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2016年10月の記事一覧
「凪ぐ浜の宝物/工房からの風」New
director's voice
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前川わとさん(陶芸)
広場側から「ニッケ鎮守の杜」に入ってすぐのところ。
白磁に柔らかな色彩が施された器と装身具を展示されていた
前川わとさんからもメールをいただきました。
「工房からの風」からあっという間に一週間がたってしまいました。
本当に素晴らしい無垢な時間であり場所でした。
ありがとうございました。
終わった直後は言葉にならない色々な気持ち溢れてしまって
とても文章にできる気持ちになりませんでした。
預けていた猫を迎えに行ったり、工房を片付けたり、日常に戻っていく中で
心の整理がついてきたように思います。
あの日荷物を積み込んでコルトンプラザを去った時、
車の中で少し泣いてしまいました。
緊張から解放され、もっと出来たことがあった悔しい後悔の気持ちと、
こんなにまで集中し自分の中に潜るような濃密の時間が
終わってしまった事の寂しさが一気に込み上げてきて、
わーっと話しながら涙が出ました。
日常を忘れて没頭できるような目標をいただけたこと、
本当に没頭して頑張った事、それは自分にとって素晴らしい糧になり、
反省点は多々あれど、ここの場所に来なければ見えなかったものが確実にあって
これからの仕事を見直す大きなきっかけになりました。
素敵な事も沢山ありました。
お客様の中に何年も前に別のクラフトフェアでブローチを購入くださった方が
私の名前を見つけて下さり、2個目のブローチを購入しようと
遠方からお出かけ下さった方がいらっしゃいました。
その方がお持ち下さった使い込んだ
1つ目のブローチを見た時の何とも言えない気持ち。
私の作ったものは私の手を離れてからも、
持ち主となった方の暮らしの中でいつも生きている。
忘れていたつもりはなかったのに、その事にすごくハッとして
胸がキューとなる嬉しさがありました。
私の仕事はこういう事の積み重ねなんだとその時強く思ったんです。
この気持ちを忘れないで真摯に仕事をしていく事しか出来ないんだって。
この半年間、手紙を受け取ったあの日から
学校に通っていたような気持ちで過ごしました。
初回の全体ミーティングの時のあの緊張感とか、
普通の暮らしの中ではとても味わえるものではないですね。
当日までのすべての時間が新鮮で楽しく、素晴らしい物でした。
今は感謝の気持ちでいっぱいです。
素晴らしい場所に立たせてくださってありがとうございました。
たくさんの事勉強になり吸収して帰りました。
今後私に何かできる事がありましたらお手伝い致します。
お声がけいただきましたら、全力で取り組みます!!
仕事ももっと深めていき、成長し、
また庭に帰って来られたらと思っています。
最後にお伝えしようと思っていた事
富山に戻ってから、沢山のものづくりの友人達から
どうだった?話聞かせて~
と連絡があったり、搬出などで行った先で興味深く聞かれたりしています。
やっぱり皆注目しているイベントなんだなーと、
展示が終わってから改めてすごい事だったんだと感じています。
これからは私の経験を人に伝えていく事も私のできる事かなと思っています。
段々と秋が深まってきました。
お身体ご自愛いただき健やかにお過ごしください。
では
前川わと
器と装身具での制作展開、そのリアクションなど、
わとさんもこれからのかじ取りに思いめぐらせることと思いますが、
何事もよき余白をもって進まれると、
輝きが集中していっそう魅力ある展開に進まれるように思います。
『これからは私の経験を人に伝えていく事も私のできる事かなと思っています。』
ありがとうございます!
わとさんがよかった、と思ってくださったことを広げて、
よき営みが他の作り手の方々にもふくらんでいったらなら、
とてもうれしく、ありがたいことだと思います。
よかった!の循環、私も大切にしていきたいです。
前川わとさんの作品、引き続きあちらこちらで出会っていただけますように。
出展前のメッセージはこちらです。
→ click
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su-nao homeさん(陶芸)
「ニッケ鎮守の杜」の真ん中あたり。
「galleryらふと」の近くで、黒一色の器を展示していた
su-nao homeさん。
初日の始まりからいつもたくさんのお客様に囲まれていたブースでした。
関西に戻られて、早々にメールをいただきました。
工房からの風が終わり、過去のことになったこと、
約半年の時間と、そしてあの2日間。
終わってしまうと、それはとても寂しく、愛おしく感じます。
稲垣さんを始め、スタッフの方々、風人の皆さま、
そして同期の仲間達。
本当に本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
まず心に浮かぶのは、人に恵まれた嬉しさです。
稲垣さんが言われていた、このご縁が工房からの風への出展の宝だと。
本当にそう感じます。
願わくば、仕事を通じて、今回ご縁が生まれた方々と
今後も繋がっていければと思っています。
今回工房からの風の輪の中に、入ることができたこと、
みんなとの一体感、熱い人たちとの触れ合い、
工房からの風に出展でき、本当に良かったです。
自分の仕事に関してもいろいろと考えること、思うこともあります。
稲垣さんから、「自信を持って!」と言われたこと。
正直やはり自信はたくさんはないのですが、自分を信じることに努め、
少しずつ積み重ねていけたらいいなと思います。
今後も工房からの風に関わることができれば、嬉しいです。
インスタで同期の人が「風ロス」と言ってました。
まさに風ロスです。
こんな気持ちは、卒業制作展以来かなぁ・・
しばらくセンチな気分が続きそうです。。
面倒な後片付けも、仲間と一緒だと思うと少し楽しくなりました!
この度は本当にありがとうございました。
su-nao home
松本圭嗣
同期。
私から言った単語ではなく、むしろ使わないように意識してきたのですが、
いつのまにか定着してしまっていることば。
学校ではないし、先輩も後輩もないので、なんだかなぁ、と思ってきたのですが、
どうも使われ方としては、工房からの風への親しみや愛情がベースになっているんだと、
ようやく最近受け入れられる(笑)ようになりました。
その位、ある出展者たちにとっては机を並べて切磋琢磨したような気持ちなんですね。
そして、あの達成感、高揚感を共に感じたことを、大切に思ってくださっているのだと。
同期、の人たちは、今後も、あちらこちらでよき影響を与え、受け合いながら、
お仕事を深めてくださることと思います。
卒業制作以来のセンチな気分!
それほど、懸命に取り組んでくださったのですね。
その成果、見事に実って、次に進む豊かな力となったことと思います。
これからもsu-nao homeさんの提案する器の世界、
あちらこちらで出会っていただけますように。
su-nao homeさんの出展前のメッセージはこちらです。
→ click
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色葉工房さん(染織)
おりひめ神社の脇で、色糸奏でる作品群を展示くださっていた色葉工房さん。
仙台の庄子葉子さんからいただいたメールの一部をご紹介します。
まじめ!な文章ですけれど、ちょっとくすっとさせてくださいます。
無事に仙台へ戻りました。
ここ数日は、風の余韻の中で ただただ静かに 荷物と心の整理をしています。
何からお伝えしたらよいやら…
とにかく感謝の気持ちでいっぱいです。
会場に流れる風と あたたかな光を
たくさんの方と共有できたこと、本当に嬉しく思います。
気がつけば、「私、しあわせです。」と 何度も同じ言葉を口にしていました。
あまりにもいいお天気に恵まれて
木漏れ日も みんなの表情も あの日と同じようにキラキラ輝いて、
心地よく爽やかな空気で会場全体が満ちていて。
初めて工房からの風を見に訪れた日も、こんな晴天の日でした。
いつか私も作り手としてこの場所に立ってみたいと
おりひめ神社の前で あの時 芽生えた気持ち
ずっと心の中で想い描いてきたことが
今、ここで こうして実っている。
願いは本当に叶うんだね。
生きていてよかったね。
もう一人の自分に そう言いながら過ごした 夢のような2日間でした。
たくさんのお客様から あたたかい言葉をかけていただきました。
半年間 同じ時間を過ごした出展者の方々との繋がり、たからものです。
・・・
・・・
チャリティーでコースターを手にしたお客様もブースを訪ねてくださいました。
震災後、工房のそばに建った仮設住宅で織物のボランティアを始め
毎月細々と4年半続けてきた活動を
今年3月で終了する事に決めた直後に
工房からの風の選考通知を受け取ったことを思い出しました。
あー、これからは、その分の時間とエネルギーを
自分のために使っていいんだと思えたこと。
そして自分のためにと歩みを進めたその先で
こうしてまた 見ず知らずの方々が
東北に九州に想いを馳せてくださっている姿に触れることができました。
すべてが今に繋がっていたんですね。
それもこれも
稲垣さんが長い時間と愛情をかけて育んでこられた
ふっかふかの土があったから、このタイミングで実った想いや
結ばれたご縁。
その土の上で、これまでの自分と これからの自分を
しっかりと繋ぐ 結び目となるような経験をさせていただきました。
そして、
工房に戻ってから気がついたことが 一つあります。
自分に足りないものって何だろう。
自分にできることは、何でもやってみよう。
あれもこれもと想いばかりが先に立ち、いつも少し前のめりで
作品のボリュームが多くなってしまう割に
これまでなかなか納得のいく展示ができずにいたのですが、
その原因が やっとわかりました!
今の私に必要なのは、「間引き」だったのだと思います。
ワサワサと茂った葉をそのままにせず、
適度に間引いて風通しよく
光や水や養分が 必要な所へちゃんと届くように
よりよい成長へつなげていくための作業。
稲垣さんの言葉の中で、とくに強く心に残っているのが
「自分の庭を丹精すること」
きっとそのことにも通じているかなと思います。
昨夜の食卓に
いつもと変わらぬシンプルな野菜料理が並ぶ中、
ひときわ輝く一皿があって、
「これ、何の葉っぱ?」と家族に問いました。
返ってきた答えは、
「間引いた大根。」
おもわずニヤリ(笑)。
間引かれた葉も 無駄ではないみたいです。
本当に大切なものは、そう多くなかったのかもしれません。
ようやく少し肩の力が抜けた気がしました。
半年間、かけがえのない出逢いと経験させていただき、
本当にありがとうございました。
色葉工房 庄子葉子
自分に足りないものって、なんだろう?
それを「間引き」と気づかれた庄子葉子さんのすばらしさ。
これから、ニッケ鎮守の杜で間引いた草!を
色葉工房さんへお送りして、ぜひ糸を染めていただこうと思っています。
その糸で織り上げられた布、引き続きご紹介させていただけますように。
色葉工房さんの出展前のメッセージはこちらです。
→ click
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竹村聡子さん(陶芸)
稲荷社の脇で淡い色調に銀彩が施された器を展示していた
長野県で作陶する竹村聡子さんからもメールをいただきました。
一部、竹村さんの許可をいただきこちらからもご紹介します。
・・・
・・・
月曜日の夜に無事帰宅し、
ほっと安心した途端に半年間の緊張の糸がぷっつりと切れて
そのまま一日半倒れていました。
今は徐々にいつもの生活に戻りつつあり、
二日間あの憧れの場所に立って実感した
尊いあれこれを頭の中で整理して紙に言葉で書き起こしています。
本当に風の如くあっという間に過ぎ去った二日間でした。
念願の工房からの風への出展、
初の野外展示、作風の変化などなど、、、。
始まるギリギリ直前までは全ての要素が不安でいっぱいで、
よく夢でもまんまとうなされていましたが、
当日は沢山の方々に展示を見ていただき、
器をお手にとっていただくことができました。
何度も足を運んで下さる方や興味をもって話しかけて下さる方がいたりと、
様々な反応を直接得ることが出来、二日間ずっと楽しく笑顔でいられたように思います。
私自身もこの半年間で新たに作った器たちを漸く客観視ができて、
自然と次の目標や作りたいものの構想などが湧いてきました。
二日間を終えてこの半年間を振り返ってみたときに一番に感じたのは、
心ある応援や手助けをして下さる方々が
自分の周りに驚くほどに増えたということです。
今までにないほど本気で制作に取り組んでいたからか、
周りの方々がまるで自分のことのように親身になって応援をしてくださったり、
励まし支え続けてくださいました。
共に高め合い尊敬できる作家の仲間も増え、
その事が私にとってこの半年間の一番大きな変化と得られたものだった気がします。
皆様のおかげでいつも心強く、
逃げずに思い切って前進することができました。
自分一人の力ではなく沢山の方々のお力添えのおかげで
生み出せた器だなと気づいたら、
自分自身や器たちをもっと肯定しようと素直に思えました。
自分の制作にとことん向き合った半年間は、
まだまだだなぁと思い知らされることも数多く、
「花風」の「花」が咲くのはまだまだ先のようですが、
これからももっとずっと作り続けていきたいとまっすぐ思いました。
そして手を動かしものを生み出す仕事をしていることに改めて幸せを感じました。
工房からの風に関わる全ての皆様、
当日の手伝いを快くしてくれた友人達や
いつもあたたかく見守ってくれている家族に、
心から感謝します。
尊い経験をさせていただき本当にありがとうございました。
・・・・
気がついたら辺りは紅葉が始まっていて、
すっかり寒くなってきていました。
月並みですが、半年間長かったですし、あっという間でした。
工房からの風の選考通過の手紙が届いた時に
嬉しさのあまりにわーーっ!!と大きな声が出て、
その直後にとてつもない不安に襲われて逃げ出したくなったことと、
個人ミーティングをさせていただく時の
「念願の場所にやっと辿り着けた!!」という感動
逃げずに乗り越えられたのもいただいたまっすぐなお言葉のおかげでした。
でも一つ、稲垣さんからの
「苦手克服よりも得意を伸ばしましょう」
の言葉から少し脱線して、
やはり苦手も少しでも克服できたら自信がつくのでは
と努力してみたくなって悪あがきして、
まんまと苦しみ結局克服もできませんでした。。。
本当に今度こそ諦めがつきました。。
得意を伸ばします!!
(「諦める」の語源は「明らかにする」らしく、
悪い言葉でないようなのでちょっとホッとしましたが。)
色々と前向きに挑戦してみようと思えるきっかけを
沢山いただけたことを本当に感謝しています。
竹村聡子
真剣に取り組んだら、応援してくれる人がたくさんになった。
と感じられた竹村さん、同期出展作家をはじめ、
ものづくりとしての豊かな人の輪がふくらんでいきましたね。
「花風」のお話は、出展前のメッセージに書かれてあって、
印象に残っていました。
『芸の成果を「花」、それに至るまでの様々な工夫と心構えを「風」』
と。
この半年間吹き続けた風は、まさに花風の風。
そして、その風は、これからも吹き続けますね。
そして、私もこのメールで知った「苦手克服作戦」!
見事に撃沈だそうですが、「明らかにする」ということを
ご自身で思い定められたとしたら、それはそれで何よりのこと、
と思います。
それにしても、竹村さん、その端正な容姿と
ちょっとアレ?なお人柄のギャップが愛らしい方なのです。
竹村聡子さんの出展前のメッセージがこちらになります。
→ click
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松本郁美さん(陶芸)
スペイン階段前で出展していた京都の松本郁美さんからもメールをいただきました。
ちょっと長いですけれど(これでも一部ですが!)
掲載させていただきました。
工房からの風での二日間、本当にお世話になり、ありがとうございました。
月曜日早朝に京都へ戻り、少しずつ片付けをしながら、
この二日間の事をゆっくりと整理をしておりました。
この二日間は、今までのものづくりの中で、
展示の中で一番内容の濃い、一番熱い気持ちになれた二日間でした。
思えば3月に思いがけない通知が届いてから半年間、
この日を迎えるために、心も体も頭も常にフル回転、怒涛のような日々でした。
5月の個人ミーティングでは、いつものあがり症と緊張で
稲垣さんと初めて二人でお話しをさせて頂いた時、
ミーティングというよりは、今抱えてる制作の悩みや、不安感など、
人生相談のようになってしまったことを覚えております。(笑)
その時のお話しで、私はいつの間にか、
段々自分の制作が迷路の迷い道の中にいるような
不安感を稲垣さんへお話ししました。
その時に、稲垣さんがおっしゃって下さった言葉が
本当に強い気持ちに向かわせてくれたのを今でも覚えています。
「自分が迷っているものを、お客様はいいと思わないと思うよ。
松本さん自身が本当にやりたい事をやって、
それをいい!って言って貰える方々に出会える事が、
これからの長い作家人生の中で大事なんじゃない?
例え、お客様が少なくなったとしても、
自分のやりたい事を作り生きていく事に意味があるんだと思うよ。」
「迷った時は、原点に返ってみたら?」
さらりと稲垣さんは、おっしゃいましたが
私は頭を打たれたような感覚でした。
この二つの言葉が、本当にあたたかく、
一気にパッと気持ちが軽くなり、帰る時には、
紛れもなく明るい気持ちでした。
今までこんな言葉をかけて下さる方に出会えた事もなかったですし、
こんなに作り手の気持ちを真っ直ぐに見つめ一緒に考え、
しっかりと次へ向かわせてくれることに、
改めて工房からの風に出れる自分は幸せだ!と思いました。
私が工房からの風に応募した時、自分の中で求めていたものだったので、
本当に嬉しかったです。
それから数ヶ月、よっしゃ!と気持ちの切り替えスイッチが入りました。
いつの間にか同業者の評価、
ギャラリーやお店の方々の評価に気持ちがぶれてしまっていましたが、
そうじゃない、本当に見てもらいたい人はお客様、
自分の器を好きだと言って下さる方、
思い切ってやりたい事をやりきろう、見てもらおう、
その気持ちのみで我武者羅に、制作をする事ができました。
そして緊張と少しワクワクする気持ちで迎えた当日。
二日間、沢山の笑顔でいられる日を迎える事ができました。
私の中で、工房からの風は「人と人の輪」でした。
ここに来るまでに支えてくれた家族、
制作で立ち止まった時、大丈夫や!と背中を押してくれた友人
、いよいよですね、頑張りましょう!と、度々メールをやり取りした
ミーティングを通して仲良くなった同期の作家の方々
感謝しても感謝しきれません。
そして、稲垣さん、工房からの風を支えて下さってる風人さん、
風サポーターの皆さま。
会場で困っていると、大丈夫ですか?と
笑顔で優しく声をかけて下さった風人さんの細やかな声かけが、
どんなにホッと出来たことか。
安心して最後まで展示を全うする事が出来ました。
そして今回初めてお会いするお客様たちが、
1つ1つじっくり器を見て楽しそうに選んで下さる姿、
一日目迷って二日目に来て下さったお客様、
二日間共、足を運んで下さったお客様
これはどんな料理が合うかしら?使うのが楽しみだわ、
とそんな会話のやり取りが、心から楽しくとても幸せな時間でした。
来年も出してます?と声を掛けて下さった方々
思いもよらない優しい言葉やご感想に、ただただ胸がいっぱいになりました。
終了後、Instagramやメールなどを通して、
早速お使い頂いた写真や心あたたまるメッセージ、
コメントが、本当に1つ1つ大切な宝物です。
工房からの風は「人と人との輪」作り手、作り手を支えてくれる周りの方々、
それを待って下さる方々、皆さんが1つの大きな大きな輪となり、
作り上げていく、風なんだと思いました。
そんな風の輪にいれた私は本当に幸せでした。
そして、やっぱり私は不器用ですが陶芸が大好きで、人が大好きです。
本当に本当にありがとうございました。
松本郁美
毎年、ひとり、ふたりいらっしゃいます、個人ミーティングの時、
固まっていらっしゃるひと。
松本さんもそうでした。
そして、今年はちょっと思いつめたような表情の方がいつもより多かった気がします。
私なりに心がけているのは、カウンセラーやコンサルタントにならないようにということ。
冷静でありたいけれど、職業的に向かうのではなく、
工芸やそれを創りだす人を大切に思う、ただのひととして向かおうと。
松本さん自身でこんがらがせてしまった糸は、案外すぐにほどけたようです。
ほどけてしまえば、原点に還るだけ。
個人ミーティングで拝見した絵付け。
筆が止まっていました。
鳥も花も生きていなくって、記号でした。
本展に並んだ器。
鳥も花も呼吸をしているようで。
松本さんが楽しく自信をもって陶芸をし、
それを見てくださる方々を信じていることが、
絵付けにしっかり表れていました。
今、バリバリ活躍していらしゃる工芸作家の方でも、
最初に個人ミーティングをした時には、
まったく自身なさげで、どっちに舟を漕いでいったらよいのか、
わからなくなっていたような方が何人もいらっしゃいます。
「工房からの風」は、お客様も風人さんたちも、もちろん私たちも
ひっくるめて、作家の仕事を肯定している空気に満ちています。
その空気をしっかり吸い込んで、自信と喜びをもって、
制作に打ち込んでいく、その元年になりましたね、松本さん。
松本さんの中国の歴史ある絵付けを感じさせつつも、
現代の食卓に新鮮にある器。
またぜひ出会ってくださいね。
松本郁美さんの出展前のメッセージはこちらです。
→ click
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director's voice
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梅田かん子さん(陶芸)
今回はいつも以上に、丁寧に心の籠った長いメールをたくさんいただいています。
皆さんにお返事をしたいと思っておりますが、今しばらくお時間をくださいね。
「工房からの風」を通じて、ものづくりに対する作家の気持ちの動きを
少しでも共有していただけたらと思い、10通ほどをご紹介していきます。
作家の許可をいただき、一部を抜粋しています。
生き物の絵付けが特徴的な梅田かん子さんからのメールの一部をご紹介します。
この度は工房からの風に参加させていただきましてありがとうございました。
怒涛の2日間(半年間)が終わり、
昨日の夜中2時過ぎに富山の自宅に戻りました。
今朝は子供たちの保育園に間に合う様に普通に起きて
普通にご飯をつくり、いつもどおりに保育園に送りました。
あっさりと日常に戻りおかしな感じです。
終わってしまえば呆気ないもの。
とわかっていたからこの半年間頑張って
必死に後悔しない様に取り組んできましたが、
結局はやりきれなかった悔しさが残りました。
でも今の私にはこれ以上の力は出せなかったのだろうと自己分析しています。
最後に「これからよ」というお言葉をいただきましたが、
本当にこれからと感じています。
工房からの風に挑戦した事で、やっと自分のやりたい事の
ベースの様なものが出来た様な気がします。
まだまだ作れるし、もっと良いものが生まれる予感がしています。
今思えば7年間も音信不通で大変失礼な事をしてしまったと大反省ですが、
初出展が終わった後は特に結果も出せず、
私は50人近くの作家さんの中で埋もれてしまい
忘れさられている作家だと思っていました。
その様な事を思っていた事自体が稲垣さんやスタッフの方々、
そしてお客様への大きな無礼だったと、今回参加させていただき感じました。
今回とにかく感じる事、気付きが多く、
間違いなくここが私のターニングポイントになったと思っております。
ここは通るべくして通った道なのだと確信しました。
今回の気付きを胸に温かい風を感じながらつくり続けますので
今後もどうぞ宜しくお願い致します。
ありがとうございました。
梅田かん子
7年前の出展を覚えてくださっていたお客様も多くて、
そのことがかん子さんをどれほど勇気づけてくれたことでしょう。
「その様な事を思っていた事自体が稲垣さんやスタッフの方々、
そしてお客様への大きな無礼だったと、今回参加させていただき感じました。」
という想いを引き出せたかん子さんは、
この7年でほんとうに豊かに成長されたのだと思います。
これからは、ご自身とそれを応援している方々を信じて、
ますますよいお仕事を続けてほしいと願っています。
梅田かん子さんの出展前のメッセージはこちらになります。
→ click
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director's voice
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hyakkaさん(木工)
こちらも木工のhyakka岡林厚志さんからメールをいただきました。
この度は本当に、本当にお世話になりました。
昨日荷物を下ろして、2トントラックを返却し、
本当なら昨晩お返事するつもりだったのですが、
うっかりこどもと一緒に寝てしまい・・
今ようやく一息つきまして、お返事を書いています。
(書いているうちに夕方になってしまいました)
「工房からの風」に初めて訪れたのは、
たしか7、8年前だったと思います。
出展していた知り合いの方の搬出のお手伝いで訪れ、
そのときに目の当たりにした美しい光景の数々。
レベルの高い作品と作家の熱意。
そしてそれをあたたかく、穏やかに、丁寧に包み込む会場の空気。
神々しい樹々たちと、神社、
そこに溶け込むようにひっそりと、しかしながら美しく建つギャラリー。
ああ、いつか自分もここに出てみたいと、強く思ったのを覚えています。
今回、実は応募するかどうか少し迷いました。
当時まだ独立してから1年も経っておらず、
当然、まだ成熟したものづくりができているとは言えない状態でした。
あの美しい「工房からの風」という場を、
自分にとっても、また、「工房からの風」にとっても
良いものにしたいという思いもあり、今の自分では不十分ではないかと思ったのです。
ですが、本当に不十分ならば、きっとその判断は下される。
ならば、思い切ってやってみよう!と思い、応募に至りました。
出展が決まってからのこの半年間は、本当に濃密な時間でした。
自分が作りたいものとは、世界とは。
そしてそれらを的確に表現すること。
常に自問自答する日々でした。
時間をかけて出来上がった家具を見て、本当にこれでいいのか、
出品しないほうがいいのではと悩んだり。
時に大きな不安や焦りも感じていました。
そのなかで、自分の真ん中はやはり家具であり、
そこで営まれる生活なんだと、今回改めて実感しました。
幼い頃父に連れられ通った町教会のような、
あたたかい緊張感のある場を作れるものを。
当初、もっと小物も製作するつもりでいたのですが、
「自分の舵取りは、自分でするしかない」という稲垣さんの言葉を受け、
自分が本当に作りたいものだけに絞ることにしました。
前日に搬入を終え、並べられた家具たちを見たとき、
不思議と気持ちがすっきりとし、
今自分ができることはできたのかなと、前向きに捉えることができました。
当日はありがたいことに多くのお客様に作品を手に取っていただき、
家具の方でも嬉しい反応を沢山いただけました。
初日に来られた方が、一日考えた末に二日目にスツールを購入してくださったり、
二日とも手に取ってくださったお客様がいたり・・
感謝してもしきれません。
これも、「工房からの風」という場の力なんだと実感しました。
正直、反省点も多いですし、この半年を通し、また先輩作家さんたちの作品を見て、
まだまだ自分が未熟であることも痛感しています。
台風一過の美しい景色はまだはっきりとは見えませんが、
うっすらと、光が見えている気がしています。
今はとにかく、もっと深く心を澄まし、もっともっと良いものを作っていきたい!
稲垣さん初め、スタッフの方々、風人、風サポーターの方々、
出展作家の方々にも、本当にお世話になりました。
ありがとうございました!
今、みなさんともっともっとお話がしたいです。
「工房からの風」を通して、多くの方と知り合えたこと、
これも今後の宝物になってくれると思います。
お天道様にも、本当に感謝!
そういえば、また余談ですが、テントの中に家具が並べられた姿を見て、
絵本のばばばあちゃんというシリーズの
「いそがしいよる」のワンシーンを連想して、
一人微笑ましく思っていました。
hyakka
岡林 厚志
岡林さんもあまり積極的にお話しくださる方ではなかったのですが、
本展に向けて、ほんとうに丁寧に向き合ってくださったこと、
展示をみてひしひしと伝わってきました。
お客様の反応に対しての感性も優しくって心豊かですね。
この素直な気持ちが岡林さんの原点として、
これからのお仕事に据わっていくことでしょう。
一部掲載のお願いしましたら、
今まで、文章に対しての苦手意識もあり、
あまり自分の思いを言葉にすることはしてこなかったように思います。
ですが、今回の出展を通し、文章というかたちにすることで、
自分の中と製作とはまた違った角度で向き合い、
整理し、より深く潜っていける・・・そんな気がしています。
これも収穫のひとつですね。
これからは意識して、思いをかたちにしていってみようと思っています。
毎回、やたらと時間はかかってしまうのですが・・笑
というコメントをいただきました。
14回目の工房からの風で、ようやく、言葉、
というものの佳き機能が生かされたように思います。
ものづくりの方の中には、言葉を敵対視しているひともいたりします。
言葉じゃなくて、作品だろ、とか、
言葉で伝えないから、作品なんだ、とかとか。
言葉はハサミと同じで、うまく使えば役に立つし、
誤って使えばケガをします。
自分の想いや感じていることに向き合うひとつの手段として、
言葉を活用してみるのも、有効なこともあると思います。
(もっとも、私自身は便利ツールとして言葉を想ってはいなくて、
作家の皆さんが素材に向き合うような気持ちで向かいたいと思っていますが。。)
hyakka
岡林さんの木の家具、また出会っていただけますように。
出展前のブログはこちらです。
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岡野達也さん(木工)
おりひめ神社の鳥居の手前。
木工作品をたくさん展示していた岡野達也さんからもメ―ルをいただきました。
このたびは大変お疲れ様でした。
お世話になりました岡野です。
二日間野外展をするには最高のコンディションで本当に
いろんな意味で「工房からの風」は愛されているなぁと。
たくさんの来場者の方たちに作品を選んでいただき、
「がんばってね」「次はどこで会えるの?」
「楽しみにしている」とたくさんの声を掛けていただきました。
主催者さん、風人さんたちの作り手を応援したいという思いが、
10月の「工房からの風」本展の前に、
5月、6月の風の予感、
8月の日本橋三越での「工房からの風から」展、
9月の工房からの風プレイベントを通じて、
その思いが広く、深く使い手の方たちに伝わり、
使い手の方は応援したい、共感出来る作り手を探しにご来場くださり、
応援の言葉をかけてくださっているのかなと。
「工房からの風」の魅力はこういうところにあるのかなと思いました。
だから後悔があります。
工房からの風に“期待した” こと。
ここに出られればチャンスがあると勝手に決めつけて
期待してしまっていました。
もちろんチャンスはあるだのだろうけど、
“期待して”頼る気持ちで臨むのではなく
“期待される”ように臨むべきだったなと。
作品自体にはもちろん違いは無いのだけど、
自分の気持ちの問題で、
「まだまだ、だなぁ!」って反省しました。
妻や家族以外でも応援してくれる人たちがいることが分かったから、
その期待に応えるべくまた走り出せそうです。
そういえば、
「工房からの風はどんな風?」
って質問がありましたね。
あの時、羨ましいと憧れたあの風が吹きましたよ、自分にも!
ありがとうございました。
岡野 達也
岡野さん、ありがとうございます。
実直なお人柄が文面からにじみでているようで。
“期待して”頼る気持ちで臨むのではなく
“期待される”ように臨むべきだったなと。
こんなふうに思われるなんて、
もうすでに一段上のステージに上がられているんですね。
今回、ただの感想文ではなくって、内省されたメールが多いんです。
そして、内省しつつも、明るい。
なんだか、それぞれの作家が、自ら気づきを収穫されたような感じ。
今年の工房からの風の特徴なのです。
岡野さんの木工作品、これからもあちらこちらでご覧いただけますように。
開催前のメッセージはこちらです。
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とりもと硝子店さん(ガラス)
今年は例年になく、作家の方々からのメールが遅いです(笑
想像しますに、ぱぱっと到着報告をするのではなく、
じっくり想いを熟成させて、言葉にしようとされているのでは。。。
と思っていたところ、昨日あたりから次々にメールが届きだしました。
皆さん、一様に長ーい長ーいメールが。
(ちなみに、メールはお願いしたものではなくって、まったくの任意のものです)
例年以上に内容も熱い!メールが多く、
その熱量はすべて作家自身の今後のエネルギーになることと思います。
私あて、という形態ですけれど、自分あて、なんですよね。
大波が去った後に、浜辺に打ち上げられた貝殻やガラスのかけら。
凪ぐ浜の宝物のような作家の想いを、しばらく一緒に感じていただきたいと思います。
(作家から稲垣宛に私信で送られたメールを、一部抜粋して、
作家の許可を得て転載していきます)
おひとりめは、とりもと硝子店さんです。
この度は大変お世話になりました。
明け方3時に無事に到着しました。
出展が決まった3月から、いろいろと見直し、
考える機会を得、仕事への取り組み方も充実した時間をいただきました。
前日出発前の、積み込みが終わった時点で、やりきれた。
と、思う事ができました。
現場で、お客様が楽しめることを思い、いま思いつくことは出し切れました。
当日のお客様との出会いはもちろん、稲垣さんはじめ、
運営に関わっていただいた皆様、出展者の皆様に心から御礼を申し上げます。
ありがとうございました。
いまの心の中にできたものを、書き留めておく事は、やってみようと思います。
ズシリときた半年間でした。
ありがとうございました。
とりもと硝子店
鳥本雄介
とりもとさんのブース、すばらしかったですね。
作品バリエーションの豊さ、作品数、展示方法・・・。
とりもとさん、企画者に対して、
ものすごく積極的にアピールされる方ではなかったので、
最初はあまり気づけなかったのですが、
「工房からの風」という機会を
とっても大事に考えて取り組んでくださっていることが、
展覧会が近づくにつれて、じわじわ伝わってきたのでした。
前日出発前の、積み込みが終わった時点で、やりきれた。
と、思う事ができました。
こんなふうに思えて、京都から千葉への道は、
遠くであっても、輝いた時間だったのではないでしょうか。
そして、たくさんのお客様に恵まれての二日間は、
一層きらきらと眩しい時間だったことと思います。
いまの心の中にできたものを、書き留めておく事は、やってみようと思います。
というのは、私が投げかけてみたことでした。
メモでもいいので、飾らない、生々しい自らの実感の籠った言葉は、
いつかの自分を励ましたり、薬になったり、してくれるようになるかもしれません。
とりもと硝子店さんの透明なガラス、
また、あちらこちらで出会っていただけますように。
開催前のご紹介記事はこちらになります。
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text sanae inagaki
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大住潤さんから
「工房からの風」出展を終えて、工房へ戻った作家から届いたメッセージ。
一部を皆さんと共有させていただくことで、次への実りにつなげていきたいと
綴ってきました。
「凪ぐ浜のたからもの」
ご紹介したい宝物は、まだまだあるのですが、そろそろ幕を引きましょう。
最後は、木彫の大住潤さんからのメッセージです。
:::
・・・
・・・
・・・
会場となったニッケコルトンプラザに初めて訪れたのは、
5、6年前に開催された星野道夫さんの写真展でした。
写真展で感動をいっぱいもらった帰りに見かけたギャラリーらふと。
あの建物の佇まいが、ずっと心に残っていました。
「いつかあんなところでできたらいいな」と思ったこと覚えています。
そのギャラリーらふとのことから、「工房からの風」のことを知りました。
その頃は、自分自身の作品と言えるものがなく、いつか、いつかと思っていました。
そして、何を作っていきたいのか模索する日々の中、
木彫りの羽根を作り、
やっと僕も「工房からの風」に応募することができると喜んだこと鮮明に覚えています。
星野さんの生まれ故郷で出展が決まったことで、
「このまま進みなさい」と言われたようで励まされました。
風の予感展当日、自宅出発直前、持っていくつもりのなかった熊を、
なぜなのか持っていこうと思いました。
人に見せるつもりも全くなかったのです。
それが何のきっかけなのか見てもらうことになりました。
稲垣さんに熊を見てもらった時は、ものすごく恥ずかしかったです。
デッサンができなくて随分悩んでいたこともあり、
熊のプロポーションも何となくおかしいとわかるのですが、
どこがおかしいのかもわからない状態。
そんなところが気にかかって落ち着きませんでした。
けれど、その熊をいいと言って下さった稲垣さんの言葉に、
僕はものすごく衝撃を受けました。
デッサンができる、できないかは問題ではなかったのですね。
おかしいもので、そう言われると蓋をした自分の気持ちがわっと出てきました。
特別なこの場所で、まさか熊を彫ることになるなんて思いもしなかったです。
本当に夢のような時間でした。
第2回のミーティング、三越でのプレ展示を踏まえて
どのようにしていこうかと迷っていた時、
心の向かう方に、全ては僕の心次第だと言って下さったのが、
熊をもうひと段階成長させるパワーになりました。
本当に大切な気持ちで熊を彫ることができました。
とにかく人の心に真っ直ぐに届くものを彫ろうと、
余計なものは削ぎ落としました。
稲垣さんの紹介文、人に伝えようとする情熱が言葉から溢れていて、
僕もそんなふうに木を彫れたらいいなと思いました。
ものすごく感動しました。
そして、この2日間、熊を見て下さった方たちのたくさんの笑顔に出会いました。
励まされ続けてきた僕がずっと探していた人の心に届けられる形、
これからも出会いを重ねて見つけて届けていきたいです。
とても幸せな時間でした。
大住 潤
工芸、クラフト、手仕事・・・・
と呼ばれる世界の仕事に携ってやがて30年になりますが、
未だにどの言葉が自分の仕事なのかと言い切ることができません。
「工房からの風」の中で赤木明登さんとのトークイベントの中で
こんなやりとりがありました。
工芸30年説というものがあって、
民藝の時代、自己表現の時代、生活工芸の時代ときて、
稲垣さんはこれからどのような時代になると思いますか?
と投げかけられました。
そこで私はこう答えました。
「お尋ねの答えにはならないかもしれないけれど、私は絶対的な何か、
に向かって仕事をしてきてなくって、相対的な何かに向き合ってきた気がします。
それは、先にこちらにこうあるべきというものがあるのではなくて、
作家に向かって、その作家が何を作るべきかをみるやり方。
男の人は定義づけが好きだからなぁ(笑)。
今まで意識したことはなかったけれど、私は女性だから?
母性とかと関係があるのかしら?
なーんて柄にもなく思ったりしますけれど・・・」
と、会話なので和やかに。
・・・それは学問にたとえれば、歴史学ではなく、社会学のようなものかもしれません。
揺るがない、確固とした姿が私自身にあるのではなくて、
対象に向かったとき、いかにその対象を正確に見て、感じることができるか、
そのことに心を注いできたのだとようやく思えるようになりました。
言葉や歴史学的な捉え方もとても大切だと思いますし、
そのことに注視してこの仕事を進める方々がいることも豊かなことだと思います。
一方、今何々の時代、とか、これからは何々の時代、というのを考えるよりも、
出会った作家のまんなかを見ることを深めたい、
そんなことをあらためて思った年でした。
人の暮らし、営みと結びついたもの、
素材の恵みとの関わり、
その作り手ならではの何か、
完成度・・・
「工房からの風」という展覧会としての
コンセプトやクォリティーはもちろん大切にしていますが、
先に枠を作ってしまうことで出会うべきものを
こぼしてしまわないようにありたいと思っています。
クマであってクマだけではない姿。
そこには大住潤というひとの中の真実があって、
その真実が幾ばくかの他者の心に芯から沁みていく。
そういうきらりと輝くものの意味を味わいながら確認できるのも、
凪ぐ浜で出会えた宝ものなのだと思うのです。
大住潤さんの出展前のメッセージはこちらになります。
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-次年度応募に向けての記事など、しばらくブログ更新続けます-