが、気がつくと「布フェルト」の独特な色と質感の世界に夢中になっています。
ぜひ直にご覧いただけますように。

Q3
chichiさんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
その土地の人が自らの手や指で天然繊維を編組しつくり出す、その行為、構造が見えるものに惹かれます。

織りをはじめ、編み、組み、絡める、巻く、結ぶ、縒る、糸を刺すなど、日本国内はもちろんアジア、アフリカの手仕事には目がありません。
ひとつひとつの素材を知ることで生み出されてきた作り手の工夫、その想いや手の温もりが感じられ、ものづくりをしていて励まされたり学ぶことも多いです。
私にとってとても自然に馴染み、寄り添ってくれる存在です。
その類いで大事にしているものが幾つもあり、その中から中国の棕櫚刷毛を選びました。
私を繊維造形の世界に導いてくれた恩師から、20年近く前にいただいたものです。

一番の魅力はこの棕櫚をおさえるように一定のリズムで刺した糸目と、それに伴い束ねられる繊維の美しさ。
よく見ると、同じ棕櫚の繊維を縒り合わせた糸で刺しています。
もちろん私たちのよく知っている棕櫚縄ではなく、うんと細い棕櫚糸。
この固く強靭な繊維を細く縒るなんて考えも及びませんが見事なこと。
棕櫚皮の本来持つ繊維の流れや構造を利用しつつ、密度と強度を考慮し尽くされた手仕事です。
糸の隙間に斜めに交差するように流れる繊維の束にうっとりとしてしまいます。

また、棕櫚自体に油分があり水にも強いので本来の用途としては表装の仕事に使うようなのですが、私は時々卓上の掃除や籠の手入れに使っています。

日本でもたわしやほうきなど棕櫚製の優れたものがありますが、多くは耐久性の高いエナメル線などで束ねた仕立てですね。
ここまで繊細な棕櫚の道具にはまだ出会ったことがありません。
やはり棕櫚の本場の手仕事なのだと感じています。

chichiさんの映像もインスタ版を既に公開しています。
(まもなく、もう少し長いyoutube版も公開予定です)
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chichiさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜に入ってすぐ左手の小高い丘のようなところ。
お天気がよいと、空間に伸びやかに美しい布フェルトの作品がたなびくことでしょう。

chichiさんのインスタグラムはこちらです。
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小野彩香さん(フェルト・裂織り)

Q1
東京都でフェルトを中心に制作を続ける小野彩香さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか

A1
私は、羊毛を縮絨してフェルトの作品を制作しています。
寒くなり始めたこの季節にフェルトのふんわりとしたあたたかい作品をお試しいただければと思います。
彫刻的な帽子を中心にストールや小物などを出品致します。

また、365日毎日使いたくなるバッグをコンセプトとした裂き織りのバッグも出品致します。
シンプルでシック、モノトーンのバッグです。
今回初めてのお披露目となりますのでドキドキしています。

Q2
小野さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
紡ぎ車です。
私は、専門学校でテキスタイルの勉強をしました。
織も紡ぎも、まさかこんなに私に寄り添って支えてくれる存在になるとは思ってもみませんでした。
特に糸紡ぎは、一定のリズムを刻みながら無心に手を動かす事が心地良いです。
自分のペースを取り戻すひとときを与えてくれます。

この紡ぎ車は専門学校卒業と同時にちょっと無理して購入しました。
最初は白木でしたが、自分で塗装し、調子が悪くなったら調整して使い続けています。
これからも大切にしていきたいもののひとつです。

海外の方にも注目されている小野さんのフェルト。
ニッケ鎮守の杜、おりひめ神社の空間に、フェルトの特性を生かした造形的なフォルムの帽子が出現するのが楽しみです。

小野さんご自身がとてもファッショナブルで、また、以前は法律を専門的に学んでいらしたという独自の感性と歩み方の中から生まれる作品の数々。
深く見ていただけたらと思います。

小野彩香さんのインスタグラムはこちらです。
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こるぬこぴあ(こぎん刺し)

Q1
石川県から出展くださる「こるぬこぴあ」さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
こぎん刺しの技法と伝統的な模様を用いた作品を出展します。

津軽こぎん刺しは、青森県の津軽地方に伝わる伝統工芸です。
江戸時代、東北地方は冷害による飢饉に苦しめられており、 倹約令で、農民は普段着として麻の生地、木綿の糸以外の使用を禁止されていました。
厳しい冬の寒さを乗り越えるため、また擦り切れた衣類を補修して大切に一生涯着るための工夫・生活の知恵として、こぎん刺しは誕生しました。

家の女性たちは冬の手仕事として暗くて寒い冬の間、月明かりと手の感覚を頼りに家族のために一針一針こぎん刺しを刺し綴りました。
それは嫌々させられた苦しい仕事ではなく、模様の美しさを競うようにしてたくさんの種類の模様が生み出され、楽しまれたといいます。 ⁡

こぎん刺しは明治以降鉄道の普及により物資に困らなくなったことで一度途絶えますが、 昭和初期の民藝運動によってもう一度手芸的に盛り上がりを見せます。 ⁡

工房名「こるぬこぴあ」は、cornu copiae (収穫祭などで飾られるオブジェ。豊穣、豊かさの象徴)を意味しています。
貧しく制限がある中で、美しいこぎん刺しを綴った当時の人々の心の豊かさに想いを馳せ、物資的に豊かな現代にあるこぎん刺しの姿を、時代の流れも汲みつつ自分なりに考察して、作品の形を工夫しています。

耳飾りは季節を楽しめるような色づかいにこだわっています。
こぎん刺し発祥当時は藍色の布に未晒し糸の使用のみ許されていましたが、今は禁止がないので、色を楽しみたいと言う気持ちを込めています。
また、こぎん刺しは裏側には表とは白黒反転した模様があらわれますが、小物に仕立てるとどうしても裏側は隠れてしまいます。
「こぎんは裏も美しく」と言って、裏側の模様もとても素敵なので、耳飾りの右と左で表と裏を表現しました。
形は吉祥模様の亀甲にちなんで六角形です。

こぎん刺しは名のある職人の仕事ではなく、名もなき女性の家庭の仕事でした。
そのことを、有名で光り輝く宝石ではなく、身近にあって個性的で魅力ある小石に例えて、可愛い形の石を探して拾い、型をとってブローチや帯留めに仕立てました。
使う素材を有機素材にこだわり、石が来たところに還れるようにと遊び心もプラスしています。

元々コースターやアクセサリー置き場などの敷物としてイメージしていましたが、使うのが勿体無いとのユーザー様からのお声が多く、壁にも飾れるデザインを考案しました。
使う時も仕舞う時も美しく空間と生活を彩ります。

Q2
こるぬこぴあさんが、工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
針刺し、こぎん針、指貫。
この3点でこぎん刺しの道具は以上です。
とてもシンプルかつコンパクトで、場所を選ばず針仕事ができます。
この小さな道具から生み出される無限のこぎん刺しの柄、模様。
布と糸、時間が許す限りずっと刺し綴ることができる…そのギャップが個人的にグッとくるポイントです。 ⁡

Q3
こるぬこぴあさんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
漆芸家の名雪園代さんのえんぴつキーホルダーです。
約10年愛用しているのでもうだいぶ使用感があり…

大学生だった時、下校中に金沢市内のクラフトイベントにふと気がついて、なんとなく立ち寄りました。
当時、一般の国立大学に通っており「よく勉強して、進学して就職する」という道しか知らなかった私は、工芸作家として作ったものをこのように展示したり、販売したり…
そういう世界があることをその時初めて目の当たりにして、そしてなんだかワクワクドキドキビビビと来た感覚がありました。
今でもその時のことを思い出すたびにこの感覚が蘇ります。

所持金がない中色々と作品を見て周った中で、このえんぴつキーホルダーはリーズナブルで買えるお値段でした。
名雪さんが「漆の箸を作る時に切り落とされた端っこで鉛筆を作っているんだよ。漆だから塗れないよ、ふふふふ。全部一緒に見えるけど、微妙に違うからお気に入りを選んでね」と声をかけてくださり。
「漆って高級品だと思っていたけど、こんな可愛い形で、私にも買えるお値段で手に入ることもあるんだなぁ」なんて考えながら一生懸命選んで購入した思い出です。
作り手として、この時の買い手の自分の気持ちを大切にしたい思いで、ずっと大切に愛用しています。

『小さな道具から生み出される無限のこぎん刺しの柄、模様』

こるぬこぴあさんが手がけるこぎん刺しは、どんな風にひろがっていくのでしょう。
こぬるこぴあさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、稲荷社の脇。

今度は、こぬるこぴあさんの展示と出会って、進路、人生が変わって、開かれていくひとが現れるかもしれませんね。

こぬるこぴあさんのインスタグラムはこちらです。
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nikadori(編組)

Q1
沖縄県うるま市から出展くださるniakdoriの荷川取大祐さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
私は「沖縄に在るもの」を根幹としたものづくりをしています。
その枝葉として、今回は沖縄の植物を用いた「草編み細工」と「漆喰花器」を出品いたします。

「草編み細工」
草編み細工は、「民具」と分類されることが多いです。
質朴な印象を与え、自然に寄り添いながら日々の暮らしのなかでつくり出された民具。
民具は、先人の知恵そのものです。
だからこそ、民具が過去の産物として博物館や資料館に展示されているのは、もったいない気がします。
私は、自身が生活を営んでいる沖縄の植物で、現代の生活に使える「現代の民具」をつくりたいです。


月桃籠


ビーグ籠

「漆喰花器」
漆喰(むち)でつくった花器。
ドライフラワーの一輪挿しです。
白色は、琉球石灰岩
灰色は、軽石
赤色は、首里城破損瓦 を粉砕して作った絵の具を用いています。

それぞれの色には、それぞれの出来事に基づいた、それぞれの記憶、それぞれの想いがあります。
沖縄の記憶(過去)を色に載せて、想いをこれから(未来)につなげます。

Q2
荷川取さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
少し卑怯な答えになるかもしれませんが、自分自身の「手」です。
長年大事に使っている自作の道具などを思いつきもしました。
ただそれは、言葉を選ばずに言ってしまえば、替えが利きます。
使っている年月も手には遠く及びません。
やはり、「手」です。

「試行錯誤」、つまり思考と試行の行き交いを重ねること。
私が大事にしていることです。
試行錯誤を重ねると、手はやがて思考から解き放たれます。
私は、それを「感覚」と呼んでいます。

草編み細工においては、縄綯いの撚りや編み込んだときのテンションの確認など。
漆喰花器においては、漆喰と砂を調合したときの粘度の確認や形成など。
私は、多くの工程において手の感覚を頼り、またその感覚を信じています。
つまり、自分自身の手を「信頼している」ということです。
これからも、この手で大好きなものづくりを続けていきたいです。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
沖縄県読谷村の「やちむんの里」にある横田屋窯(ゆくたやがま)の器です。
釉薬の独特な風合いもさることながら、縁(ふち)の青色と蛇の目の環(わ)のバランスが絶妙で、とても気に入っています。
環の効果が手伝ってか、きれいに盛り付けたいという気持ちが働きます。
また、容量や深さにおいて汎用性があり使い勝手が良く、ほぼ毎日使っています。

・「素材」を感じることができるもの
・「手」を感じることができるもの
・日常的に使えるもの
・心に彩りと余白を与えてくれるもの

私は、そういうものを使いたい。
そういうものをつくりたい。
この器は、改めてそう思わせてくれます。

荷川取大祐さんからのメッセージ、とても骨太です。
手を動かしながら、考えを巡らして来られた中での言葉。
たしかな重みがありますね。

先日、沖縄から現地であるコルトンプラザを訪ねてくださいました。
荷川取さんのテントが建つ予定の場所を味わうように感じながら、「手仕事の庭」もゆっくり見てくださって。
ジンジャーリリーを見つけて、月桃に似ているなぁとか(確かに、似ています!)
トロロ葵(紙漉きのネリに使います)が咲いていますねーとかとか・・・。
工藝にまつわる植物をよくご存じで、ほんとうに手仕事がお好きなのだなぁと感じ入りました。

「工房からの風」の機会がなければ、荷川取さんとの出会いも難しかったかもしれません。
遠い地で、工藝や手仕事にまつわる物事を同時代に感じ、考える方とで出会えること、そして、多くの方に出会っていただけること。
とても幸せに思います。

nikadori 荷川取大祐(にかどりだいすけ)さんの出展場所はニッケ鎮守の杜。
おりひめ神社の鳥居に向かって右側あたりです。

ホームページはこちらです。
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そして、荷川取さんも映像版に登場くださっていますので、こちらもご覧くださいませ。
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so/et(籐籠)

Q1
都内で籐籠の制作をするso/etさん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
モノトーンカラーを纏った籐籠を出品します。
素材そのままの白に加え、浸染した黒や杢グレーの色から作品を制作しています。

特に黒色にはこだわりを持ち向き合っています。
濃く深い黒色、赤みがある優しい黒色、青みがある冷静な黒色・・・
作品の個性によって染め分け、モノトーンカラーの世界に豊かな広がりを与えています。

作品は籠鞄を中心に、お部屋で楽しむ籠や花器・壁掛けをご用意します。
籐はシンプルで自在性のある素材なので、定番の四角い鞄や丸い皿はもちろん、
異素材との組み合わせやユーモアのある形もとても似合っているように感じています。
また、それはモノトーンカラーだからこそ活きていると考えています。

ブランド名 so/et(ソエト)は、【皆様に「添え(ソエ)」る / 皆様と私が作る籠との間を取り持つ「〜と(ト)」】から成っています。
今展では気持ち良い秋風が吹く中、皆様の生活に寄り添える作品をお見せできたらと思っています。

Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
制作時に使っているアンティークのちゃぶ台です。
通常のローテーブルと比べて高さが約5cm低いので、しっかり押さえたり編み途中の籠の全体像を確認するのに、自分の身長にとても合っています。
中央の枠は火鉢を入れるための蓋です。
残念ながら火鉢を使うことはありませんが、趣ある見た目も気に入っています。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
長野県で作られた竹製のコーヒードリッパーです。
制作していると、つい休憩そっちのけになってしまいます。
制作の合間にこのドリッパーを使い丁寧にコーヒーを入れることで、制作時間にメリハリができています。
同じ籠細工ということもあり、コーヒー色が深まっていく経年変化を楽しみながら使っています。

so/et(ソエト)は、ひとりの作家がブランディングから制作前一貫して行っている籐籠です。
所謂手工芸品の趣きよりもファッション性を感じる作品が特徴で、「工房からの風」の中では少し異色かもしれません。

けれど、工房で大切されているちゃぶ台のお話や、竹製のドリッパーでコーヒを楽しまれるところなど、他の出展作家の多くと共通する感覚を感じます。
きっと、フレッシュで素敵なハーモニーがうまれるような気がして、期待しています。

so/etさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、おりひめ神社の奥。
お隣は、藍染めの革作品のenkuさん。
脇には、キャンドルの落合可南子さんのブースがあります。
鎮守の杜におしゃれな空間が出現しそうですね。

そして、程近くには、月桃など沖縄の植物で籠を編むnikadoriさんも。
素朴な籠とモダンな籠。
ちがうところ、同じく感じるところ。
作家と直接お話しする中で、心に響くことも多そうですね。

so/etさんのインスタグラムはこちらです。
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落合 可南子さん(キャンドル)

Q1
都内でキャンドルの制作をする落合可南子さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
キャンドルをメインに蝋で制作したオブジェ、花器の作品を出品させて頂きます。
自分の心が疲れきっている時に蝋という素材に出会い数年。
その日から蝋の魅力に夢中になり、自分の心を癒してくれた蝋という素材。
蝋の様々な可能性を模索し日々向き合いながら、日常に潜む美しさの気配を大切に “暮らしに寄り添う自然美”を意識に制作しています。

蝋という素材の本来の用途はキャンドルとなり火を灯すのがメインな素材です。
灯りに魅力があるのは勿論なのですが、溶けてしまうのが勿体無いや火をつけるのが怖いという声から灯さないキャンドルがあっても面白いのでは、と思ったのがオブジェや花器を創り始めたきっかけです。

蝋の表情は様々な表現を見せてくれます。
灯り、灯りだけでなく蝋だからこそ出来る傍にあるだけで暮らしに馴染み寄り添えるような静かな空気感を纏うモノ。
作品にはひとつずつ手でこねて成形し丁寧に作り上げたキャンドルや季節の移ろいをイメージし精油で香りつけした香るオブジェ。
色付けは蝋に合うかどうかを試しながら見つけた墨、木灰、藍などの天然の物を使用し天然だからこそ出る優しい色合いに仕上げています。

移ろい行く日々の中、日常を過ごす大切な空間に寄り添い暮らしをささやかに彩り穏やかで満ちた情景を想い浮かべながら。
秋のお庭の中、お手に取っていただけたら嬉しいです。

 

 

Q2
落合さんが、工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
ホーロー鍋と温度計。

制作で使用するものはどれも重要で大切な物ばかりですが、制作の土台となるホーロー鍋と温度計は特に大切なものです。
蝋は温度管理が重要なので常に温度を測りながら制作していきます。
ホーロー鍋は最初に購入した道具で、様々な形を試しながら今の数種類の鍋に落ち着きました。
ホーロー鍋でゆっくり溶ける蝋を眺めている時間が心を整えてくれる時間にもなっています。

Q3
落合さんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A1
伊藤環さんのマグカップ。

量が入る大きめなマグカップをずっと探していた所に、親友から誕生日のお祝いに頂いたものです。
アンティークのマグカップのオマージュとして作られた作品は置いてあるだけで眺めたくなる美しい佇まいなのですが、初めて使用した時に口当たりの良さにも感動を覚えたくらいです。

今では朝一にはまずこのマグカップで白湯を飲み、その後にコーヒーを淹れ自分の心と身を整えてくれる365日欠かせない宝物のようなマグカップです。

落合 可南子さんから寄せられた写真をみても、シックな美意識が伝わってきます。
当日はどのようなプレゼンテーションになるのでしょうか。
とても楽しみですね。

落合可南子さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜おりひめ神社の奥。

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